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    『三橋貴明の「新」日本経済新聞』

        2014/12/23





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From 藤井聡@京都大学大学院教授&内閣官房参与



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2017年に10%に増税をするなら、中長期の公共投資プラン、すなわち、例えば、5年で50~70、80兆円程度(年間10~14、15兆円程度)の、

「アベノミクス投資プラン」

とでも言うべきものを断行することが必要不可欠である、という事は、前回も申し上げた通りです。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2014/12/16/fujii-121/

こうした投資プランがあれば、その直接効果のみならず、民間の需要、投資が誘発されるという間接効果が大きく生じ、デフレと増税ショックを乗り越える力が我が国にもたらされる、一方でそれがなければ、我が国は将来的に「恐慌」とも言いうる状況に陥ることすら危惧される、という次第です。

ただし現状は、こうした「アベノミクス投資プラン」が実際に断行されていく見通しは、極めて立てにくい状況にあります。

なぜなら我が国は、基礎的財政収支(政府の収入と支出の差分)、すなわち、プライマリーバランス(PB)について、次のような強烈な「目標」を掲げているからです。

「PBの赤字を、2020年度に黒字化させる。」
http://jp.reuters.com/article/vcJPboj/idJPTYE95507A20130606

この目標を達成するためには、必然的に徹底的な「財出削減」が企図されることとなります。

例えば現在、8%増税ショックに対して対処するための補正予算は、3.5兆円程度が予定されている、という旨が報道されています。
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20141219-OYT1T50021.html

(まだこれは確定したものではありませんが)この3.5兆円という水準は、昨年度の5.5兆円より2兆円も少ないものです。これはいわば「2兆円のマイナスの財政政策」とも解釈できるものですから、8%増税ショックに対する対処となり得るというよりむしろ、そのショックをさらに拡大する可能性すら危惧されます(無論、別途の手立てがあるなら別ですが....)。

つまり、補正予算や今後の投資計画の水準は、「デフレ脱却」という至極当たり前の動機のみならず、「PB目標を達成する」という別種の動機にも大いに影響を受けているのが実情なのです。

ただし繰り返しますが、PB目標の達成をあまりに重視しすぎると、成長が不能となり、肝心かなめの「税収」が縮減し、最終的には、

「財政が悪化」

してしまう事が危惧されます。

そして実際、過去のデータを見れば、その「危惧」は単なる「危惧」ではなく、「現実」であったことが見えて参ります。

こちらのグラフをご覧ください。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=598259810274966&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=1&theater

(なお、債務を中央政府のものだけに限定し、かつ、借換債の分も加えた場合のグラフは、こちら。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=597788840322063&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=1&theater)

こちらのグラフは、デフレに突入した1998年以降のPB(プライマリーバランス)と、債務対GDP比(名目)の推移を示しています(このグラフにおける債務対GDP比(名目)とは、中央政府の累積債務の、GDPに対する比率を意味しています。なお、データは全て1998年で基準化しています)。

ご覧の様に、98年以降、リーマンショックによる急激なPB悪化時期を除くと、PBは徐々に「改善」しています。

ところが、その「PBが改善している期間」において、債務対GDP比(名目)が改善していたのかと言えば....その真逆に「悪化」(!)してきたのです。

この問題について、こちらのグラフを使って、もう少し詳しく見てみましょう。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=598260493608231&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=1&theater
(なお、債務を中央政府のものだけに限定し、かつ、借換債の分も加えた場合のグラフは、こちら。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=598124163621864&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=1&theater)

こちらには、「PBの変化率」と「債務対GDP比(名目)の変化率」との関係を示しています。

ご覧のように、経済ショックがあった期間を除くと、98年以降、PB改善が債務対GDP比(名目)の改善に明確に結びついているのは、たった2年度しかありません。一方で、PBが改善しているけど、債務対GDP比(名目)が悪化している期間は、実に8年度もあるのです。

これらの結果は、少なくともデフレ下では、PBの改善に気にするあまり財出を縮小してしまえば、名目GDPが必然的に縮小すると同時に、税収も縮小し、累積債務がさらに拡大する事を示しています。

その結果、こちらには、PBの改善を企図すればする程に、債務対GDP比(名目)が「悪化」してしまうのです。

. . . . .

以上をまとめると、次のように言えるのではないかと、筆者は考えます。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=598134973620783&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=1&theater

今、我が国政府は「債務対GDP比」を改善することを、財政目標の最重要目標として掲げ、その上で、そのための「手段」として「PBの改善」を「中間目標」として掲げています。

しかし、1998年のデフレ突入以後、「PBを改善」すればするほどに、「債務対GDP比(名目)」が悪化しているのが実態です。

この事実は、PB改善目標なるものが財政規律を守る上で、「極めて不合理」である可能性を、明確に示しています。

そもそも国際的に、PBを目標に掲げている国家は、日本一国だけなのであり、それ以外の諸外国は皆、債務対GDP比を、財政目標に直接掲げているのが実態なのです。
http://www.mof.go.jp/english/international_policy/convention/g20/20130906_fiscaltemplate_aes.pdf

(なお、2002年、小泉首相、竹中担当大臣のご判断でPB目標が日本に導入されてしまった、というのがその経緯です)。

恐らくは他の国々は、PB目標を掲げている限り財政政策を機動的に遂行していくことが不可能となることを知っており、自らの手足を縛るようなPB目標を掲げる事を回避し、「債務対GDP比」を直接の目標に掲げることが合理的であると判断しているものと考えられます。

折りしも、安倍総理は成長と財政再建の両者を同時に達成することを目標としているのです。その点を考えますと、諸外国と同様、成長に明らかにマイナスの影響を及ぼす危惧の高いPBを目標に据えるのではなく、「成長」と「財政再建」の両者を評価し得る「債務対GDP比(名目)」を目標に据えることが得策であることは明らかです。

ついては我が国においても、政府の手足を縛り、挙げ句に財政悪化をすら導く、いわば「毒矢」のような「PB目標」から、グローバルスタンダードとも言いうる「債務対GDP比(名目)」を直接目標に掲げることが、日本の未来の命運を分ける最重要課題の一つなのではないかと、筆者は考えています。

是非とも、本件についての前向きな議論が我が国においても活発化し、日本の成長と財政再建が共に達成させ得る合理的な「財政目標」が設定されますことを、心から祈念いたしたいと思います。



PS
財政再建の目的とは、本当に政府債務の削減なのか?
なぜ、不合理なことが行われているのか?

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