【黄 天麟・台日文化経済協会会長】再起間近の日本 

【台日文化経済協会通信:2015年3月春季号】


             黄 天麟・台日文化経済協会会長

 昨年12月14日に投票が実施された衆議院選挙で、安倍晋三が率いる自民党は圧倒的な勢いで勝利を収めた。衆議院の総議席数は475議席で、過半数となるのは238議席。参議院で否決された法案を再可決できる衆議院の優勢に必要な3分の2議席は317議席だが、選挙の結果、自・公は3分の2を超える合計325議席を獲得し、政界で極めて安定した勢力となった。

 日本にとって今回の安倍政権の勝利は、2つの重要な意義がある。

 1つは、有権者が「アベノミクス」に対する信任と支持を示した点で、経済回復を望む国民の期待が示されたことにある。一般的に、個々の日本国民からすると、円安は懲罰であるともいえる。
海外旅行費は嵩み、牛肉等の輸入品の価格も高騰するため歓迎されず、選挙戦でも野党の攻撃対象になったが、それでも有権者は安倍を選択した。

 アベノミクスが試練を迎えるのは、おそらく2年目から3年目にかけてであろう。1年目の蜜月期においては上場企業が円安によって利益を上げるが、2年目になると国民が輸入品の値上がりを感じて消費は抑えられ、米ドルではじき出される輸出は増加ではなく減少する。また輸入額が上昇し、貿易赤字も減少するどころか増加するという円安の後遺症が生じるはずだ。こうした問題は3年目まで続くが、3年目の後半に新たな生産ラインが稼働し始めるため、国民は4年目になってようやく円安による経済再生を感じることができるだろう。

 アベノミクスが長い時間を要するのは、日本の「失われた」時間が1年や2年ではなく、23年(1990年~2013年)にも及んでいるからであり、これを挽回するのは容易ではない。安倍に6年前後もの時間を与えたのは、国民の英知であるといえる。日本はまもなく再起するだろう。

 第2に、安倍の勝利が日本に与えたもう1つの重要な意義は、日本人が周辺の国際情勢の現実に目覚め、日本を普通の国とする集団的自衛権にお墨付きを与えた点である。

 日本人は日増しに脅威を増す隣国に直面し、過去の他人任せの平和主義では自国を防衛できず、自分の国は自分の手で守るべきであり、とりわけ、いずれかの国の主要な敵対国になった場合には尚更であることを理解したようである。

 ここで、台湾は日本政府に対し、臆すことなく速やかに台湾と自由貿易協定(FTA)を締結し、フィリピンやインドネシアとの関係を強化し、これらをリンクして「極東環太平洋の経済的チェーン」を形成しようと呼びかけたいと思う。

 日・台・比・インドネシアの人口の合計は約5億人弱で、13億人の人口を有する中国と対抗でき、これにベトナム・タイ・マレーシア・ミャンマーが加われば、東南アジアは中国の一極覇権を免れ、自由と平和を保障することができるだろう。

 このことからも、今回の安倍政権の圧倒的な勝利は、東アジアの新たな歴史の1ページを開いたと言える。アベノミクスの成功と日本の盛栄を心より祈念している。

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黄天麟 1929年(昭和4年)、台湾・澎湖県馬公市生まれ。台南第一中学校、台南第二高校を経て台湾大学経済学部卒業。米国コロンビア大学に留学後、輔仁大学や東呉大学で教鞭を執り、財政金融界に長らく従事。合作金庫の総経理、第一商業銀行の総経理・董事長(頭取)、国家安全会議諮問委員、総統府国策顧問をなど経て台日文化経済協会会長に就任。





『台湾の声』 http://www.emaga.com/info/3407.html