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■ 日米共同声明が封じ込める習政権の暴走 オバマ流の「新型大国関係」とは?(4/4)
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▼中国の覇権主義を阻止ながら、安定した関係を保つ

その一方、アジア太平洋地域は米国にとって大変重要な地域であるからこそ、アジア最大の政治と軍事大国である中国も当然、米国にとって丁重に取り扱わなければならない重要な存在である。
それに加えて、両国間の経済関係の緊密化によって中国は米国経済にとっても欠かせない存在となっている。

つまり、中国の西太平洋支配を許すわけにはいかないが、米国にとっても、中国との安定した大国関係の構築は非常に重要な外交課題であろう。したがって、習主席が米国に対して「新型大国関係」を持ちかけて以来、オバマ政権はそれを頭から拒否するのでもなく、むしろ中国の呼びかけに応じていわば「新型大国関係」の形を積極的に模索するような姿勢を示している。

たとえば米国のバイデン副大統領は習主席と昨年12月4日に会談した際、「米中関係は21世紀で最も重要な2国間関係であり、この2国は信頼と積極的な意志に基づいて行動しなければならない」
と明言したのも、オバマ大統領は今年3月にオランダで習主席と会談した時に
「国家関係の新しいモデルを追求していく」と語ったこともやはり、米国は中国との安定した関係の構築に多大な関心をもっていることの証拠であろう。

しかしそれでも、米国は決して中国が意図する通りの
「新型大国関係」を受け入れるつもりはないし、それを受け入れた痕跡もない。
実際、米国の大統領や副大統領あるいは国務長官から、中国の定義する「新型大国関係」に明確に賛同する発言があったことは一度もない。前述のように、西太平洋の支配を企む習主席の「新型大国関係論」は到底米国の容認できるものではないからである。

そうすると、米国に迫られた大きな外交的課題の一つはすなわち、中国の覇権主義を阻止ながら中国と安定した関係を保つという2つの相反する前提の下で、中国との「大国関係」をいかに定義してそれを構築していくかである。
そして本論の視点からすれば、オバマ大統領のこの度のアジア歴訪は、まさにこの重大な外交課題に対する米国の理念と戦略を明確に示したものである。

▼習近平が下すべき「最後の判断」

これまで見てきたように、オバマ大統領は日本への訪問においては「尖閣防衛」に関する米国の義務を明記した共同声明を発表した。
フィリピン訪問では新軍事協定を調印させて米軍のフィリピン回帰を実現した。
まさに中国という国を標的にしたこの2つの画期的な行動をとることによって、オマバ大統領と米国政府は習近平政権に対して、一つの明確なメッセージを送ったはずである。

それはすなわち、米国は決して、東シナ海と南シナ海を含む西太平洋の支配を企む中国の野望を容認できないこと、米国がそれらの地域の同盟国と準同盟国と手を組んで中国の冒険的行動を実力を持って阻止する用意のあることである。
つまり米国は決して、西太平洋の中国支配を前提とした習近平流の「新型大国関係」を受け入れるつもりはない、とのことである。

そしてその一方、日本とフィリピン訪問中において、オバマ大統領は中国に対し、「私たちアメリカは、中国とも強い関係を保っている」、
「我々は国際法に沿う形で中国とパートナーになりたい」といった建設的なメッセージも送っていることは前述の通りであるが、今まで論じてきたこの文脈からすれば、実はそれもまた、習主席の「新型大国関係論」に対する米国のもう一つの答えだと理解できよう。
つまり米国は、中国の覇権主義は断固として阻止するつもりであるが、中国との間で、アジア太平洋地域の平和と安定維持に有利な形での「大国関係」を構築していきたいとの意欲も示しているのである。

こうしてみると、習主席の提示した「新型大国関係論」に対する米国の考えと回答は明々白々なものとなっている。
米国が望む「米中大国関係」の前提は、中国がアジア太平洋の平和と秩序を守るための法的ルールに従って関係諸国と共存共栄の道を歩むことである。
オバマ大統領がフィリピンで発した
「我々は国際法に沿う形で中国とパートナーになりたい」という言葉と、
日本で発した「私たちは中国が平和的に台頭することを引き続き、奨励する」
という言葉に込められた米国の思いはまさにそういうことであろう。

つまりオバマ大統領のアジア歴訪において、米国は習主席の提示した中国流の「新型大国関係」を行動を持って明確に拒否した一方、米国自身の考える「新型大国関係」を持ち出して習主席に突きつけた。

これでオバマ大統領は、米中関係のあるべき姿を決定づけるのもアジア太平洋の国際秩序のルールを決めるのもこの米国であって、決して習主席の中国ではないことを世界に宣言して、習主席自身にも思い知らせたのである。

あとは、究極な判断を迫られるのは習主席の方であろう。
米国とそのアジアの同盟国たちと全面衝突するような危険を冒してまで覇権主義政策を推し進めていくのか、それともこの地域における米国の主導的役割を認めて秩序とルールを守ってアジアと共存するのか。
最後の判断が習主席に委ねられているが、それを間違えれば、アジアにとっても中国自身にとっても大きな不幸となろう。

( 石 平 )

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