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『三橋貴明の「新」日本経済新聞』
2014/12/09
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From 佐藤健志@評論家・作家
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アメリカのロック・ミュージシャンに、イギー・ポップという人がいます。
1960年代後半、「ストゥージズ」というバンドのリーダーとしてデビュー。
広範な人気を得るにはいたりませんでしたが、パンク・ロックの先駆者として、カルト的な評価を受けます。
ストゥージズは1974年に解散しますが、イギーは数年後、デイヴィッド・ボウイの助力のもと、ソロでカムバック。
以後、着実な活動を続けてきました。
アルバムの代表作としては「ラスト・フォー・ライフ」「ブリック・バイ・ブリック」「アメリカン・シーザー」などがあります。
2010年には、ストゥージズとして「ロックの殿堂」入りを達成。
日本での公式サイトはこちらをどうぞ。
http://www.universal-music.co.jp/iggy-pop
さて。
イギーは1982年、アン・ウェーラーという人との共著で自伝を出しています。
題して「アイ・ニード・モア」(カーツ=コール社、米国)。
日本語にすれば「まだ足りない」。
「まだ足りぬ 踊り踊りて あの世まで」とは、歌舞伎の名優・六代目菊五郎の言葉ですが、どこか通じるものを感じます。
しかるに同書には、「資本主義 vs ロック」という箇所がある。
そこでイギーは、興味深いことを書いているんですね。
多少要約して、ご紹介しましょう。
音楽業界に強力な労働組合があったとする。で、その組合が、一定額の賃金とひきかえに、1日8時間、ギターを演奏する権利を保障してくれたとしよう。
賃金は安くてもいい。ただし演奏に関する注文は「ベストを尽くすこと」だけで、具体的なよしあしについては任せてくれるものとする。
そうしたらオレは、喜んで言われるままに演奏して歌うだろう。今の資本主義的な音楽業界より、ほとんどそちらの方がマシに思えるくらいだ。
1982年当時のイギーは、必ずしも絶好調ではなかったものの、ストゥージズ時代を含め、10枚以上のアルバムを発表していました。
ついでにこれは、「ネット配信に押されてCDが売れない」どころか、CDそのものがまだ出回っていなかった時代。
それがなぜ、いくらでも儲けられる(かも知れない)資本主義的なシステムより、「組合による一定額の賃金保障」という社会主義的なシステムを望むようなコメントをするのか?
続きをご紹介しましょう。
今の音楽業界じゃ、アーティストはトップに立っているか、でなければどん底を這い回るか、なんだ。
どん底の連中は必死にやっても注目されないし、トップに立てば立ったで、人々に弄(いじ)られる。
人形扱いされて、コケにされるんだよ。
もしアメリカの社会経済システムがつくりかえられて、ミュージシャンにたいしても「ベストを尽くすかぎり仕事を保障し、一定額の賃金を払う」制度ができあがったら、オレに不満はないぜ。
この本が出てから数年後、アメリカン・ロックの「ボス」として絶頂期にあったブルース・スプリングスティーンは、イギーとは逆の趣旨のコメントをしました。
いわく、ロックと商業主義は切り離せない。
社会主義国から楽しめるロックが出てこないのは、商業主義が存在しないからだろう・・・とまで言ったと記憶しています。
スプリングスティーンの発言にも、間違いなく一理ある。
イギーだって、もし社会主義国で活動していたら「社会主義 vs ロック」などと言い出したかも知れません。
だとしても「資本主義 vs ロック」で展開された主張には、今なお、いや今だからこそ注目すべきものがあると思います。
悪平等のもとでも文化は栄えませんが、競争原理があまりに徹底されても、やはり文化は栄えません。
そのような状況は、「負け組」はむろん、「勝ち組」にとっても居心地の悪いものとなりかねない。
事実、ブルース・スプリングスティーンやマイケル・ジャクソン、あるいはプリンス、マドンナといったスーパースターたちには、「絶頂期に売れすぎたことが、長期的にはマイナスとなった」側面があります。
最も目立つ例は、やはりマイケルでしょう。
そしてこれは文化に限らず、経済全体についてもあてはまること。
戦後日本のあり方を見直そうとする動きは、たいがい「自由主義的な競争原理の導入・徹底」をめざす主張とワンセットになっていました。
わが国は(さまざまな規制や因習による)平等志向が強すぎ、そのせいで社会の活力が阻害されているというわけです。
しかし戦後日本の絶頂期とも呼ぶべき1980年代とは、今、振り返ってみれば、競争原理と平等性がうまく調和した時期でした。
自由主義的な改革の気運は起こっていたものの、平等志向の風潮も残っており、結果としてバランスが取れたのです。
だとすれば「競争原理と平等性の間でどんなバランスを取ったら、社会のポテンシャルが最も発揮されるか」を、あらためて追求することこそ、今後の重要な課題となるでしょう。
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第二次安倍内閣が発足したころ、「瑞穂の国の資本主義」というフレーズが流行りました。
最近はあまり聞かれないものの、「日本社会のポテンシャルを最も発揮できるような形で、競争原理と平等性を調和させる」という意味に取るかぎり、このフレーズには大きな意義があったと思います。
今度の総選挙、最大の争点は経済。
「瑞穂の国の資本主義」にも、あらためてスポットが当たることを期待しましょう!
ではでは♪(^_^)♪
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