●一三億人の巨大マーケットという大いなる幻想
二番目の「中国全体が豊かになれば、一三億人の巨大なマーケットが誕生する」という期待についてだが、先にも述べたように、中国では豊かな人間とはほんの一握りの権力者であり、一三億人がすべて豊かになることはあり得ず、したがって、一三億人がすべてマーケットになるというのは大いなる幻想でしかない。
また、中国の国内総生産(GDP)の七〇パーセントは輸出によるものであって、内需によって支えられているわけではない。
たとえば、アメリカのGDPに占める輸出の割合は一五パーセントにすぎず、貿易立国といわれる日本にしても、その割合は三〇パーセントしかないのである。アメリカにしても日本にしても経済の繁栄は内需によるものであって、中国とは内容が異なる。中国は「世界の工場」と呼ばれていて、本来なら内需はもっと伸びていいはずだが、実際はたかだか三〇パーセントしかないのである。その原因の多くは、一握りの権力者が豊かになる中国の権力システムにあると言ってよい。
二〇〇六(平成一八)年二月一五日付の産経新聞に、アメリカの公聴会証言から作成した「数字で見る中国の現状」と題した表が掲載された。
これは、二〇〇六年二月上旬、二日間にわたって開かれたアメリカ議会の超党派政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」のなかの「中国指導部が直面する国内のチャレンジ」というテーマの公聴会で、一二人の委員と一〇人の専門家が出席して討議されたという。
この公聴会で、次のような数字が明らかにされた。
●毎年、二億人以上が休職
●二〇〇四年の経済成長率は一〇・一パーセント、二〇〇五年は九・九パーセント
●国内総生産(GDP)は二兆二四〇〇億ドル
●一人当たりの国民所得は一七〇〇ドル(米国は四万一〇〇ドル)
●五億人以上が一日の収入一ドル、貧困ライン以下の生活
●二〇〇四年は七万四〇〇〇件、二〇〇五年は八万七〇〇〇件の抗議行動
中国は一〇パーセント前後の非常に高い経済成長率を示している。これは、日本が一九六〇年代に「世界の奇跡」と言われた高度経済成長時代に達成した数字と並ぶ、驚異的な成長率である。
しかし、このような経済成長率を誇り、世界第四位の経済大国でありながら、二億人以上が休職、つまり二〇パーセントに近い失業率なのだ。また、これほどの経済大国でありながら、五億人、つまり国民の四〇パーセント以上は一日の収入が一ドル(約一一〇円)以下だというのである。一カ月(二五日稼動)に換算しても、三〇〇〇円に満たないのである。これをもってしても、いかに富が権力者に偏重しているかがわかろうというものだ。
この公聴会において、ブッシュ政権を代表する形で証言した国務省上級顧問のジェームズ・キース氏は、中国経済の現状について、次の四点を指摘したという。
(1)大国中国の陰には、貧しい中国が存在する。全人口一三億人のうち八億人が貧しく、五億人が一日一ドル以下の貧困層だ。
(2)内陸部は都市部に比べて、保険、教育、社会福祉、土地の侵食、水質の悪化、森林破壊などの各方面では劣等条件にある。
(3)地方の住民も法律で保障された権利に目覚め、当局による一方的な土地の収奪、違法徴税、賃金の不払いなどへ頻繁に抗議するようになっている。当局が治安を乱したとする抗議行動は二〇〇四年には七万四〇〇〇件、二〇〇五年には八万七〇〇〇件に達した。
(4)四五歳から六五歳までの中国国民の八〇パーセントは、保険や年金などの社会福祉の受益がなく、地方の当局者の腐敗の広がりは社会全体の倫理的価値観を侵食している。
さらに、ジョーンズ・ホプキンス大学の元教授で、中国社会問題研究学者のアン・サーストン氏は、中国には貧しい「もう一つの国家」があると、次のように指摘したことも産経新聞は伝えている。
中国の北京、上海、広東などの都市部の沿海部だけを見て中国を国家とみなすのは間違い。中国には一日一ドル以下の地方住民は五億四〇〇〇万人もいる。「もう一つの中国の存在」と彼は言っている。さらに彼は、主要都市にも合計二億人くらいの出稼ぎ労働者が流入している。貧困は地方から都市部にも拡大している。
このような現実を見ればわかるように、中国のマーケットは決して大きくない。したがって都市部に住む一握りの権力者は豊かになっても、貧しい農村部に恩恵が与えられることはないのである。
●中国に援助しても感謝されることはない
三番目の「日本が援助しつづければ、日本の誠意もわかってくれて中国に感謝され、過去のことも水に流してくれるのではないか」という期待も、結論から言えば、裏切られることはほぼ確実である。
中国に援助をすればするほど、中国は傲慢になって日本をいじめてくる。中国に対する三兆円を超えるODA(政府開発援助)は、これまで中国に感謝されたことがあっただろうか? 中国政府は日本に「感謝」という言葉はまず使わない。使っているのは「評価する」という言葉である。評価とは、地位などの高い人間が低い人間に対して使う言葉であって、対等な言葉ではない。ましてや、そのなかに感謝という気持ちは微塵もない。
実際、これほどのODA援助を受けながら、中国政府は国民に知らせてこなかった。たとえ国民に知らせたところで、中国人から感謝されることはないだろう。中国人の本質からして、お金はある者から取るのは当然という考え方があるからだ。
また、中国にとってこの経済援助は戦争賠償と捉えられているからである。二〇〇〇(平成一二)年五月、元外相の唐家B国務大臣が外務省の賓客扱いで来日したときも、ODAについて戦争賠償である趣旨のことを明言している。
実際、中国が日本に感謝しているかどうかは、中国の対応を見ればよくわかる。たとえば、国連のなかの人事やポスト、決議案について、中国は日本を支持したことはない。二〇〇五年四月に起こった反日デモは日本の国連安保理の常任理事国入りに反対するためだった。もし経済援助に感謝しているのだったら、支持しているはずだ。北朝鮮の人権侵害についての国連の決議案についても、北朝鮮が日本人を拉致したことが発端だったにもかかわらず、中国は北朝鮮側に立って決議案に反対した。これも日本に感謝していない証しだろう。
さらに、二〇〇六年三月五日からはじまった全国人民代表大会では、三月七日に李肇星外相は記者会見の席上、日本の指導者の靖国神社参拝について、ドイツのヒトラー崇拝と同じで「愚かで、不道徳だ」と非難した。非常に汚い言葉で、日本のリーダーを罵ったのである。
この日、日本の谷内正太郎外務次官が中国の王毅駐日大使を呼んでこの李肇星発言に抗議しようとしたのだが、王毅は応じなかった。外交上これは異例であり、日本を挑発したと言える。
先の記者会見で、李肇星外相は東シナ海のガス田開発に関して、日中中間線付近で生産準備を進めている春暁(日本名・白樺)などのガス田の位置は「日中双方の紛争のない中国近海」と重ねて表明し、日本側が求めている生産中止と共同開発に応じる考えがないことを表明したが、折しもこの日、ほぼ同時刻に同じ北京において、日本は中国と東シナ海のガス田問題を協議していた。
この協議で、日本政府が東シナ海の日中中間線の両側における「共同開発」を提案したところ、中国側はこれを受け入れられないとしたばかりか、日本の領土である尖閣諸島周辺海域および日韓大陸棚共同開発区周辺海域での「共同開発」を逆提案してきた。つまり、//
二番目の「中国全体が豊かになれば、一三億人の巨大なマーケットが誕生する」という期待についてだが、先にも述べたように、中国では豊かな人間とはほんの一握りの権力者であり、一三億人がすべて豊かになることはあり得ず、したがって、一三億人がすべてマーケットになるというのは大いなる幻想でしかない。
また、中国の国内総生産(GDP)の七〇パーセントは輸出によるものであって、内需によって支えられているわけではない。
たとえば、アメリカのGDPに占める輸出の割合は一五パーセントにすぎず、貿易立国といわれる日本にしても、その割合は三〇パーセントしかないのである。アメリカにしても日本にしても経済の繁栄は内需によるものであって、中国とは内容が異なる。中国は「世界の工場」と呼ばれていて、本来なら内需はもっと伸びていいはずだが、実際はたかだか三〇パーセントしかないのである。その原因の多くは、一握りの権力者が豊かになる中国の権力システムにあると言ってよい。
二〇〇六(平成一八)年二月一五日付の産経新聞に、アメリカの公聴会証言から作成した「数字で見る中国の現状」と題した表が掲載された。
これは、二〇〇六年二月上旬、二日間にわたって開かれたアメリカ議会の超党派政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」のなかの「中国指導部が直面する国内のチャレンジ」というテーマの公聴会で、一二人の委員と一〇人の専門家が出席して討議されたという。
この公聴会で、次のような数字が明らかにされた。
●毎年、二億人以上が休職
●二〇〇四年の経済成長率は一〇・一パーセント、二〇〇五年は九・九パーセント
●国内総生産(GDP)は二兆二四〇〇億ドル
●一人当たりの国民所得は一七〇〇ドル(米国は四万一〇〇ドル)
●五億人以上が一日の収入一ドル、貧困ライン以下の生活
●二〇〇四年は七万四〇〇〇件、二〇〇五年は八万七〇〇〇件の抗議行動
中国は一〇パーセント前後の非常に高い経済成長率を示している。これは、日本が一九六〇年代に「世界の奇跡」と言われた高度経済成長時代に達成した数字と並ぶ、驚異的な成長率である。
しかし、このような経済成長率を誇り、世界第四位の経済大国でありながら、二億人以上が休職、つまり二〇パーセントに近い失業率なのだ。また、これほどの経済大国でありながら、五億人、つまり国民の四〇パーセント以上は一日の収入が一ドル(約一一〇円)以下だというのである。一カ月(二五日稼動)に換算しても、三〇〇〇円に満たないのである。これをもってしても、いかに富が権力者に偏重しているかがわかろうというものだ。
この公聴会において、ブッシュ政権を代表する形で証言した国務省上級顧問のジェームズ・キース氏は、中国経済の現状について、次の四点を指摘したという。
(1)大国中国の陰には、貧しい中国が存在する。全人口一三億人のうち八億人が貧しく、五億人が一日一ドル以下の貧困層だ。
(2)内陸部は都市部に比べて、保険、教育、社会福祉、土地の侵食、水質の悪化、森林破壊などの各方面では劣等条件にある。
(3)地方の住民も法律で保障された権利に目覚め、当局による一方的な土地の収奪、違法徴税、賃金の不払いなどへ頻繁に抗議するようになっている。当局が治安を乱したとする抗議行動は二〇〇四年には七万四〇〇〇件、二〇〇五年には八万七〇〇〇件に達した。
(4)四五歳から六五歳までの中国国民の八〇パーセントは、保険や年金などの社会福祉の受益がなく、地方の当局者の腐敗の広がりは社会全体の倫理的価値観を侵食している。
さらに、ジョーンズ・ホプキンス大学の元教授で、中国社会問題研究学者のアン・サーストン氏は、中国には貧しい「もう一つの国家」があると、次のように指摘したことも産経新聞は伝えている。
中国の北京、上海、広東などの都市部の沿海部だけを見て中国を国家とみなすのは間違い。中国には一日一ドル以下の地方住民は五億四〇〇〇万人もいる。「もう一つの中国の存在」と彼は言っている。さらに彼は、主要都市にも合計二億人くらいの出稼ぎ労働者が流入している。貧困は地方から都市部にも拡大している。
このような現実を見ればわかるように、中国のマーケットは決して大きくない。したがって都市部に住む一握りの権力者は豊かになっても、貧しい農村部に恩恵が与えられることはないのである。
●中国に援助しても感謝されることはない
三番目の「日本が援助しつづければ、日本の誠意もわかってくれて中国に感謝され、過去のことも水に流してくれるのではないか」という期待も、結論から言えば、裏切られることはほぼ確実である。
中国に援助をすればするほど、中国は傲慢になって日本をいじめてくる。中国に対する三兆円を超えるODA(政府開発援助)は、これまで中国に感謝されたことがあっただろうか? 中国政府は日本に「感謝」という言葉はまず使わない。使っているのは「評価する」という言葉である。評価とは、地位などの高い人間が低い人間に対して使う言葉であって、対等な言葉ではない。ましてや、そのなかに感謝という気持ちは微塵もない。
実際、これほどのODA援助を受けながら、中国政府は国民に知らせてこなかった。たとえ国民に知らせたところで、中国人から感謝されることはないだろう。中国人の本質からして、お金はある者から取るのは当然という考え方があるからだ。
また、中国にとってこの経済援助は戦争賠償と捉えられているからである。二〇〇〇(平成一二)年五月、元外相の唐家B国務大臣が外務省の賓客扱いで来日したときも、ODAについて戦争賠償である趣旨のことを明言している。
実際、中国が日本に感謝しているかどうかは、中国の対応を見ればよくわかる。たとえば、国連のなかの人事やポスト、決議案について、中国は日本を支持したことはない。二〇〇五年四月に起こった反日デモは日本の国連安保理の常任理事国入りに反対するためだった。もし経済援助に感謝しているのだったら、支持しているはずだ。北朝鮮の人権侵害についての国連の決議案についても、北朝鮮が日本人を拉致したことが発端だったにもかかわらず、中国は北朝鮮側に立って決議案に反対した。これも日本に感謝していない証しだろう。
さらに、二〇〇六年三月五日からはじまった全国人民代表大会では、三月七日に李肇星外相は記者会見の席上、日本の指導者の靖国神社参拝について、ドイツのヒトラー崇拝と同じで「愚かで、不道徳だ」と非難した。非常に汚い言葉で、日本のリーダーを罵ったのである。
この日、日本の谷内正太郎外務次官が中国の王毅駐日大使を呼んでこの李肇星発言に抗議しようとしたのだが、王毅は応じなかった。外交上これは異例であり、日本を挑発したと言える。
先の記者会見で、李肇星外相は東シナ海のガス田開発に関して、日中中間線付近で生産準備を進めている春暁(日本名・白樺)などのガス田の位置は「日中双方の紛争のない中国近海」と重ねて表明し、日本側が求めている生産中止と共同開発に応じる考えがないことを表明したが、折しもこの日、ほぼ同時刻に同じ北京において、日本は中国と東シナ海のガス田問題を協議していた。
この協議で、日本政府が東シナ海の日中中間線の両側における「共同開発」を提案したところ、中国側はこれを受け入れられないとしたばかりか、日本の領土である尖閣諸島周辺海域および日韓大陸棚共同開発区周辺海域での「共同開発」を逆提案してきた。つまり、//