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『三橋貴明の「新」日本経済新聞』
2014/09/30
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From 藤井聡@京都大学大学院教授
今,来年の秋から消費税を10%にあげる事が,様々に議論されています.
その基本的な論拠は「財政再建」ですが,増税を主張する方々の論旨はおおよそ次のようなものです.
『高齢化が進む今日,毎年社会保障費はうなぎ登りにあがっていく,そんな中で,その社会保障費をまかなうためには,増税は待ったなしである.
折りしも,日本政府の累積債務はGDPの2倍という超絶な水準にあり,この状態を放置すれば,いつ何時,国債の暴落が起こり,日本政府が破綻してしまう事にもなりかねない──.
無論,それが実際に起こるリスクがどれくらいあるかについては,楽観的な声も多数存在している.事実,日本の長期国債の金利は極めて低い水準にあり,国債暴落リスクは,現実的なものとは考えがたい.
しかし仮にそうだとしても,マーケット関係者の中には,国債暴落のリスクを懸念する人々が存在していることは間違いない.さらには,現時点では国債を安全資産だと考えているとしても,一寸先に何が起こるか分からない,という中長期的な国債リスクを認識している人々はより多数に及ぶ.
だからこそ,そういう人たちの懸念を払拭するためにも,「日本国政府は財政規律を守っているのだ」というメッセージを出す必要がある.そのためにも,10%への増税は,是が非でも必要なのだ』
しかし,少なくとも筆者にとっては,こうした主張は,説得力あるものとは思えません.
万一,国債暴落リスクがマーケットにて認識されているとしても,その懸念が10%に増税することで払拭されるとは限らないからです.
事実,増税して景気が悪くなれば,さらに財政が悪化するが故に,国債に対するリスクはより大きくなるのではないか,というような声が「マーケット」の中にすらあります.
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NBMOY96JIJUO01.html
しかも当方が考えるに,我が国日本は,8%への増税によって,大きな景気後退に苛まれており,その上で10%増税が決められれば,日本経済は極めて大きな被害を受け,増税論者が求めている「財政再建」そのものが達成できなくなってしまう危惧が濃厚に存在しています.
例えばアメリカのノーベル経済学者クルーグマンは,昨年までアベノミクスを絶賛していたものの,今日の8%へ消費税増税後の日本の経済状況を踏まえ,
「日本経済は消費税10%で完全に終わります」
と指摘しています.
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40411
日本国内においても,増税後の4~6月期の実質GDPが,年率7.1%縮減している事実を踏まえ,消費税10%への増税を延期を主張する声が,少しずつ主張されるようになってきています.
http://pull.db-gmresearch.com/cgi-bin/pull/DocPull/1075-F4CA/50278935/0900b8c088a88cfe.pdf
ところが,この問題について,日本の主要な経済学者,エコノミストの一部の方々は,「さして深刻な問題ではない」という趣旨の主張をしておられます.
例えば,東京大学の伊藤元重教授ら,経済財政諮問会議の四人の委員は,連名で同会議に提出した『経緯情勢について』というレポートにて,次のように主張しておられます.
『駆込み需要とその反動減を均した 2014 年上(1-6 月)期の実質 GDP 水準は、2013 年第4四半期の水準よりも 0.7%増加(除公共投資)しており、趨勢としては増加傾向にある。』
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/0916/shiryo_01_1.pdf
伊藤教授らの指摘はもちろん,事実に沿うものです.しかし,だからといって(つまり,「趨勢として増加傾向にある」からといって),現状の経済情勢が「楽観的な状況にある」とは思えない,というのが,筆者の見解です.
なぜなら,1997年に増税をした時と比べてみれば,97年増税時よりも今回の方が,より大きな影響が与えられている,という客観的事実が存在するからです.
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=564095007024780&set=a.236228089811475.38834.100002728571669&type=1&theater
具体的に言うなら,97年当時も,今回と同様に,1月から6月期の平均GDPは「趨勢として増加傾向」にあったのですが,その勢いは今回よりもさらに「大き」かったのです.ところがそれにも関わらず,増税によって景気は激しく落ち込み,結果として,インフレからデフレへと転落する事となったのでした.
この史実を踏まえるなら,伊藤教授らが言うような(97年当時よりもより弱い)「趨勢としての増加傾向」があるからといって,将来を楽観すること等,到底出来ない,と判断せざるを得ないものと思います.
そしてGDPのみならず,「家計」の状況を判断する上で重要な実質賃金も,「産業」
の状態を判断する上で重要な鉱工業生産指標も,いずれも,97年増税時よりも,より
劣悪な水準で推移しているのが,8%への増税後の今日の日本経済の状態です.
(例えば,
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=566921110075503&set=a.23622808981147
5.38834.100002728571669&type=1&theater
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=566999823400965&set=a.23622808981147
5.38834.100002728571669&type=1&theater
繰り返しになりますが,97年増税は,インフレからデフレへと転落させるほどのディープインパクトを日本経済にもたらしました.そして,今日の8%への増税がなされた今日の日本経済は,それよりもより大きなダメージを被っているのです.
こうした状況で10%へのさらなる増税が決定されれば,クルーグマン教授が指摘するように,日本経済はさらに深刻な被害を受けるリスクは,冷静に判断して極めて高いであろうと筆者は考えます.
もちろん,「ブレーキ」を踏んだとしても「アクセル」を踏み込めば,前に進むことができますから,その意味で,8%増是によって被った被害を乗り越える経済対策(すなわち,比較的短期的な効果が見込まれるアベノミクス第一の矢と第二の矢)を,これからも果敢に断行し続けることが必要であると,筆者は考えます.
しかし,仮にそれを続けたとしても,8%から10%へのさらなる増税によってもたらされるネガティブインパクトを跳ね返すことは,著しく困難ではないかと考えます.
なぜなら,既に現状においても第一の矢は継続的に進められ,かつ,第二の矢に関しても,事業執行を年度内で「前倒し」しながら,今,盛んに進められているにも関わらず,上述のように,各指標の悪化は,97年増税時のそれを上回っているわけです.ですから,これにさらなる増税インパクトが加われば,今日と同程度の水準で第一,第二の矢を果敢に断行し続けたとしても,より深刻なダメージが日本経済にもたらされるのは避けがたいであろうという帰結が理性的判断として導かれるものと考えます.
こうした理由から,またアベノミクスの成功,デフレ脱却を企図する「ニューディール政策」の担当の内閣官房参与を仰せつかっているということも踏まえました上で,わたくしは少なくとも当面の間は,財政再建のためにも「増税延期」が必要だと考えます.
もちろん,延期の有無や,延期期間等の諸事項は全て,与党内での議論,国会での議論,そして何より安倍総理を中心とした政府,内閣の皆様方の総合的なご判断によるものであります.ですが,筆者としては,以上に述べたような理由から,日本経済のためには,少なくとも現時点における10%への増税判断は,著しく危険な帰結をもたらすのではないかと考えている次第です.
いずれにしても,増税によってGDPが毀損し,かえって税収が減り,財政が「悪化」してしまっては,増税の目標である財政再建そのものが遠のくこととなってしまいます.筆者は今,様々なデータや分析を通して,こうした極めて好ましくない帰結がもたらされる可能性を,現実的かつ冷静に危惧しているのです.
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