「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成25(2013)年2月15日(金曜日)
通巻第3878号 <前日発行>
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さすが世界一の投機家、ジョージ・ソロスは円安で930億円を稼いでいたゾ
アベノミクスでドル高、円安の本格化に便乗
****************************************
アベノミクスの登場で、日本の通貨当局が市場に一円の介入もしていないのに急激に円安状況となり、あれよあれよという間に1ドル=77円が、94円となった。気分的な希望、期待に世界の投機資金が便乗した。
稼ぎ頭は、かのジョージ・ソロスだった。
彼が稼ぎだしたのは930億円と見積もられる、とウォールストリートジャーナルが伝えた(14日付け)。
ということは、ソロスは、この辺で円安の下限と見極めたか、ポジションを変更したようで、世界為替市場での円安傾向は頭打ち、ドル高へ傾斜の気配を見せた。
同日、ワシントンの議会指名公聴会で証言したルオ次期財務長官は「ドル高を維持する」とした。
筆者はことしのダボス会議でジョージ・ソロスが次の発言をしていることに注目してきたが、彼の迅速な手じまいには驚かされた。
すなわちソロスは、世界経済全般を論じて「財政緊縮を現時点で採用するのは誤った政策であり、今後1、2年は非常に緊迫した状況が続くだろう」としたが、続けて「通貨戦争に各国が再度突入するリスクが存在し、これは欧州中央銀行(ECB)の行動様式を変えることにつながる危険がある。主要国はそのような対立を回避するための合意を築く必要がある)。
また円相場の動きについて「日本銀行の政策が本物であることに起因している」としてソロスは、「日本当局が円相場をどこまで押し下げることができるかは米国がどの程度まで容認する意向であるかによって制限されるだろうと」
と予測したのだった。
ソロスは痛いところーーアベノミクスのアキレス腱ーーを突いた。そうだ、日本には米国の圧力が左右するという目に見えない暗渠がこの先に横たわっているのである。
▽
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(週末休刊のお知らせ)小誌は16(土曜)から17日(日曜)を休刊します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
読者の声 どくしゃのこえ READERS‘ OPINIONS
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
♪
(読者の声1)貴誌前号の中国分析記事中、「習近平の軍事はやっぱり劉源」とあって、誰だろう、こういう予測をしていた人がいたと思い出したのです。
そこで本棚から貴著の『中国を動かす百人』(双葉社)を取り出して、「『太子党』は三派に分裂」という項目を開いたら、こうあるじゃありませんか。
(引用開始)
「習近平を囲む劉源派と胡耀邦の息子(胡徳平)派が太子党の勢力を大きく分ける。
習近平は兄貴分だった薄煕来を失って一字は悄然となったという。これは中枢の権力闘争で、胡錦涛率いる共青団のセクト争い上の勝利という解説が多い。
習近平にとって同じ太子党のライジングスターであり、一方はカリスマ性に富んだ薄煕来は潜在的ライバルであり、その失脚は将来のナンバー2を未然に消したという意味では、むしろ歓迎するべき事態だった。
習のまわりを囲む忠臣集団のなかで、軍で台頭めざましいのは劉源(上将。総後勤部政治主任)である。
劉は毛沢東の最大の政敵=劉少奇の息子である。習近平の父親は劉少奇派であり、毛沢東ににらまれて文革で痛めつけられた。そういう親をもつ文脈でも、また習と劉は幼友達であるという文脈でも、これからの中国では強い朋友となるだろう。(中略)
かれらは胡錦涛・温家宝の「保八路線」(経済安定化)を「軟弱であり、危機を目前にして対策がのろく、無作為である」と批判する一方、自分の親たちを失脚させた紅色政権(共産主義ドグマの独裁)には批判的である。したがって「新民主主義」なるものが「共産主義」ドグマの桎梏から超越できる新しい哲学的概念であると自画自賛し、また中国共産党の合法性も同時に主張する。
論理構造は支離滅裂としか言いようがないけれども、その論理的矛盾にはかまわず、新しいドグマを提唱しているところに特徴がある。その矛盾の最たるポイントは、太子党のなかでも文革で失脚した親をもつグループをかばう点である。事実、劉源らは薄煕来を失脚直前まで支持した」(宮崎正弘『中国を動かす百人』、双葉社から引用)。
なるほど、この貴著の文章を読んで、改めて劉源登場の背景が分かりました。
(YU生、京都)
(宮崎正弘のコメント)薄煕来事件のあと、しばし鳴りを潜めていた劉源が発言を始めたことは要注意です。
♪
(読者の声2)日銀白川総裁が任期切れまでに辞任表明し、次は誰かと下馬評がさかんですが、どうやら黒田アジア開銀総裁が、最有力という情報が流れています。先生の見通しはいかに?
(TY生、世田谷)
(宮崎正弘のコメント)官界人事情報に疎い小生としては、まったく分かりませんが、その情報通りとすれば、「白が黒になるだけ」では? また人事観測はこの段階で有力視されると、たいがい観測気球に使われるだけで、隠れた本命か、ダークホースがいるんじゃありませんか。
♪
(読者の声3)1999年4月6日 発行のデアゴステイーニ社の「週刊ムービー No57」に所謂「でっち上げ南京事件が無かった」のを傍証するような映画があるらしいので、ご報告いたします。
それは、1938年東宝制作 解説 徳川夢声 題名「南京」
掲載された文章をそのまま写します。
「前作「上海」で長編記録映画の金字塔を打ち立てた東宝映画文化映画部が、今度は陥落直後の南京へ撮影スタッフを派遣し、戦争の爪痕や現地住民の状況をフィルムに収めたドキュメンタリー。城内の左手に中国の戦闘機が逆立ち、広い中山路は民家の家財がむごたらしく散らばっている。軍官学校の壁には、一度去ったらここに来られるかという悲痛な落書きがあった。貴重な映像記録といえる1作」
如何なんでしょうか?
今まで南京に関して、このような記録フィルムがあるとは寡聞にして聞いたことがありませんでした。あのでっち上げを否定する傍証にならないものかと、思い投稿いたします。
旧聞に属すような情報でしたら、申し訳ありません。
(SAKURA)
♪
(読者の声4)貴誌前号の投書「SJ生、静岡」氏のモンゴル帝国論大変面白く読ませて頂きました。
私も予々アジアの歴史は中国の歴史で語られるのに疑問をもっていました。
モンゴルは中国(シナ)を席巻植民地にして元を打ち立てやがて中国で敗退してもモンゴル帝国は微動だにしなかったわけですが、その部分が語られない。
語るべきはジンギスカンの後裔であるモンゴル人なのか。研究はこれからということですか。
(SF生 岡山)
(宮崎正弘のコメント)この方面の第一人者は宮脇淳子さんです。近年、沢山の著作を矢継ぎ早に発表されていますので、是非ご参照あれ。
♪
(読者の声5)貴誌前々号にでた藤井厳喜説:史上「ランドパワーはシーパワーになった例はない」に関して、「SJ生、静岡」様からも貴重なご意見が寄せられました。私はこの問題を別の視点で考えてみました。それは、兵法のコツが「相手の意表を突く」ことにあるからです。歴史上、過去を打破した例は、アレキサンドロス大王が「解いたものがアジアの王となる」という預言のあった「ゴルディアスの結び目」を一刀両断した故事があります。ナポレオンもそれまでにない兵力の一点集中突破戦法で既存の布陣法で展開した敵を打ち破りました。


