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『三橋貴明の「新」日本経済新聞』
2015/01/20
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From 藤井聡@京都大学大学院教授&内閣官房参与
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我が国ではまさに今、「リニア中央新幹線」の工事が始められました。
今から12年後の2027年には東京名古屋間が開通し、東京・名古屋間がたった40分で結ばれることになります。
40分といえば、大都市「内」における、極めて一般的な移動時間ですから、リニアによって、東京名古屋間が「一つの都市圏」となるということになります。
これは、名古屋の発展に巨大なインパクトを与えます。
なぜなら、名古屋よりも東京の方が、いろんな所にスグに行けるからビジネスがやりやすい、という理由で東京に存在していた様々な企業が、リニアの開通によって名古屋に移転していくことが予期されるからです。
一方で、そのリニア新幹線が名古屋から大阪まで開通するのは、名古屋までの開通からさらに18年後の2045年と予定されています。
この18年間に、大阪の凋落は決定的なものとなります。
そもそも、リニア開通後は、大阪東京間の所要時間は短縮されますが、それでも2時間程度はかかります。これはつまり、東京名古屋が一つの都市圏になる一方で、大阪だけはその都市圏から外されてしまう(つまり、いわゆる“ハミゴ”になる)からです。
その結果、ただでさえ大阪経済、関西経済が地盤沈下し、年々拡大しつつあった「東西格差」が….
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=609140265853587&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=1&theater
リニアの名古屋先行開業によって、決定的なものとなってしまうことは避けられないでしょう。
そうした認識の中で、議論されはじめたのが、
「リニア大阪同時開業」
です。つまり、2027年に名古屋東京が開通する年次に、大阪まで同時に開業しよう、というわけです。
当方の研究室では、こうした背景から、このリニア大阪同時開業のインパクトがどれくらいなのかを、当研究室で開発したマクロ経済シミュレーションモデルMasRAC (“Ma”croeconomic “s”imulator that accounts for “R”egional “AC”cessibility )を用いて、推計してみました。
(#このシミュレータの詳細については、<補注1>をご参照ください)
その結果、やはり、当初に想定した通り、同時開業することで、大阪の経済はさらに拡大すると同時に、東西格差は大きく是正される結果が示されました。
#結果は、こちらのPDFファイルにとりまとめました。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/02/MasRAC_pptx/MasRAC.pdf
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/archives/1912
すなわち、大阪府の人口は、同時開業によって2044年時点で26万人(732万人→758万人)も増加すると同時に、大阪府の経済規模が1.3兆円(39.3兆円→40.6兆円)拡大する、という結果となったのです。
なお、もう少し丁寧に説明しますと、大阪府の人口は(他地域と同様)これから減少していくのですが、その「減り方」が緩和され、44年時点では、同時開業しないケースよりも人口が26万人多くなる、ということが予想されたという次第です。
そもそも名古屋まで20分強、東京まで60分強でアクセスできるとなれば、大阪に居ながらにして、名古屋や東京でのビジネスを容易に展開することが可能となるわけですから、大阪の経済活動が拡大していくのも当然と言うことができます。
ただし、このシミュレーション結果の重要なポイントは、同時開業は
「名古屋都市圏」に対しても!
大きなメリットをもたらす、ということが示されたという点にあります。
名古屋圏である愛知県の人口は、同時開業によって19万人増加し、経済規模については1.0兆円(33兆円→34兆円)も拡大する、ということが示されたのです。
これは、当方の当初の予想を遙かに上回るインパクトでした。
しかし、よくよく考えてみればこの程度のプラスのインパクトが、名古屋にもたらされるのも当然といえば当然です。
そもそも、大阪名古屋が20分強で結ばれれば、名古屋に居ながらにして一大経済圏である大阪圏でのビジネスに参加する機会が飛躍的に拡大します。結果、同時開業は大阪のみならず名古屋にも大きなプラスのインパクトをもたらすことになるのです。
別の言い方をするなら、名古屋にとってみれば、リニアが東京のみならず大阪とも接続できれば、東京と一体的に発展していけるのみならず、大阪とも一体的に発展していく可能性を手に入れることになるのです。
あるいは、名古屋は東京にも大阪にも行きやすい「真ん中」に位置していることから、リニアによる三大都市圏統合インパクトを最も大きく被ることができる、と言うこともできるでしょう
かくして、リニアの名古屋大阪同時開業は、大阪のみならず、名古屋にも、大きなインパクトをもたらし、20万人規模の人口移動と年間1兆円程度の経済拡大をもたらすことが予期される、ということになるわけです。
さて・・・・・
そうなったとき、東京はどうなるのかといえば、上述の大阪、名古屋をはじめとしたリニアによってプラスインパクトがもたらされる各エリアへの、人口と経済規模の「分散化」が果たされることとなります。
まず人口について言うなら、リニア同時開業によって、東京23区から50万人弱の人口(6%)が、リニア沿線に分散化していきます。そして大阪府、愛知県にはそれぞれ20万人規模(3%程度)で分散化が果たされることとなります。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/02/MasRAC_pptx/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%894.JPG
そしてこれにあわせて、東京23区の経済規模の約5%にあたる5.2兆円が分散化し、そのうち1兆円程度が名古屋、大阪それぞれに分散化することとなります。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2015/02/MasRAC_pptx/%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%895.JPG
リニアは大阪、名古屋のみならず、東京にも開通するわけですから、東京から大阪、名古屋へと人口と経済が分散化するのはなぜなのでしょうか。むしろ、「ストロー効果」といって、リニアが通ることで、大阪や名古屋の人口等が東京に吸い取られてしまうのではないか?とお考えの方も多いかもしれません。
しかし、リニアによって分散化が進むのは、よくよく考えてみれば当たり前、のことなのです。
そもそも、リニアが通れば三大都市圏が1時間強で結ばれ、一つの都市圏として統合されます。これまでは、三大都市圏が分断されていましたから、あらゆるものが利便性の高い東京に吸い取られていました。しかし、リニアによって三大都市圏の統合が大きく進み、その分断性が低下していけば、多くの人々にとって東京に「固執」する必要性が、低下していくことになるのです。
つまり「東京だけが特に便利だ」ということでは無くなり、「どこの都市に住んでいてもあまり変わらない」ということになります。その結果必然的に、東京に一極集中していた人口やオフィスがリニア沿線に「分散化」していくことになるわけです。
あるいは、次のように言うこともできます。
東京には既に、東北、上越、北陸(長野)、東海道の4本のフル新幹線が接続しています。一方で、名古屋、大阪にはそれぞれ、東海道(山陽)のフル新幹線が一本通過しているに過ぎません。
つまり、東京にリニアが作られてもそれは既に4本あるところに1本増えるだけですが、名古屋、大阪では1本しかない所にもう1本増えるのです。単純に本数だけで言うなら、東京では、新幹線は「4分の5倍」にしかならない一方で、大阪、名古屋では「2倍」にもなるわけです。
無論、利便性はそんな単純な倍率通りには生きませんが、十分に便利な東京にも、利便性の低い大阪、名古屋にも、同じ「リニア」が提供されるわけですから、そのインパクトは当然、東京よりも大阪、名古屋の方が大きくなるのです。
こうして相対的に東京の重要性が低下し、大阪名古屋の重要性が向上した一方で、人口も経済規模も限られた「パイ」なのでありますから、結果的に、東京から大阪名古屋に人口等が分散化していくことになる、という次第です。
こうしたメカニズムを総合的に勘案したシミュレーションを行えば、東京から大阪、名古屋への、20万人規模、1兆円規模で…
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