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┃日本の情報・戦略を考えるアメリカ通信 ┃ http://www.realist.jp
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├ 2014年5月2日 進撃する巨人!?ロシア。
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■■-【無料】ニコニコ生放送::「奥山真司のアメリカ通信」-■■

▼2014年05月2日(金)21:00~
【無料】ニコニコ生放送::「奥山真司のアメリカ通信」
http://live.nicovideo.jp/watch/lv176909186

本日(2日)生放送です!お見逃しなく!

★スタンダードジャーナル(THE STANDARD JOURNAL)
http://ch.nicovideo.jp/strategy

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おくやまです。

読者の皆さんもご存知かもしれませんが、数日前のことですが、このようなニュースがありました。

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日本の対ロ制裁に失望=報復制裁も-ロシア
http://goo.gl/IEksBz

【モスクワ時事】ロシア外務省は29日、声明を出し、ウクライナ危機をめぐる日本の対ロ追加制裁に「失望」の意を表明した。
その上で、報復制裁に出る可能性を示唆した。

日本は29日、先進7カ国(G7)と足並みをそろえ、ロシア政府関係者ら計23人に対する入国査証(ビザ)発給を当面停止する制裁措置を発表した。

ロシア外務省声明は「この(制裁)措置は外圧によるもので、日ロ関係の全般的発展が重要だとする日本の見解と矛盾する」と指摘。
その上で「制裁をもって対話するのは非生産的であり、日本が対ロ制裁に参加しても、ウクライナの緊張緩和に寄与しない」と批判した。

一方、ロシアのパノフ元駐日大使は国営タス通信に対し、日本の制裁は資産凍結を含まず、欧米に比べて柔軟だとし、その狙いは「制裁下でも戦略的関係を継続し、政治対話と経済協力を維持することにある」と述べた。

===

いやはや、アメリカやEUにつきあう形で、日本もロシアに対する経済制裁を行い、ロシアはそれに対して怒った、というニュースです。

ここでロシアがしたたかなのは、
「日本は外圧でつきあわされてやってるんだから見逃してやる」
ということを言外に含んだコメントを出していることです。

あの「天安門事件」の後の中国のように、
「一番先に助けてくれよ」とでも言いたげですね。

今回の「アメ通」で皆さんと考えてみたいのは、この「経済制裁」(economic sanction)についてです。

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論者によって分かれるのですが、
「経済制裁」というのは、「戦争」とまではいきませんが、国際的にはけっこうな「敵対行為」だと見なされます。
当然、国家間の関係にかなり深刻な影響を及ぼします。

いわゆる「平和憲法」を大事にしている日本ですが、
「経済制裁」という名の「戦力」を行使することについては、政府見解においても「実行してもOK」ということになっております。

ところが・・・ここにはそもそも根本的な問題があるのです。
それは何かというと、この「経済制裁」というものは、実は効かないことのほうが多いのです。

はい。ここで、今回も読者の皆さんからの厳しいツッコミが・・・脳裏をよぎりました。

これはどういうことか?と言いますと、まず、「経済制裁」というのは、国際関係論の世界では専門に研究している人がおりまして、その中でもとくに有名なのが、アメリカのタフツ大学のダニエル・ドレズナー(Daniel W. Drezner)という方です。

この人はちょっとひねくれた「リアリスト」なのですが、『ゾンビ襲来:国際政治理論で、その日に備える』(http://goo.gl/fR0BE)
という国際関係論の入門書が翻訳もされておりますので、読者の皆さんの中でもご存じ方もおられるかと思います。

このドレズナー教授が、経済制裁の一般的なメカニズムとして「制裁のパラドックス」(sanctions paradox)ということを言っているわけです。

これはいったいどういう意味なのか?というと、

自国と制裁を加える相手国が、長期間の親密な経済関係で結ばれていないと、「経済制裁」は効果を発揮しない

といういうものです。
はい。ここで、こんな声が聞こえてきそうですね・・・

「なんかややこしいな、その説明は」

これ、要するに、

「カネをわたさないぞ!(経済制裁するぞ!)」
と脅して本当に効果があるのは、そもそも親しい相手じゃないとダメ、ということです。

ここで、ちょっと考えてみるとわかるのですが、この「経済制裁」という<脅し>を行おう!という時点で、そもそも、その二人というのは仲が悪くなっている・・・
というのが普通ですよね。

当然、ビジネス関係なども切れかかっているわけですから、<脅し>ても、そもそもあまり効果がないわけです。

ああ矛盾。

例えば、現在のアメリカが、貿易関係のつながりの深い日本やカナダに対して経済制裁を行うのであれば、それは最大の効果を発揮するでしょう。

ところが事実上経済関係のないキューバなどに対して「経済制裁」を加えても、効果はほとんどありません

と言われると、わかりやすいですね。

日本の場合を考えてみると、例えば、北朝鮮に対しては、2004年頃から特別に法律を作って経済制裁を続けております。

しかし、そもそも拉致問題などで両国関係は疎遠であったため、この制裁によって北朝鮮が態度を改めたか、となると、これは微妙なところがあります。

このような事例からも明らかなように、ドレズナー教授は以下のような「パラドックス」を指摘します。

●経済制裁というのは、最も使われなさそうな場合に最大の効果を上げ、最も使いたいケースでは最少の効果しか期待できない。

うーむ。確かにこれは「矛盾」です。

アメリカや日本が、ロシアに対して経済制裁をしたところで、EU諸国に比べれば経済的な結びつきは少ないため、ロシアに対する影響も限定的とならざるを得ません。

アメリカとしては、ここはやはり、ロシアとの結びつきの強いドイツや中国に積極的に動いてもらいたい、というのが本音でしょう。

しかし、EU諸国はロシアとの間に大きな経済関係がありますから、実のところ、制裁なんかしたくありません。

それどころか、スキあらばその制裁の網目をかいくぐって利益さえ上げたいと思っているのが、本音なわけです。

このような身も蓋もない現実の中で、日本の外交関係者も、腹の底では
「どうせ経済制裁なんてしたところで、対して効かねぇだろうなぁ」
とぼやいているでしょう。
しかしアメリカとのお付き合いは最重要課題ですから、アメリカへの支持表明の「ポーズ」という意味合いも含めて、今回のような発表をしたというのが、実際のところ。

こうして、「経済制裁」は、実質的な効果をそれほど上げぬまま、衰えたりとは言え、<地政学的なグレートゲーム>における“巨人"であるロシアの“進撃”が進むことになるのです。

( おくやま )

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▼「リアリズム」の理論とは何か?
~ジョン・J・ミアシャイマー『大国政治の悲劇』から読み解く~
http://www.realist.jp/mea2.html

勃興する中国、混迷を続ける欧州、そして、冷戦終結後の世界で覇権を握ったかと思いきや、ここに来て、衰退の兆しも見え始めた米国。

その米国が、東アジアから撤退する可能性すら囁かれている現在、これを読んでいるあなたは、日本が大変な岐路に立っている、大変な状況に置かれている。
と言われれば、必ず納得するはずです。

では、そんな厳しい現状で、私たち日本人は何をすべきなのでしょうか?
それは・・・
古今東西、国際政治の底流に脈々と流れ続ける、学問・学派としての「リアリズム」を真摯に学ぶことです。

しかし・・・
日本国内で一般的に言われているような、ともすれば、“世俗主義"的な意味合いで語られるいわゆる<現実主義>ではない、本当の意味での「リアリズム」をしっかり学べる素材があまりにも少ない・・・
そんな想いの元に、今回のCDを企画・制作しました。

▼「リアリズム」の理論とは何か?
~ジョン・J・ミアシャイマー『大国政治の悲劇』から読み解く~
http://www.realist.jp/mea2.html

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(編集後記)

管理人です。

さて、すでにTwitterやFacebookなどでは、お知らせさせて頂きましたが、おくやまさんの生放送「アメリカ通信 LIVE 」が、遂に毎週毎のレギュラー番組化することになりました!

「アメ通」読者の皆様、並びに、おくやまファンの皆様、本当に申し訳ありません・・・
何を隠そう、この管理人がいちばん楽しみにしております。(笑)

とにかくご多忙のおくやまさんに無理を言って、スケジュールを割いて頂きましたが、そのおくやまさんご自身もかなりテンションが上がっているご様子で、これは今後の生放送の展開、ご期待頂いてもよいのではと想います。

とは申しましても・・・

これまでの生放送を御覧の皆様でしたらご存知の通り、緩やかに穏やかに、時に毒舌も挟みつつ・・・(笑)
番組は「進撃」して参りますので、「アメ通」読者の皆様も、気楽に気軽にお付き合い頂ければと。

そして、そろそろ本日の生放送が近づいて参りま…

[続きはコチラから]
https://mypage.mobile.mag2.com/WebLeading.do?id=AfWUVOlMKeP&position=4500#position
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