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    『三橋貴明の「新」日本経済新聞』

     2014/07/24



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From 柴山桂太@滋賀大学准教授

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昨年、スノーデン事件についてメルマガに書きました。
http://www.mitsuhashitakaaki.net/2013/08/15/shibayama-14/

このときは、まだ報道されたばかりだったのですが、今年になってこの事件の内幕を描いた本が出版されています。本日はその感想を。

グレン・グリーンウォルド『暴露 スノーデンが私に託したファイル』(新潮社)
http://www.amazon.co.jp/dp/4105066919
http://honto.jp/netstore/pd-book_26191288.html

著者は、この事件を最初に取材したジャーナリスト。この大スクープが、ガーディアン紙の記事になるまでのいきさつが、当事者の視点から詳しく書かれています。またスノーデンが持ち出した機密文書についても、本書でおおよその概要を知ることができます。

私が興味をそそられたのは三点あります。スノーデンの人物像、NSAの活動実態、そして日本との関係です。

まず、スノーデンの人物像について。告発場所に香港を選び、最終的にロシアに亡命したこともあって、スノーデンは中国やロシアのスパイだったのではないかという疑惑が根強くありました。しかし本書を読むと違うようです。

彼の思想信条はリバタリアニズム。アメリカ自由主義者でも最右派の考え方です。尊敬する政治家はロン・ポール、中央銀行の廃止や、連邦政府の権限縮小を唱えていることで有名な「小さな政府」主義者です。

スノーデンが告発に踏み切ったのは、不法に国民を監視しているという政府の悪事をあばき、権力の肥大化を食い止めるというリバタリアン的心情だったと思われます。国民監視の実態だけでなく、アメリカ政府による他国へのスパイ活動の記録まで公表したのも、「多額の税金と人命を犠牲にしてまでアメリカが世界の警察官である必要はない」というロン・ポールばりの政治信条の現れだったのかもしれません。

スノーデンの愛国心は、アメリカが建国の精神を離れて政府権力を肥大化させることに、異議を申し立てるという形で発揮されました。もっとも、その彼が、最終的には理想と正反対のロシアに亡命せざるをえなかったというのは、皮肉という他ありません。

二つ目に、NSA(アメリカ国家安全保障局)の活動について。スノーデンのリークが世界的に注目を集めたのは、アメリカが国内だけでなく世界中の電子通信を監視している実態が明るみに出たからです。

これまでもインターネットでのやり取りは全て監視されているのではないかという噂はありましたが、本書を読むとそれが事実であったことが分かります。
もっとも、電話での会話や、電子メールの中味をいちいち盗聴・監視できないので、もっぱら通信記録のメタデータを頼りに、さまざまな解析プログラムにかけて特定のターゲットを割り出す、という方法を採っているようです。
メタデータの解析だけで、かなりのことが分かるとか。インターネットは便利な道具ですが、それは一般市民にとってだけではなく、市民を監視する側にとっても便利なのだということが、よく分かります。

NSAの標語は「すべてを収集せよ」です。そのためには、通信会社や情報会社の協力は不可欠で、マイクロソフトやグーグル、フェイスブックなどの大手企業の名前が挙がっています。また、情報がとれるようマルウェアを作成して流していたという事実や、アメリカから発送される通信機器に細工をしていたという事実などについても、スノーデンが持ち出した資料から明らかにされています。

また、同盟国との協力も不可欠です。アメリカと特に関係の深いイギリスを中心に、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドが「ファイブ・アイズ(五つの目)」と呼ばれているとか。日本も、「限定協力国」としてしっかり名前が挙がっています。

アメリカ政府は「対テロ」を目的に監視活動を正当化していますが、スノーデンの文書にはテロとは無関係の、外国の政府要人についてのスパイ活動の記録が含まれています。また経済・産業についても、スパイ活動をしていたようです。NSAはその情報を、国務省、CIA、通商代表部、農務省、財務省、商務省などの「顧客」に渡していたとのこと。

こうした情報収集活動は、別に驚くべきことではないという話は前にも書きました。いつの時代にも、政府による監視や諜報活動はあります。中国やロシアでは、「法の支配」が緩い分だけ、これらの活動はもっと大胆に行われていることでしょう。国家と自由の関係は、一般に考えられているよりはるかに複雑な問題を含んでいます。

もっとも、監視システムは万能ではありません。情報を収集し解析するシステムがあっても、それを動かしているのは人間ですから、見逃しもあります。現にスノーデンはまんまと情報を持ち出しているわけですから。スノーデンはアメリカの強力な監視システムを明るみに出しましたが、彼の存在が、このシステムが万能ではないということも同時に証明しているわけです。

最後に、日本について。私が本書を手に取ったのは、日本についての記述があるのではと期待したからです。スノーデンは複数のインタビューで、日本で勤務経験があると語っていますし、アメリカの盗聴記録には日本大使館などが登場するという報道もあります。

その辺りの事情を知りたかったのですが、言及はほとんどありませんでした。ただ、貿易、経済スパイ活動の対象に日本が挙がっているという記述が、少しだけ出てきます。その理由を著者は次のように語っています。

「経済スパイをする理由は明白だ。貿易会議や経済会議の際、他国が計画している戦略を秘密裡に入手できれば、自国の産業に計り知れないほどの恩恵がある。」(210頁)

要するに、経済交渉の場面で相手の手の内を知れば、圧倒的に優位に立てる、ということです。で、その対象に日本も含まれている。TPP交渉でも、おそらく日本は丸裸でしょう。なにしろTPPには「ファイブ・アイズ」のうち四カ国が入っているのですから。

この事件はさまざまなことを考えさせます。私は、「政府によって人権とプライバシーが侵されている!」という恐怖はあまり感じません。この事件が明らかにしているのは、そういう古典的な問題とは違う、もっと現代的な問題であるような気がします。国家が、法や憲法によって規定された「表」の部分だけでなく、監視や諜報という「裏」の部分によっても成り立っているという政治学的な現実を、少しだけ垣間見せてくれたところに、純粋に知的関心を覚えるわけです。

その「裏」の部分の存在を許容しつつ、それでも市民的自由を守るというバランスを、どのように生み出すか。この事件は、私たちにそういう問題を突きつけているように思うのです。


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