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『三橋貴明の「新」日本経済新聞』
2015/01/28
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From 佐藤健志
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先週の記事では、景気回復と「経済再生」(ないし日本再生。以下同じ)の関係について、次の等式が成り立つのではないかと書きました。
経済再生=景気回復×(社会的連帯感+ナショナリズム)
景気回復と「社会的連帯感+ナショナリズム」が、それぞれプラスかマイナスかによって、ここからは以下のシチュエーションが想定可能です。
(1)景気回復=プラス、社会的連帯感+ナショナリズム=プラス、経済再生=プラス
成長が実現されたうえ、そのメリットが広く共有される理想的な状態。
(2)景気回復=プラス、社会的連帯感+ナショナリズム=マイナス、経済再生=マイナス
成長は実現されるが、一部の層がメリットを集中的に享受するため、格差はむしろ拡大、社会的不満が高まる状態。
(3)景気回復=マイナス、社会的連帯感+ナショナリズム=プラス、経済再生=マイナス
メリットを広く共有しようとする姿勢はあるが、そもそも成長が実現できず、スタートラインでつまずく状態。
(4)景気回復=マイナス、社会的連帯感+ナショナリズム=マイナス、経済再生=プラス
成長もせず、格差も広がるせいで、絶望感から世の中を根本的に改めようとする動きが高まる状態。
ただし先週も書いたとおり、(4)で想定されるような「やけっぱちの急進主義」は、現実にはたいがい失敗に終わってしまいます。
したがって経済再生を実現するシナリオは、(1)しかないと考えるべきでしょう。
ならば安倍政権の経済政策、いわゆる「アベノミクス」は、この4つのどこに当てはまるか?
これがなかなかに複雑なのです。
目標として謳われているのは、もちろん(1)。
しかし具体的な政策には、(2)をもたらしかねないものも見られる。
そして現状は、おそらく(3)。
下手をすると今後、(4)に行き着く恐れもないとは言えません。
だとしても、何か変ではないでしょうか?
(1)と(3)の区分、あるいは(2)と(4)の区分は、「景気回復が達成されるかどうか」という基準に基づいたもの。
ゆえに経済政策の手腕次第で、同一の政権が(1)と(3)の間、あるいは(2)と(4)の間にまたがることはありえます。
けれども(1)と(2)の区分、あるいは(3)と(4)の区分は、「社会的連帯、およびナショナリズムを尊重するかどうか」という基準に基づいたもの。
政策の手腕とは関係のない話です。
裏を返せば同一の政権が、(1)と(2)の間、あるいは(3)と(4)の間にまたがることは、本来ありえないはず。
ところが安倍政権は(1)(2)(3)にまたがっており、下手をすれば(4)まで含みかねないのです!
これは同政権が、社会的連帯感やナショナリズムについて「尊重しつつ尊重しない」状態にあることを意味します。
冒頭の等式を踏まえれば、「プラスでありながらマイナス」、または「マイナスでありながらプラス」という次第。
むろん、明らかなパラドックスです。
けれども現在の日本のあり方は、このようなパラドックスの存在を前提すると、いろいろ分かりやすくなるように思うのです。
なにせわが国は、景気の好循環をつくることをめざしつつ、消費税増税によって需要をみごとに冷え込ませました。
その後も「経済最優先」と言いつつ、積極的な財政出動には乗り出さない。
のみならず現政権は、選挙に勝って権力基盤を強化するたび、掲げるスローガンを後退させています。
今では「戦後レジーム」から脱却したいのか、同レジームを強化したいのか、にわかには判断がつきかねるほど。
イスラム国による日本人拘束事件に関しても、テロには屈さないが人命を優先させるという、いささかツジツマの合わない方針が示されました。
根本がどこかで非常にねじれていると考えるのが妥当ではないでしょうか?
だとすれば、このねじれを解消しないかぎり、経済再生はありえないと見なすべきでしょう。
それどころか、景気回復だって危ないもの。
プラスがマイナスで、マイナスがプラスでは、肝心なところでハズすに決まっているではありませんか。
そして問題のねじれの根源は「社会的連帯感+ナショナリズム」、つまりは愛国心をめぐる混乱にひそむように思うのです。
戦後日本は、この混乱を放置したまま、経済成長に邁進してきた感があるものの、経済の本質とは「経世済民」、すなわち世の中を治め、人民の苦しみを救うこと。
こう考えるとき経済の問題は、政治、社会、イデオロギー、あるいは文化の問題と切り離すことはできません。
2010年代後半の日本が良い方向に向かうかどうか、それは過去70年にわたって続いてきた「愛国のパラドックス」に、われわれがどう対応してゆくかにかかっているのです。
ではでは♪
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