鍛冶俊樹の軍事ジャーナル
第97号(3月11日)
*注目すべきイランの動向


 チャンネル桜の討論番組「東アジアで戦争が起きる!」に出演した。
http://www.youtube.com/watch?v=cXOWOElA2Wc&feature=youtube_gdata
出席者としては貴重な意見交換の場を与えられた訳で実に有意義だったが、テーマは壮大なだけに論点が多岐に及び、視聴者には混乱した印象を与えたかもしれない。またテーマの性質上、深刻な表情で語らざるを得ないから、今の日本が絶望的な状況にあると誤解された方もいた様だ。

 現在、想定し得る最悪の国際情勢は、イラン、中国、北朝鮮が同時に戦争の火ぶたを切ることである。これは第3次世界大戦とも呼ぶべき状況である。だがこの危機の頂点は昨年12月12日の北朝鮮弾道弾発射から今年2月12日の北朝鮮核実験までであった。
 3月7日の国連安保理の対北制裁決議により、ひとまず危機は回避されたと見られる。というのも中国が対北制裁賛成に回ったため、中国と北朝鮮の連携が切れ、また制裁内容により北朝鮮とイランの連携が困難になったからである。

 もちろん連携はまたいつ復活するかもしれず、予断を許さない状況だがひとまず危機が回避された事は喜ぶべきことだろう。今後注目すべきはイランの動向であろう。
 実はこの2カ月間の北朝鮮危機の間、軍事筋が真に注目していたのはイランがホルムズ海峡を封鎖するかにあった。もし封鎖すればまさに第3次世界大戦の幕開けだっただろう。何故なら今、東アジアに集中している米軍戦力が中東に移動せざるを得なくなり、東アジアががら空きになったところで、中国が尖閣侵攻を開始しただろうからである。おそらく北朝鮮はそれを一日千秋の思いで待っていたに違いない。

 だが経済制裁に喘ぎイスラエルの空爆の恐怖に怯えたイランにその余力はなかったらしい。2月26、27日にカザフスタンでイランと米、英、仏、露、中、独の核協議が行われた。平和的解決で合意したと発表されたから、ホルムズ海峡を封鎖しないとイランは約束した事になる。おそらく今後は制裁緩和の方向で話し合われるだろうと見られる。
 この約1週間後に対北制裁決議である。もともと12月の弾道弾実験、2月の核実験はイランから技術や資金の供与を受けて北朝鮮が実施に踏み切ったと言われる。イランの所業は北朝鮮と共犯でありながら自ら司法取引に応じて裁判の証人に名乗り出た容疑者にそっくりである。

 こうした状況を鑑みるに、中国が軍を動員して尖閣に侵攻する公算は当面なくなった。だが中国は歴史的に正規戦よりも非正規戦を得意とする。すなわち情報戦争でありテロ、あるいはスパイ戦である。となればスパイ防止法の制定は急務となろう。


軍事ジャーナリスト 鍛冶俊樹(かじとしき)
1957年広島県生まれ、1983年埼玉大学教養学部卒業後、航空自衛隊に幹部候補生として入隊、主に情報通信関係の将校として11年間勤務。1994年文筆活動に転換、翌年、第1回読売論壇新人賞受賞。2011年、メルマ!ガ オブ ザイヤー受賞。2012年、著書「国防の常識」第7章を抜粋した論文「文化防衛と文明の衝突」が第5回「真の近現代史観」懸賞論文に入賞。
主著:「国防の常識」(角川学芸出版)
http://www.kadokawa.co.jp/book/bk_detail.php?pcd=201203000167
「戦争の常識」(文春新書)
http://www.bunshun.co.jp/cgi-bin/book_db/book_detail.cgi?isbn=9784166604265
「エシュロンと情報戦争」(文春新書、絶版)
「総図解よくわかる第二次世界大戦」(共著、新人物往来社)など


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