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『三橋貴明の「新」日本経済新聞』
2014/12/30
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From 藤井聡@京都大学大学院教授&内閣官房参与
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●月刊三橋最新号のテーマは「2015年の世界と日本」。
アベノミクスは失敗し、日本は再デフレ化確定。
ユーロはボロボロ。そして、中国が、、、、
もし、あなたが時代を読み間違えたくないなら、このページが参考になるはずです。
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財政規律のための「ドーマー条件」の性質について~デフレ期にはPBよりも名目成長率に注力すべし~
債務対GDP比(名目)を財政再建目標としたとき、それが
「増えていかない事」 (発散しないこと)が、大切となります。
この点について、日本の政府では、数式に基づく「ドーマー条件」と呼ばれるにものに基づいて、PBを黒字化すべきだという事になっています。
そして多くのエコノミストは、その「ドーマー条件」を持ち出しつつ、
「だから、PBの黒字化が必要だ」
と主張しておられます。
ドーマー条件についての分析そのものは、否定しようの無い分析であり、筆者もまた、それを否定するものではありません。しかし、その分析から「PBの黒字化が必要だ」という結論を導きだす論理プロセスそのものは、著しく不当である、としか言い得ぬものであります。
なぜなら、ドーマー条件に基づいて素直に解釈すれば、債務対GDP比(名目)の発散を防ぐためには、「PBを黒字化」することでも良いし、名目GDPを成長させてもよい、という「2つの異なった結論」を導き出すことができるからです。しかも、統計的な分析を踏まえれば、デフレ期においては、PBを配慮する以前に、デフレを脱却し、名目GDPをプラス成長に転じていくことが、最大の財政再建策である、という事実も浮かび上がってきます。
そして最終的には、マクロ経済状態がデフレなのかインフレなのかを見据えつつ、PBと名目GDPを総合的に見据えながら、債務対GDP比(名目)を発散させないように、経済・財政政策を展開していく、という方針を採用することが最も得策である、という結論が得られることとなります。
──以上が、財政規律問題についての筆者の結論なのですが、なぜ、このような結論が導き出せるのかについて、ここは一つ「数式」、ならびに、それを踏まえた「統計分析」を使いながら、その結論を得たプロセスをお話したいと思います(どうしても数式についてアレルギーのおありの方は、以下の数式の下りは読み飛ばしていただいても、おおよそのストーリーはご理解いただけるように、本記事自体については構成したいと思います)。
........
まず、今年の公的債務は、次のように表現できます。
(今年の債務)(去年の債務) (金利) (プライマリーバランス)
D1= D0 + D0×r + PB
ここにPBは、今年の政府支出の赤字額(ただし利払いを除く)を意味します
つまり、今年の債務は、去年の債務に、金利払い分と、今年の政府の赤字額を加えたものだ、ということです。
一方、今年の名目GDPは、
(今年の名目GDP)(去年の名目GDP) (名目GDPの成長率)
Y1= Y0 × (1+g)
となります(つまり、今年の名目GDPは、去年の名目GDPに成長率を加えた分だ、ということです)。
以上のように定式化しますと、「債務対GDP比(名目)」は、次のようになります【数理分析1 参照】。
「債務対GDP比(名目)」=D1/Y1
=D0/Y0 ×(1+r)/(1+g) + PB/Y1
・・・・・
さて、以上の数式がドーマー条件式と呼ばれるものなのですが、この式から、多くの日本の経済学者(例えば、竹中平蔵氏等)は、次のように説明します。
「もしも、rとgが同じなら、つまり、名目GDP成長率と名目金利が同じなら(※)、PBが黒字でなければ、債務対GDP比は、発散してしまう」
(もしも(※)が成立するなら、上記の式はD1/Y1 = D0/Y0 + PB/Y1となるので、そのように結論付けることができます)
この主張(命題)そのものは、一点の非も無く、正しいものです。
そして、竹中氏等は、この「主張」に基づいて、
「だから、PBを黒字化しないと、日本の財政は悪化の一途をたどる。だから、PB黒字化すべきである」
と強く主張することになります。
......しかし、この主張は理性的に考えれば、まったくもって受け入れられないものです。
そもそも、上記のPBを黒字化すべし、という主張は、あくまでも、
「もしも名目GDP成長率(g)と名目金利(r)が同じなら」
という前提付きのものでしかありません。
しかし、金利(r)と成長率(g)の関係は、必ずしも明瞭ではありません。もしも成長率gの方が高ければ、PBは赤字でも、債務は発散しない、という結論を、この「ドーマー条件式」なるものから導き出すことができます。
さらに逆に言うなら、デフレ期には名目GDP成長率(g)の方が名目金利(r)を下回ることになりますから(成長率はマイナスにもなるからです)、PBが黒字であろうが無かろうが、債務対GDP比(名目)は悪化する、という結論がこのドーマー条件式から導かれます。
いずれにしても「債務対GDP比(名目)」が増えていくのか減っていくのかは、成長率と金利とPBの三つの変数が、どのようにかわっていくかに依存するのであって、PBだけに依存しているかのように論ずるのは、全くもって論理的に正当化し得ないのです。
・・・・・
さて、上記の条件式を素直に解釈すれば、次の三つの傾向が存在することが分かります。 【数理分析2 参照】
(傾向1)「債務対GDP比(名目)」は、PBが小さい方が、低下していく可能性が高くなる。
(傾向2)「債務対GDP比(名目)」は、金利(r)が低い方が、低下していく可能性が高くなる。
(傾向3)「債務対GDP比(名目)」は、成長率(g)が高い方が、低下していく可能性が高くなる。
さて、このように3つの傾向が数理的に演繹されるにも関わらず、その内の一つだけを恣意的に取り出して「PBを黒字化すべし」と宣言するのは著しく不条理です。したがって、その主張における論理の稚拙さたるや驚くべき水準にあると言われても致し方ない、とすら言えるでしょう。
では実際、これらの三つの傾向は、本当に、実証データで確認できるのでしょうか?
これらの変数の関係は、インフレ期とデフレ期で全くことなった様相を呈することになることが予期されますから、デフレ期(98年以降)とインフレ期(97年以前)とで分けて、分析してみたところ、次のような結果が得られました。 【数理分析3 参照】
(傾向1)についての分析
「債務対GDP比(名目)」の変化率 と 「PB」 との相関係数は…
・インフレ期はマイナス0.61 (1%有意: p =0.004)
・デフレ期はマイナス0.11 (有意で無い: p=0.36)
(傾向2)についての分析
「債務対GDP比(名目)」の変化率 と 「金利」(国債・長期金利) との相関係数は…
・インフレ期はマイナス0.30 (有意で無い: p =0.85)
・デフレ期はプラス0.33 (有意で無い: p=0.12)
(傾向3)についての分析
「債務対GDP比(名目)」の変化率 と 「成長率」 との相関係数は…
・インフレ期はマイナス0.71 (1%有意: p =0.001)
・デフレ期はマイナス0.43 (有意傾向: p=0.055)
・・・・これらの結果が何を意味しているのかは、俄に分かりづらいかもしれませんが、次のような結論をです。
(実証知見1:PBについて)
債務対GDP比(名目)は、インフレ期にはPBが増えれば(つまりPB赤字が減れば)減るという関係が見られるが、デフレ期には、そういう関係は見られない。
(⇒ これは、デフレ期にPBを「改善」してしまうと、名目成長率が鈍化し、結果的に債務対GDP比(名目)の分母が小さくなり、逆効果となる傾向が生じてしまうためだと考えられます)
(実証知見2:名目成長率について)
名目GDPの成長率を上げていく事は、債務対GDP比(名目)を減少させるにあたって、インフレ期であってもデフレ期であっても、統計学的に有効であることが示された。
(⇒ 分母を大きくすれば、債務対GDP比が改善していくのは、当たり前だと言えます)
(実証知見3:金利について)
金利の上下が、債務対GDP比の増減に系統立った影響を与えているとは、統計学的には言えない。
(⇒金利は、名目GDPが上がると上がっていくものですが、上記のように名目GDPが上がることは債務対GDP比を改善する効果があり、その影響で、金利の債務対GDP比への影響は系統だったものとはならなかったものと考えられます)
以上の数理分析、実証分析が指し示すのは、次のような結論です。
【【【 結論 】】】
「インフレ期においては、名目GDPの成長率を確保しつつ、PB赤字を低く抑えておくことが、債務対GDP比(名目)の拡大を抑制する上で得策である。
一方で、デフレ期においては、PB赤字を低く抑えようと努力することは、債務対GDP比(名目)を抑制する上でほとんど役に立たない一方で、名目GDPの成長率に配慮し、成長させる事が得策である。
なお、金利については、デフレであってもインフレであっても、必ずしも明確な影響は見られないため、それに対する対策の優先順位は高くない。」
つまり、煎じ詰めて言うなら、デフレ期において債務対GDP比(名目)の拡大を抑制するための最大の戦略は、「…
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