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 『三橋貴明の「新」日本経済新聞』

      2012/02/27


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FROM 東田剛

平和な日本には「まずはTPP交渉に参加してみて、有利なルールを作ればいい」と言う勇ましい人がたくさんいます。

しかし、孫子曰く「勝兵はまず勝ちて、しかる後に戦い、敗兵はまず戦い、しかる後に勝を求む。」

「まずは交渉に参加してから」などというのは、敗兵のやり方だということです。

さて、先日の総理訪米時の日米共同声明を見ると、日本に交渉力などなないことは、悲しいほど明らかです。

まず、いきなり「全ての物品が交渉の対象」となっています。これは野田前総理ですら、一応は拒否した条件ですが、それを安倍総理は正式に認めてしまいました。

次に、確かに、日本にはセンシティブな農産品があることが確認されてはいますが、その引き替えに米国にもセンシティブな工業製品(おそらく自動車)があることを認めさせられています。ただでさえメリットに乏しいTPPですが、さらに米国のわずかな工業関税すらも撤廃されない可能性も出て、メリットがさらになくなりました。

それどころか、事前協議で「自動車部門や保険部門に関する残された懸案事項に対処」することが確認されています。米国の自動車業界は、日本に対する要求は通し、関税は下げないという満額回答を勝ち得たわけです。

また、「両政府は,最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから、TPP交渉参加に際し、一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」とありますが、要は、結果は交渉力次第だという当たり前の話に過ぎません。こんなこと、総理がわざわざ訪米して大統領に確認するような話でしょうか。

しかし、日本は、米国よりはるかに多くの保護すべき品目や分野をかかえている中で、どうやって交渉を有利に進めるのでしょうか。自動車関税で米国に譲歩すれば、代わりにコメくらいは守れるかもしれません。では他のたくさんの品目や分野は、何を取引材料にして守るのでしょうか?

しかも、米国の狙いは、関税よりむしろ「非関税障壁」の撤廃にあります。自民党の「6条件」にも明らかなように「聖域」を確認すべきは、医療や保険などの非関税障壁なのです。しかし、その点は何ら共同声明に明記されませんでした。

それどころか、逆に、自動車や保険に加え、「その他の非関税措置に対処し、及びTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべき更なる作業が残されている」とあります。TPP交渉に参加したいなら、事前協議の段階で、米国の非関税障壁に関する要求を飲めということです。武装解除してからTPP交渉に参加せよということです。

しかも、オバマ大統領はTPP交渉の年内妥結を宣言していますが、交渉の会合はあと三回くらいしかありません。

安倍総理は、再三「国益を守る」と述べていますが、こんな状態で、TPP交渉に参加して、どうやって国益を守ることができるのでしょうか。

その方法は、論理的には、一つしかありません。

それは「国益」とは何かを、新自由主義者・構造改革論者に決めてもらうことです。そのための場として、すでに経済財政諮問会議や産業競争力会議が設けられています。

さて、これを読んで絶望的な気分になったTPP反対論者のあなた。それくらいで気が滅入るようなら、はじめから日本の政治や経済に関心をもってはいけなかったのですよ。世の中のことが分かるということは、厳しくつらいことなのです。

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