2>> 台湾の悩ましい“中国人特需”─旺盛な購買力と際立つ傍若無人ぶり  片倉 佳史

 片倉佳史(かたくら・よしふみ)氏は、1990年代半ばから台湾に暮らし、現地発の情報を発信し続けている。ガイドブックの執筆や日本統治時代の遺構調査、老人たちへの聞き取り、そして講演活動など、幅広い取材活動を展開し「台湾の達人」とも称される。

 本会関係では、今年5月に「台湾の達人・片倉佳史さんと行く台湾200%満喫の旅」を行い大好評だった。

 その片倉氏が、急増する中国人観光客が台湾にもたらす“光と影”について書かれている。経済効果は欲しいものの、デメリットもあり、確かに悩ましい。

 ただ、中国人観光客は台湾に来ると必ずテレビを見るという。政府批判も堂々とできるその自由な言論の様子を確かめるためだという。観光そっちのけでテレビにかじりついている中国人もいるという。

 悩ましい中国人観光客より、日本人観光客をもっと歓迎したいというのが台湾の“本音”だという声も漏れ聞く。

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台湾の悩ましい“中国人特需”─旺盛な購買力と際立つ傍若無人ぶり 片倉 佳史
【SANKEI Biz:2012年10月16日】

 日本と台湾の結びつきは年々強まっており、日本から台湾への訪問者は昨年、約129万人を記録した。毎月10万人程度が訪台している計算となり、日本の地方都市から台湾に乗り入れる定期便就航や増便も、相次いで決まっている。

 台湾から日本を訪れる旅客にも注目したい。日本への台湾人渡航者は2004年に100万人を突破し、10年は138万人となった。昨年は東日本大震災の影響で114万人にとどまったが、今年は9月時点で前年レベルにほぼ達しており、通年では130万人突破は必至とみられている。

 台湾の総人口は約2300万人だが、海外渡航者総数は延べ958万人に達している。つまり、半数近くが海外に渡っていることになり、そのうち8人に1人が日本を訪れている。この数字だけからも、台湾には親日家が多く、頻繁に日本を訪れ、理解を深めている姿が見えてくる。

◆消費5000億円を突破

 台湾で今、最も注目されているのは中国から訪れる旅行者である。中国人旅行客の解禁は08年7月18日からとその歴史は浅い。しかし、昨年上期までの台湾訪問者は延べ350万人に達している。

 観光客は当初、1日当たり300人程度だったが、10年には約10倍の3199人に拡大。昨年から受け入れ上限は1日当たり4000人にまで引き上げられた。

 消費動向も気になるところだが、解禁以降、昨年上期までに中国人訪問客の総消費額は約2033億台湾元(約5450億円)に達している。旅行客に限ってみても約1197億台湾元の外貨収入を台湾に与えており、移動や滞在に伴う周辺利益や観光産業以外の波及効果も含めると、やはり経済効果は大きい。

 中国人の旺盛な購買欲は日本でも注目されるが、台湾でも土産物のパイナップルケーキを一度に20箱以上も買い込む人も珍しくない。こうした中国人の消費力に押され、台湾におけるパイナップルケーキの製造高は、解禁の前後を比べると10倍以上に成長したとも言われ、その“特需”ぶりが理解できる。

◆政治的利用への不安

 中国からの旅行者を積極的に受け入れ、経済の活性化を図るというプランは、台湾の馬英九政権が発足した当時から打ち出されていた。昨年は約178万人もの中国人が台湾を訪れている。このうち観光目的の来訪者は129万人で、すでに日本からの渡航者数を超えている。

 もちろん、弊害と言えるものも少なくはないようだ。「粗暴な振る舞い、大声で話す、試食品や試供品を大量に持ち去る」と、急増する中国人観光客に批判的な世論があるのも事実だ。

 また、渡航解禁によって利益を得られるのは観光業者などの特定業界に限られており、社会的全体が受けるメリットは大きくないという声や、景観の破壊や社会不安の増長といった否定的な側面も指摘されている。

 激増する中国人訪問客によって、台湾の市場そのものが変容を強いられる危惧もあるが、中国が台湾への渡航者数を意図的に制御して、これを政治的な武器として利用されることへの不安もある。

 例えば、09年に台湾南部の高雄市がチベット仏教の最高指導者、ダライラマ14世を招いた際、中国からの団体旅行者のキャンセルが相次ぎ、その直後にホテルで3000室もの空室が出るというケースがあった。

 日本と台湾、そして中国の動きは、旅行業界ひとつ取り上げても、東アジアの情勢を見ていく上で実に興味深いものがある。今後、台湾の地で繰り広げられる旅行者の動きからは目が離せそうにない。

                (台湾在住作家 片倉佳史)

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3>> 日本型新幹線を世界標準に 日台連合を形成

 日本から台湾にはさまざまな鉄道車両が輸出しているが、その白眉は何と言っても新幹線だろう。新幹線は、東京オリンピックが開かれた昭和39(1964)年に開通しているが、それから40年、新幹線の車両技術を初めて輸出したのが台湾だった。

 本誌でも伝えてきたが、台湾版「新幹線」が2007年1月に開業するまではかなりの紆余曲折を経た。しかし、現在では台湾の人々にとってなくてはならない「足」となっていて、事故を起こさないという「新幹線思想」も受け入れられたようだ。

 昨日(10月24日)、JR東海、JR西日本、JR九州、台湾高速鉄路の4社は「日本の新幹線など高速鉄道システムを共同で海外展開することで合意した」という。産経新聞が伝えているので紹介したい。

 台湾とはこういう「日台連合」で手を組みながら、世界に進出したいものだ。今後の「日台連合」のモデルケースとして注目してゆきたい。

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日本型新幹線を世界標準に 日台連合を形成
【産経新聞:2012年10月24日】

 JR東海とJR西日本、JR九州、台湾高速鉄路は24日、名古屋市で会合を開き、日本の新幹線など高速鉄道システムを共同で海外展開することで合意した。安全性、正確性に定評のある日本の新幹線を共同でアピールし、海外受注拡大を目指す。「日本型新幹線」の世界標準化へ、日台がタッグを組む試みとしても注目されそうだ。

 高速鉄道をめぐっては、ブラジルやインド、米国などで建設構想が浮上するなど、世界的な市場拡大が予想されている。4社はほぼ共通の新幹線システムを運用しており、今後、各国で具体化する建設計画で協力することを確認した。JR東海が進める超電導リニアの輸出も視野に入れる。

 JR東海の葛西敬之会長は「日本の新幹線のメリットを世界中にアピールしていきたい」とコメントした。台湾高鉄が運営する台湾新幹線は、東海道・山陽新幹線で運行されている「700系」をベースとした車両と信号システムを採用。日本の新幹線システム初の海外輸出となった。