鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
第120号(9月21日)
*中国の権力闘争

 日本では軍隊の存在が公式に認知されていないから、軍隊と警察との関係についての認識が希薄だが、実はすこぶる重要だ。
 軍隊と警察はともに国家に認められた武力集団であり、歴史的に見るとたいてい軍隊から治安維持用の専門部隊として警察が分離して成立している。軍隊が対外戦争用であり、警察が国内治安用と一応管轄が分けられているが、国家が内戦に陥った場合などは軍隊と警察が対立する可能性があるわけだ。
 
 さて中国は現在、国内権力闘争の真っ盛りであることは、中国専門家の見解の一致するところだ。権力闘争といっても日本と違い中国では殆ど内戦である。昨年の中国共産党大会では100万人以上の警備員が北京に動員されたというが、単なる警備で100万人も必要なわけはない。
 中国共産党のボス達がそれぞれ軍隊や警察にいる手下に号令をかけ、武力集団を集結させた結果であろう。つまり権力闘争の現場は人民大会堂の中ではなく外側であり、そこで武力集団が睨み合って一触即発の状況であったのだ。
 習近平の一応勝利という形になったが、まだ完全に決着が付いた訳ではないらしく、今も権力闘争は続いている。ということは武力集団同士の睨み合いも続いていることになろう。

 現時点において中国国内政治の焦点は、警察の大ボスといわれる周永康が逮捕されるかにある。警察の大ボスが俎上に載っていること自体、軍隊と警察の対立が背景にあることを暗示させる。
 3月に中国では海洋監視局などいくつかの海洋警察機関が統合されて海警局という巨大警察官庁が出現した。海警は尖閣諸島に対して殆ど毎日のように挑発を繰り返しているが、面白いことに中国の海軍や空軍は尖閣に対して領侵を不思議なくらい自制しているのである。
 つまり尖閣においても軍隊と警察の対立の構図が見え隠れする。おそらく中国警察の大ボス周永康は海警をして日本に戦争を仕掛ける所存であろう。日本と戦争になれば戦うのは中国軍であり中国警察は高みの見物である。
 兵器の性能など比較して日中戦争をシミュレーションすると、日本の自衛隊が有利であり中国軍は敗北する公算が高い。もし中国軍が敗れれば敗北の責任を問われて中国の将軍・提督など軍幹部は一斉逮捕されるであろう。つまり日本の勝利は中国警察の勝利を意味する。

 さて以上のような認識を踏まえて、日本は一体どうすべきなのであろうか?「中国海警の挑発に乗ってはいけない。乗れば戦争になる」という平和主義的な意見は確かにあろう。しかし戦争を仕掛けているのは中国側であり、もしこのまま放置すれば海警の挑発はエスカレーションし尖閣に偽装漁民が大量上陸するかもしれない。なにしろ戦争になるまで挑発をエスカレートする筈だからである。
 それを防止するためには尖閣に公務員を常駐させるのがいいのであるが、予算が付いて実行されるまでには時間がかかる。それまでに大量上陸を挙行されたら間に合わないのである。
 ならばいっそ、周永康のシナリオに乗って自衛隊を出動させてはどうか。自衛隊が出動すれば中国軍も出動する順序になるが、一時的に対峙するのが精々でおそらく敗北を恐れて中国軍は開戦の火ぶたを切れないであろう。
 中国国内では軍が勢力を失い国防費の増額はやむし、目的を達した海警は尖閣への挑発をやめるだろう。

軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
主著:「領土の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089
「国防の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
「総図解よくわかる第二次世界大戦」(共著、新人物往来社)など


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