鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
第119号(9月14日)
*シリアと北朝鮮
米国がシリアを空爆する、しないで揉めている内に、北朝鮮が原子炉を再稼働してしまった。シリアと北朝鮮はアジア大陸の西端と東端で遠く隔たっているので、一見無関係の様に思われよう。
ところが実は関係は大有りで、北朝鮮はシリアへの武器供給国である。シリアが装備している短距離弾道ミサイル「スカッド」は北朝鮮製である。シリアはスカッドミサイルの弾頭にサリンを積み、ダマスカス郊外上空で破裂させた。
かくて約1400人が死亡したが、その内、子供が約400人だというから、この攻撃は反体制派武装勢力を狙ったものではなく、一般住民を対象とした大量殺戮ということになる。ダマスカスは言うまでもなくシリアの首都であり、その郊外に暮らす住民はシリア国民に他ならない。
シリア政府がなぜシリア国民を大量殺戮したかと言えば、国民が反体制派に協力するのを防ぐためだ。反体制派の拠点の周辺の住民が皆殺しにされたとなれば、国民は委縮して反体制派に加担するのを控える筈である。
逆に言えば、こうでもしないかぎり国民は反体制派になびいてしまう。つまりシリアのアサド政権は国民の支持を失っている。首都郊外まで反体制派の軍勢が迫り、住民が反体制派に協力していた。化学兵器を使用しなければ体制崩壊は間違いない情勢であろう。
要するにアサド独裁政権は化学兵器で維持されている。従って化学兵器を手放す事は政権崩壊に直結する。ロシアはシリアの化学兵器の国際管理を提案しシリアも合意したとされるが、単なる時間稼ぎでありアサド政権が化学兵器を手放すわけはない。
さて問題は使用された化学兵器がどこで製造されたものか?だ。ミサイルが北朝鮮製であるならば、それに搭載している弾頭も北朝鮮製と考えるのが当然であり、従ってシリアに化学兵器を供給したのは、北朝鮮ではないかという疑惑は極めて濃厚となる。
現に日本政府が遠いシリアの情勢に憂慮の念を示したのも、もしシリアの化学兵器使用を容認すれば、北朝鮮も化学弾頭を搭載した弾道ミサイルを我が国に打ち込む可能性を否定できなくなるからだった。
ところがこうした疑惑が生じたところに、北朝鮮が原子炉を再稼働させた。おそらくシリアの化学兵器が北朝鮮製と特定されれば、シリアの次に攻撃されるのは北朝鮮の化学施設という順序となるのを見越してのことであろう。核爆弾を量産することにより、米軍の空爆を抑止する狙いであろう。
オバマ大統領はブッシュのアメリカが国際非難を浴びたことに鑑みて、積極的な軍事介入に極めて慎重となった。だがその慎重さは逡巡を招き、戦後秩序を維持していた米国が決断できないとなれば、国際秩序は急速に崩壊に向かうのである。
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
主著:「領土の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089
「国防の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
「総図解よくわかる第二次世界大戦」(共著、新人物往来社)など
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*シリアと北朝鮮
米国がシリアを空爆する、しないで揉めている内に、北朝鮮が原子炉を再稼働してしまった。シリアと北朝鮮はアジア大陸の西端と東端で遠く隔たっているので、一見無関係の様に思われよう。
ところが実は関係は大有りで、北朝鮮はシリアへの武器供給国である。シリアが装備している短距離弾道ミサイル「スカッド」は北朝鮮製である。シリアはスカッドミサイルの弾頭にサリンを積み、ダマスカス郊外上空で破裂させた。
かくて約1400人が死亡したが、その内、子供が約400人だというから、この攻撃は反体制派武装勢力を狙ったものではなく、一般住民を対象とした大量殺戮ということになる。ダマスカスは言うまでもなくシリアの首都であり、その郊外に暮らす住民はシリア国民に他ならない。
シリア政府がなぜシリア国民を大量殺戮したかと言えば、国民が反体制派に協力するのを防ぐためだ。反体制派の拠点の周辺の住民が皆殺しにされたとなれば、国民は委縮して反体制派に加担するのを控える筈である。
逆に言えば、こうでもしないかぎり国民は反体制派になびいてしまう。つまりシリアのアサド政権は国民の支持を失っている。首都郊外まで反体制派の軍勢が迫り、住民が反体制派に協力していた。化学兵器を使用しなければ体制崩壊は間違いない情勢であろう。
要するにアサド独裁政権は化学兵器で維持されている。従って化学兵器を手放す事は政権崩壊に直結する。ロシアはシリアの化学兵器の国際管理を提案しシリアも合意したとされるが、単なる時間稼ぎでありアサド政権が化学兵器を手放すわけはない。
さて問題は使用された化学兵器がどこで製造されたものか?だ。ミサイルが北朝鮮製であるならば、それに搭載している弾頭も北朝鮮製と考えるのが当然であり、従ってシリアに化学兵器を供給したのは、北朝鮮ではないかという疑惑は極めて濃厚となる。
現に日本政府が遠いシリアの情勢に憂慮の念を示したのも、もしシリアの化学兵器使用を容認すれば、北朝鮮も化学弾頭を搭載した弾道ミサイルを我が国に打ち込む可能性を否定できなくなるからだった。
ところがこうした疑惑が生じたところに、北朝鮮が原子炉を再稼働させた。おそらくシリアの化学兵器が北朝鮮製と特定されれば、シリアの次に攻撃されるのは北朝鮮の化学施設という順序となるのを見越してのことであろう。核爆弾を量産することにより、米軍の空爆を抑止する狙いであろう。
オバマ大統領はブッシュのアメリカが国際非難を浴びたことに鑑みて、積極的な軍事介入に極めて慎重となった。だがその慎重さは逡巡を招き、戦後秩序を維持していた米国が決断できないとなれば、国際秩序は急速に崩壊に向かうのである。
軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
主著:「領土の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=321212000089
「国防の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
「総図解よくわかる第二次世界大戦」(共著、新人物往来社)など
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