「憲法改正を叫ぶ者は決して少くない。然し憲法改正の為めに自ら命を断った人は、三島由紀夫氏を以て嚆矢とする。悲壮な死であった。その精神史的意義は大きいが、三島ほどの情熱と文才と行動力を有った有為の士が、同じことなら自決というような道を選ばず、徹底した憲法改正の啓蒙運動に後半生を捧げてくれたならば、いかに偉大な効果が期待できただろうかと、私は、それを惜しいことに思うのである。」

「ともあれ三島の自決は憲法改正を志す日本国民にとって、一つの大きな刺戟であった。彼の死を高貴あらしめるものは、それが憲法改正の志念とつながっていることであった。彼の生前に知り合えなかったことは残念に思えてならぬ。」

以上のように晩年の里見岸雄は三島由紀夫と面識がなかったにもかかわらず、また後述するようにその天皇観において違いがあったものの、その決起と自決の趣旨と精神を大変高く評価していたことがわかる。

鈴木邦男氏の主張について

鈴木邦男氏の最近の著書に『竹中労』というのがあるが、その中で鈴木氏が「三島は里見の影響を受けていると思う。」と書いている箇所がある。これは本当なのか?里見学派を継承するものとして看過できない表現である。この鈴木氏の本では竹中労氏の発言が以下のように引用されている。
「名前が粋でね、八犬伝や岸打つ波という感じでしょ(笑)、まずそれでひっかかって、いま言ったように内容的には違和感があったのです。ウムと肯綮に当ったのは戦後、それも二十年以上たってからなんですよ。三島由紀夫が東大全共闘と対話した前後、『文化防衛論』を読んでいてフッと里見岸雄が記憶の底から蘇よみがえってきた。手に入るかな彼の本がと思って本棚を見たら、あるじゃないの『天皇とプロレタリア』と『国体に対する疑惑』が。それで読みなおして、1969年に出版した『山谷/都市叛乱の原点』に彼の国体・政体分離論を借用したわけなんです。」〔竹中労『竹中労の右翼との対話』〕

「小説家は、タネ本を出さないのが建前なのです(笑)。『文化防衛論』は里見岸雄理論を下敷きにしている、というぼくの指摘は絶対に間違いないと確信しています。」〔竹中同書〕
一見鋭い感性のように思われるが、実証的な裏付けがない。
「天皇制―資本主義―(……と私たちは呼ぶことにしよう)の経済基盤は、近代的な統一国家の形式に名を借りた、地租収奪の独占による。」〔竹中『山谷/都市叛乱の原点』〕

「佐野・鍋山はいう、『革命の形態は各国の伝統的、民族的、社会心理学的因素によって異なる』、したがって、日本においては、『皇室を戴いて―一国社会主義革命―を行うのが自然であり、また可能である……』と。それは、北一輝の『天皇ヲ奉ジテ速ヤカニ国家改造ノ根基ヲ完ウセザルベカラズ』(日本改造法案・大綱)とする、天皇制―社会主義―思想とシャム双生児のように一致する。だが、―革命とは、歴史伝統の肯定的発展であるのか?」〔竹中同書〕

「1969年5月12日、作家三島由紀夫は、東大全共闘『焚祭』の討論集会に出席して、『日本の民衆の根底にあるもの、―天皇制を把握しなければ、諸君の革命も成功しなければ、私の文学もあり得ない』と語った。その指摘は正しい。ただし、三島の把握しているのは、『士』の理念であり、私たちは『穢多』の思想に依拠する。天皇制―資本主義―とは、くり返し指摘したように、『差別』『搾取』の権力の二重構造、いいかえれば―政治・イデオロギー的支配――経済支配―の混然たる一体としての国家権力であった。……そして今日、三島由紀夫が『士』のイデオロギーから問いかける天皇制―神話―に、革命的学生たちはほとんど答えるスベを知らず、なぜか友好的ムードを通わせてしまうのである。」〔竹中同書〕

鈴木邦男氏が引用する竹中労の論は、「穢多」(=窮民)による革命を夢想するなかで、里見や三島から「天皇制」と「資本主義」や「社会主義」を切り離すという発想のヒントを得たということに過ぎない―あくまで、竹中にとっての里見であり三島である。鈴木邦男氏には他者の発言や論述を全く検証することもなくそのまま引用したり、根拠なくその論が自分の結論であるかの如く書く性癖(軽さ)があるのは残念である。
  (つづく)          (文責・編集部) 
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 九月以後の予定です
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西尾幹二先生(憂国忌代表発起人のおひとり)の講演会があります。
日時・会場等は、次のとおりです。


と き  : 9月17日(月・祝) 開場:午後2時 開演:午後2時15分
         (途中20分の休憩をはさみ、午後5時に終演の予定です。)
ところ  : グランドヒル市ヶ谷 3階 「瑠璃の間」 
演 題  : アメリカはなぜ日本と戦争をしたのか?(戦争史観の転換)
入場料  : 1,000円 (事前予約は不要です。)
懇親会  : 講演終了後、西尾先生を囲んでの有志懇親会がございます。
     午後5時~午後7時 同 「珊瑚の間」 会費 4,000円



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公開講座 ロマノ・ヴィルピッタ氏を招いて
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日時: 9月24日(月)18:30~2030(18:00開場)
会場: アルカディア市ヶ谷(私学会館)4階会議室
講師: ヴィルピッタ・ロマノ(前京都産業大学教授、保田與重郎研究家)
演題: 三島由紀夫とイタリア
会場分担金  おひとり 2000円(会員千円)

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公開講座 寺尾克美閣下(退役陸将補)を招いて
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日時: 10月22日(月)18:30~ (18:00開場)
場所: アルカディア市ヶ谷(私学会館)
講師: 寺尾克美(退役陸将補)
演題: 三島由紀夫事件の真相
会費: 二千円(会員は千円)
講師プロフィール:昭和4年生。愛媛県出身。昭和28年早稲田大学卒業/