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『三橋貴明の「新」日本経済新聞』
2014/07/30
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From 佐藤健志@評論家・作家
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古典というのは、つねに現代に通じる意味を持っています。
われわれは古典に触れることで、たんに過去を知るのではなく、自分たちが生きる現在についても、本質をあらためて知るのです。
たとえば本紙で7月24日に配信された、荒波レイさんの記事「投資と投機の違い」。
記事の内容を、エドマンド・バークの古典『フランス革命の省察』(1790年)に出てくる、次の言葉と比べてみて下さい。
「(革命によって権力を握った)国民議会は前例のないことばかりやるクセがあるが、とりわけ恐れ入るのは、バクチの方法論で国家を築き上げ、誰もがその精神を身につけるよう仕向けていることである」
「革命派の主たる目標は、偉大な王国だったフランスを巨大なカジノにつくりかえ、全国民をギャンブラーにすることと評さねばならない。投機は人生そのものと化し、あらゆる事柄に対処する指針となる」
「革命派の公言するところによれば、バクチ的な金融政策こそ現在のフランス共和国を支えているものであり、投機なしには国の命脈が尽きるそうだ。(中略)いまやフランスでは、投機に手を染めないことには食事にもありつけない」
(『新訳 フランス革命の省察』、225‐226ページ)
まったく同じでしょう?
18世紀も21世紀もありはしない。
フランスも日本もありはしない。
人間のやることは、そうそう変わらないのです。
歴史の進歩など、しょせんこの程度。
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そして現在の日本のあり方を知るうえで、フランス以上に重要なのがアメリカ。
戦後日本は、「自国のあり方をアメリカのようにしてゆく」ことを国家目標と位置づけてきたからです。
むろんこれは、「アメリカのように豊かになりたい」ということでもある。
第二次大戦終結直後、同国の豊かさは世界的に見てもずば抜けていましたから。
しかし、それだけではありません。
中野剛志さんとの対談本『国家のツジツマ』から、ちょっと引用しましょう。
まずは私の発言。
「日本人は敗戦の衝撃をやわらげるべく、きわめて虚構性の強い世界観を作り上げてしまったのです」
「なんと、敵だったはずのアメリカと心情的に一体化することで、敗戦の衝撃や屈辱感を抑圧・封印した。それによって(戦争に負けたことがもたらした)アイデンティティの危機を回避しようとしたのです」
これにたいする中野さんの発言。
「冷戦があって、ソ連(現ロシア)をリーダーとする共産主義陣営があり、日本を貧しいままにしておくと、日本が共産主義化してしまうおそれがあったから、アメリカは日本を豊かにしてやった。アメリカのおかげで豊かになった日本は、アメリカと一体化するような心情に陥った」
(184‐185ページ、および191ページ。カッコは引用者)
つまりは敗戦後、新たな心のよりどころを求めた日本人の都合と、アメリカの世界戦略上の都合が一致した結果、
「アメリカの奨励のもと、日本が同国との政治的・経済的・心情的な一体化を推し進める」という図式が成立したのです。
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戦争の勝者と敗者が、ここまでうるわしく結びついた例も珍しいでしょう。
とはいえ、うるわしい話には裏があると決まっています。
中野さんの言葉を借りれば、
「もともと、戦争に勝ったアメリカは、日本を二度とアメリカに挑戦することのできない不能な国にしたまま、封じ込めるつもりでいたのです」
(202ページ)
戦後日本が豊かになったことは、これを否定するものではありません。
安全保障面でアメリカに依存しているかぎり、いくら繁栄しようと、アメリカの意に反する行動は(結局のところ)取れないからです。
おまけに日本は日本で、敗戦の経験がよほどキツかったのか、平和国家だの不戦の誓いだのといったスローガンを信奉、「安全保障を自主的に追求するのはコリゴリ」という風潮が強かった。
安全保障面でアメリカに依存する、ないし(戦争)不能な国のまま封じ込められることは、多くの日本人にとり、屈辱的どころか、望ましいこととして受け止められたのです。
アメリカと心情的に一体化しているのですから、いくら依存したり、封じ込められたりしようと、問題と思わないのも分かる話。
「アメリカ=日本」なんですからね。
こうして戦後日本は「アメリカの庇護のもとで平和と繁栄を享受するかわり、同国の意向には逆らえない国」となりました。
ところが、であります。
アメリカ独立戦争の起爆剤となった大ベストセラー『コモン・センス』の著者トマス・ペインが、同書で述べるところによれば、植民地時代のアメリカも、宗主国イギリスにたいして、よく似た態度を取っていた。
イギリスを素晴らしい国と信じ、安全保障についてもイギリスに依存し、同国の庇護のもとで平和と繁栄を享受するかわり、同国の意向には逆らえない存在だったのです。
裏を返せばアメリカは、戦後日本さながらの状態にあったにもかかわらず、自分の力で独立を勝ち取ったことになる。
そして世界的な大国への道を歩み始めるのですね。
日本の今後を考えるうえで希望を抱かせる話ですが、ここで考えてみたい点があります。
植民地時代のアメリカが、戦後日本とよく似ていたとすれば、憲法九条、ないし九条に象徴される極端な平和主義(または非武装主義)が、当時のアメリカに存在した可能性もあるのではないか?
じつは、そうなのです!
『コモン・センス』の最後には、「クエーカーのパンフレットにたいする反論」という文章が収録されています。
クエーカーはキリスト教の一派ですが、「いかなる理由があろうと、武器を取ることは罪である」という立場を取っていました(今でも取っています。念のため)。
ゆえに「いかにイギリスに不満があろうと、戦争に訴えて独立をめざすなど許されない」という内容のパンフレットを刊行した次第。
戦後日本の左翼的平和主義者とそっくりではありませんか(笑)。
これにたいしペインは、猛然と反論します。
イギリスが武力でわれわれを制圧しようとしていることはどうなるのだ?
向こうの行動は罪ではないのか?
だいたい「いかなる理由があろうと、武器を取ることは罪である」などと言い出したら、暴力的な攻撃にたいする抵抗は不可能になる。
クエーカーの教義は、「長いものには巻かれろ」という卑屈な追従を正当化することで、人間を権力のイヌに仕立て上げるものだ!
そんなタワゴトに耳を貸すべからず!
やるべし! 起つべし! 独立あるのみ、草莽崛起!
「草莽崛起(そうもうくっき)」とは、一般の人々が・・・って、これは書く必要ありませんね。
先週もご説明しました。
しかしポイントは、憲法九条とそっくりの発想が、1776年の新大陸に存在しており、アメリカ人はそれを否定する形で独立戦争に突入したこと。
わが国の保守も左翼も、ここをちゃんと押さえているでしょうか?
前者は九条について「日本を骨抜きにするための条項」と見なし、
後者は「世界に冠たる平和の条項」と見なしていますが、
どちらの評価にも、このような発想は、戦後日本にのみ見られる特別なものという含みがあります。
しかし、事実は違うのです。
1776年、トマス・ペインは九条批判を行っていた!
戦後日本、あるいはアメリカをめぐるイメージが、すでに変わってきたでしょう?
だから古典に触れることは、現在の本質を知ることだと言うのです。
というわけで、みなさんにはぜひ、わが新刊『コモン・センス完全版』をお読みいただきたいと思います。
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『コモン・センス』の日本語訳は、過去にも存在しました。
しかし「完全版」と銘打ったことが示すとおり、この本をノーカットで訳したのは、今回のバージョンが初めてなのです!
ならば、過去の訳本では何が削除されていたのか?
ご明察。
「クエーカーのパンフレットにたいする反論」です。
わが国のインテリは、憲法九条(的な発想)もまた、良かれ悪しかれアメリカの歴史に根ざしたものであることに、ずっと直面できずにいたのでした。
ちなみに私の公式サイト「DANCING WRITER」では、7月25日いらい、安倍政権、および同政権を頑迷に支持したがる人々のあり方を、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』をモチーフに考察しています。
題して『新保守アヴェンゲリオン 残酷な愛国のテーゼ』。
本紙の執筆陣にも「綾波レイ」ならぬ「荒波レイ」さんがおられることですし、ぜひご覧下さい。
http://kenjisato1966.com までアクセスのうえ、トップページのカレンダーの日付をクリックすると、当日配信された記事の一覧が出ますので、容易に検索していただけます。
ではでは♪(^_^)♪
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