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 『三橋貴明の「新」日本経済新聞』

      2012/0306

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FROM 東田剛


 読者の皆さんは、どうしてTPP推進の動きが止まらないのか、不思議に思われるかもしれません。

 そこで、次の三つの説を考えてみました。

 一つは、TPP推進論者が、新自由主義・グローバリズムを心底信じているという「馬鹿」説です。
 これは経済学者、官僚、マスメディア、財界人に多い。
 対策は、ありません。

 もう一つは、米国の「外圧」説です。
 これは「馬鹿」説と違って、情状酌量の余地がある。

 中国の脅威が迫る中、前政権が壊した日米関係を改善することは、外交上の重要課題です。
 また、米国の円安容認をとりつけなければ、アベノミクスによるデフレ脱却は成就しない。
 ここで日米会談を成功させなければ、日本は外交と経済でいきなり挫折するかもしれないのです。

 そういう日本の立場に、米国は当然つけいってくる。
 たぶん、一月の訪米のオファーを蹴ってみせ、横っ面を張った上で、「TPPに関する前向きの土産をもってくるなら、二月に首脳会談やってやる」とメッセージを送ってきたのではないでしょうか。
 二月にTPPを巡る動きが急展開をみせたのは、そのせいでしょう。
 安倍総理も苦しいのだと思います。

【参考:米国政府は、日本をこう見ています】
http://toyokeizai.net/articles/-/12903?page=5

 仮に、この「外圧」説が正しく、交渉参加せざるを得ないのだとしましょう(個人的には、「せざるを得ない」とは思いませんが)。
 しかし、その場合は、日本人は、この屈辱を忘れず、臥薪嘗胆、日本の自立に向けて奮励努力するのです。
 もし、TPPがそういう契機になるならば、日本の「負けて、勝つ」です。安倍総理の悲願である「戦後レジームからの脱却」も見えてきましょう。

 また、日本人にそういう根性があるならば、交渉の途中で離脱したり、批准を拒否したりするという可能性も出てくるかもしれません。

 しかし、一番恐ろしいのは、次の説です。

 それは、米国の外圧に屈するという日本の惨めな現実を直視できないので、
「TPPは米国の外圧ではなく、日本の国益になるから、自分で選んで参加するんだ」
「日本には交渉力があるんだ」
「米国と共に、新たな貿易ルール作りを主導するんだ」
と自分に言い聞かせるという「自己欺瞞」説です。

 こういう「自己欺瞞」は、左翼の自虐史観を非難し、日本を誇りに思おうとする保守派に特に多いですね。

 「自己欺瞞」は、自己防衛本能からくる精神疾患の一種ですから、たちが悪い。
 TPPにメリットがないことや、米国の要求の理不尽さという現実を説得的に説明すればするほど、耳を貸すどころか、逆に、こちらに敵意を向けてきます。

 別に「馬鹿」ではないし、愛国心もあるようなのに、頑固なTPP賛成論者がいたら、この「自己欺瞞」という精神疾患を疑った方がよいでしょう。

 さて、安倍総理がどういう決断をするのか分かりませんが、仮に交渉参加を表明する場合は、「馬鹿」説、「外圧」説、「自己欺瞞」説のどれが当てはまるのでしょうか。
 私はせめて「外圧」説であることを願います。

 そう言えば、安倍総理は、施政方針演説の冒頭で、福澤諭吉の「一身独立して一国独立する」を引用しましたが、福澤はこう言っています。

「我日本国人も今より学問に志し、気力をたしかにして先ず一身の独立を謀り、したがって一国の富強を致すことあらば、何ぞ西洋人の力を恐るるに足らん。道理あるものはこれに交わり、道理なきものはこれを打ち払わんのみ。一身独立して一国独立するとはこの事なり。」

 「一身独立して一国独立する」とは、道理なき外交交渉を拒否することなんですね。

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