■■ Japan On the Globe(761) ■■ 国際派日本人養成講座 ■■
国柄探訪: なでしこジャパンの団結力
体格のハンディをはねかえした「なでしこジャパン」の団結力はいかにもたらされたのか。
■転送歓迎■ H24.. ■ 40, Copies ■ 3,4,Views■
無料購読申込・取消: http://blog.jog-net.jp/
-----------------------------------------------------------
暑中お見舞い申し上げます。弊誌は次週はお休みをいただき、8月26日より、配信を再開いたします。(伊勢雅臣)
-----------------------------------------------------------
■1.「この決勝戦は試合が始まると誰もが夢中になった」
ロンドン・オリンピックで、なでしこジャパンが銀メダルをとった。世界ランキング1位、オリンピック3連勝を目指すアメリカ相手に2-1と善戦し、内容的にも連係プレーの妙を発揮して何度もスタンドを湧かせる攻撃を仕掛けるなど、見事な内容だった。
日経新聞WEB版は「なでしこ、誇れる銀 世界に伝えた女子サッカーの魅力」と題して、こう伝えた。
__________
この決勝戦は試合が始まると誰もが夢中になった。それほどハイレベルで見応えのある素晴らしい内容のサッカー。・・・
そして、なでしこジャパンにとっても、今大会で最高というだけでなく、昨年のワールドカップのときをも超える最高の内容の試合だった。[1]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
大柄なアメリカ選手と戦う小柄ななでしこメンバーは、まるで小学生チームが大学生チームに戦いを挑んでいるように見えた。それでも互角の戦いを見せてくれたのは、個人の力や天才的プレーに依存するのではなく、あくまでチームプレー中心の戦いを追求したところにある。
なでしこジャパンの見せた団結力は、「和の国」日本の今後の進むべき方向を示してくれている。幸い、なでしこジャパンの団結力については、昨年のワールド・カップ優勝への道のりで詳しく紹介されているので[2,3]、それらを頼りに、その団結力がいかにもたらされたのか、考えてみたい。
■2.「もう、このチームはひとつには戻れないかもしれない」
昨年のワールドカップでの最大の危機は、予選B組の最終戦でイングランドに0-2で負けた時だった。これでB組2位となり、準々決勝には進出できるが、相手はおそらくA組1位をとるドイツとなる。
ドイツは世界ランキング第2位の強豪であり、かつホスト国として燃えている。なでしこは過去8戦しているが、引き分けが1回のみで勝ったことがない。佐々木監督は「A組の2位候補はフランスかな。まあ、ドイツと当たるよりはやりやすいはずだから、しっかり1位通過できるように準備しますよ」と語っていた。
それがまさかの完敗。試合後、「フォワード(前衛)が力負けしたのかな。もっと早く戦い方を切り替えて、サイドを使っても良かった」「フォワードが(ボールを)とられちゃうから」と守備陣からは、フォワードへの不満が相次いだ。
一方、フォワードの永里優季は、「ボールがなかなか(フォワードまで)出てこなかった。けれど、もはや出てこないことを前提に考えないといけませんね」と不満ありありの表情で吐き捨てた。
永里は、ヨーロッパの強豪ポツダムの中心選手として、得点王争いに食い込むなどの活躍を見せていた。世界的な強豪チームでは、1対1のバトルが原則だ。そのような環境で、のしあがってきた永里の目には、日本の「みんなでカバーしあう」サッカーが物足りなく映っていたのかも知れない。
「話し合いは必要ない」「それぞれが自分で感じて気づかなければ意味がない」「チームメイトには期待も要求もしない」などと、永里は発言していた。なでしこに密着取材していた江橋よしのり氏は、危機感を抱いた。
__________
決して小さくはなかった溝が、痛恨の敗戦によって地割れのように広がってしまったように感じられた。
もう、このチームはひとつには戻れないかもしれない。[2,p74]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
■3.「ひとりにはさせないよ」
ドイツ戦が始まり、双方、チャンスをものにできないまま、0-0で前半が終了した。15分間のハーフタイムが終了して、永里は丸山桂里奈と交代させられた。「ここを逃したらもう終わり」というギリギリのタイミングでの決断だった。
丸山は日体大4年生の時にアテネオリンピックに出場するなど、前途有望の選手だったが、その後、故障などで低迷していた。しかし、かつて住んでいた福島の地で、人々が東日本大震災で苦難の生活を続けている姿に思いを馳せると、再び這い上がろうとする強い意志が甦った。
丸山の黙々と練習する姿を見た佐々木監督は、「動きにもキレが戻っている」と見抜き、サブ組だが、ワールドカップにも連れてきたのだった。
後半も0-0のまま終了して、延長に入った所で、丸山が相手の隙を狙って絶妙のコースを走り出し、「願いを込めて」澤から送られたパスに快足で追いつき、角度の狭い難しいコースから、シュートを決めた。丸山にとって、日本代表としての3年ぶりのゴールだった。これが決勝点となって、なでしこは初めてドイツを破った。
ドイツ戦後、勝利に沸くなでしこの中で、永里は一人、別の理由で号泣した。その時、永里のもとにさっと駆け寄った選手がいた。宮間あやだった。攻撃のキーマンであるが、チーム内のまとめ役でもある。
宮間は永里の手をとり、歩き出した。「永ちゃん、泣き顔が可愛くないから見せられないな、と思って」と冗談めかせてその理由を話したが、「ひとりにはさせないよ」という心遣いは、永里に伝わっただろう。
■4.「ここに座りな!」
続く準決勝のスウェーデン戦。永里はスターティング・メンバーからも外された。ゴールキーパーの控え・福元美保が、同じく控えのゴールキーパーで最年長の山郷のぞみに「永ちゃんを、私たちの間に座らせよう」と提案した。「いいね。そうしょう」と山郷も応じる。
山郷は、試合前、慣れないベンチでのキックオフを迎えようとしていた永里に「ここに座りな!」と声をかけた。
山郷は、後に「私たち、ベンチメンバーが普段どんなふうにベンチでいるのかを見せたかったし、伝えたかった。永ちゃんは分かる子だから」と、そのときの思いを語っている。
同時に、山郷は、提案した福元に対しても、「福ちゃんは、北京オリンピックのときのレギュラーで、私よりも試合に出たい思いは強かったはず。今回の大会での彼女の姿勢も評価してほしい」と感謝した。
永里に替わって、この日初めて先発に起用された川澄奈美補は、今回が初めての国際大会で、今までは途中出場を続けながらも結果が出せずにいた。「5試合分はりきっちゃいました」との言葉どおり、1点リードされた後の同点弾、そして3点目のだめ押しと、2度もゴールを決めた。
■5.「私、永ちゃんのこと、見ていますから」
74分、その川澄にかわり、永里が指名された。ここで川澄を交代させるべき理由はなかった。佐々木監督が、永里にも変わることにない信頼を注いでいると、本人にも周囲にも伝えたかったのだろう、というのが江橋氏の推測だ。
指名された永里を、ベンチメンバーが、肩を叩いたり、ハグをしたりして、それぞれの思いを託した。この時の思いを永里はこう語っている。
__________
ドイツ戦で途中交代して、次は自分がスタメンじゃないってのは感じていました。(ベンチでの)みんなの気持ちが嬉しかったし、大きかった。それに高瀬(愛実)の存在が、私にあることを気がつかせたんです。[3,p123]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
20歳の高瀬は将来を期待されるフォワードだが、ワールドカップで4試合を消化しても出場機会がなかった。その高瀬が、ドイツ戦後、なにげなく話をしていた時、「私、永ちゃんのこと、見ていますから」と語ったという。
__________
途中交代をした自分がどこでどうするのか、彼女に見られていることがわかったんです。スタメンを外されても、変わらずにいよと、気持ちを強く持てた。[3,p123]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
国柄探訪: なでしこジャパンの団結力
体格のハンディをはねかえした「なでしこジャパン」の団結力はいかにもたらされたのか。
■転送歓迎■ H24.. ■ 40, Copies ■ 3,4,Views■
無料購読申込・取消: http://blog.jog-net.jp/
-----------------------------------------------------------
暑中お見舞い申し上げます。弊誌は次週はお休みをいただき、8月26日より、配信を再開いたします。(伊勢雅臣)
-----------------------------------------------------------
■1.「この決勝戦は試合が始まると誰もが夢中になった」
ロンドン・オリンピックで、なでしこジャパンが銀メダルをとった。世界ランキング1位、オリンピック3連勝を目指すアメリカ相手に2-1と善戦し、内容的にも連係プレーの妙を発揮して何度もスタンドを湧かせる攻撃を仕掛けるなど、見事な内容だった。
日経新聞WEB版は「なでしこ、誇れる銀 世界に伝えた女子サッカーの魅力」と題して、こう伝えた。
__________
この決勝戦は試合が始まると誰もが夢中になった。それほどハイレベルで見応えのある素晴らしい内容のサッカー。・・・
そして、なでしこジャパンにとっても、今大会で最高というだけでなく、昨年のワールドカップのときをも超える最高の内容の試合だった。[1]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
大柄なアメリカ選手と戦う小柄ななでしこメンバーは、まるで小学生チームが大学生チームに戦いを挑んでいるように見えた。それでも互角の戦いを見せてくれたのは、個人の力や天才的プレーに依存するのではなく、あくまでチームプレー中心の戦いを追求したところにある。
なでしこジャパンの見せた団結力は、「和の国」日本の今後の進むべき方向を示してくれている。幸い、なでしこジャパンの団結力については、昨年のワールド・カップ優勝への道のりで詳しく紹介されているので[2,3]、それらを頼りに、その団結力がいかにもたらされたのか、考えてみたい。
■2.「もう、このチームはひとつには戻れないかもしれない」
昨年のワールドカップでの最大の危機は、予選B組の最終戦でイングランドに0-2で負けた時だった。これでB組2位となり、準々決勝には進出できるが、相手はおそらくA組1位をとるドイツとなる。
ドイツは世界ランキング第2位の強豪であり、かつホスト国として燃えている。なでしこは過去8戦しているが、引き分けが1回のみで勝ったことがない。佐々木監督は「A組の2位候補はフランスかな。まあ、ドイツと当たるよりはやりやすいはずだから、しっかり1位通過できるように準備しますよ」と語っていた。
それがまさかの完敗。試合後、「フォワード(前衛)が力負けしたのかな。もっと早く戦い方を切り替えて、サイドを使っても良かった」「フォワードが(ボールを)とられちゃうから」と守備陣からは、フォワードへの不満が相次いだ。
一方、フォワードの永里優季は、「ボールがなかなか(フォワードまで)出てこなかった。けれど、もはや出てこないことを前提に考えないといけませんね」と不満ありありの表情で吐き捨てた。
永里は、ヨーロッパの強豪ポツダムの中心選手として、得点王争いに食い込むなどの活躍を見せていた。世界的な強豪チームでは、1対1のバトルが原則だ。そのような環境で、のしあがってきた永里の目には、日本の「みんなでカバーしあう」サッカーが物足りなく映っていたのかも知れない。
「話し合いは必要ない」「それぞれが自分で感じて気づかなければ意味がない」「チームメイトには期待も要求もしない」などと、永里は発言していた。なでしこに密着取材していた江橋よしのり氏は、危機感を抱いた。
__________
決して小さくはなかった溝が、痛恨の敗戦によって地割れのように広がってしまったように感じられた。
もう、このチームはひとつには戻れないかもしれない。[2,p74]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
■3.「ひとりにはさせないよ」
ドイツ戦が始まり、双方、チャンスをものにできないまま、0-0で前半が終了した。15分間のハーフタイムが終了して、永里は丸山桂里奈と交代させられた。「ここを逃したらもう終わり」というギリギリのタイミングでの決断だった。
丸山は日体大4年生の時にアテネオリンピックに出場するなど、前途有望の選手だったが、その後、故障などで低迷していた。しかし、かつて住んでいた福島の地で、人々が東日本大震災で苦難の生活を続けている姿に思いを馳せると、再び這い上がろうとする強い意志が甦った。
丸山の黙々と練習する姿を見た佐々木監督は、「動きにもキレが戻っている」と見抜き、サブ組だが、ワールドカップにも連れてきたのだった。
後半も0-0のまま終了して、延長に入った所で、丸山が相手の隙を狙って絶妙のコースを走り出し、「願いを込めて」澤から送られたパスに快足で追いつき、角度の狭い難しいコースから、シュートを決めた。丸山にとって、日本代表としての3年ぶりのゴールだった。これが決勝点となって、なでしこは初めてドイツを破った。
ドイツ戦後、勝利に沸くなでしこの中で、永里は一人、別の理由で号泣した。その時、永里のもとにさっと駆け寄った選手がいた。宮間あやだった。攻撃のキーマンであるが、チーム内のまとめ役でもある。
宮間は永里の手をとり、歩き出した。「永ちゃん、泣き顔が可愛くないから見せられないな、と思って」と冗談めかせてその理由を話したが、「ひとりにはさせないよ」という心遣いは、永里に伝わっただろう。
■4.「ここに座りな!」
続く準決勝のスウェーデン戦。永里はスターティング・メンバーからも外された。ゴールキーパーの控え・福元美保が、同じく控えのゴールキーパーで最年長の山郷のぞみに「永ちゃんを、私たちの間に座らせよう」と提案した。「いいね。そうしょう」と山郷も応じる。
山郷は、試合前、慣れないベンチでのキックオフを迎えようとしていた永里に「ここに座りな!」と声をかけた。
山郷は、後に「私たち、ベンチメンバーが普段どんなふうにベンチでいるのかを見せたかったし、伝えたかった。永ちゃんは分かる子だから」と、そのときの思いを語っている。
同時に、山郷は、提案した福元に対しても、「福ちゃんは、北京オリンピックのときのレギュラーで、私よりも試合に出たい思いは強かったはず。今回の大会での彼女の姿勢も評価してほしい」と感謝した。
永里に替わって、この日初めて先発に起用された川澄奈美補は、今回が初めての国際大会で、今までは途中出場を続けながらも結果が出せずにいた。「5試合分はりきっちゃいました」との言葉どおり、1点リードされた後の同点弾、そして3点目のだめ押しと、2度もゴールを決めた。
■5.「私、永ちゃんのこと、見ていますから」
74分、その川澄にかわり、永里が指名された。ここで川澄を交代させるべき理由はなかった。佐々木監督が、永里にも変わることにない信頼を注いでいると、本人にも周囲にも伝えたかったのだろう、というのが江橋氏の推測だ。
指名された永里を、ベンチメンバーが、肩を叩いたり、ハグをしたりして、それぞれの思いを託した。この時の思いを永里はこう語っている。
__________
ドイツ戦で途中交代して、次は自分がスタメンじゃないってのは感じていました。(ベンチでの)みんなの気持ちが嬉しかったし、大きかった。それに高瀬(愛実)の存在が、私にあることを気がつかせたんです。[3,p123]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
20歳の高瀬は将来を期待されるフォワードだが、ワールドカップで4試合を消化しても出場機会がなかった。その高瀬が、ドイツ戦後、なにげなく話をしていた時、「私、永ちゃんのこと、見ていますから」と語ったという。
__________
途中交代をした自分がどこでどうするのか、彼女に見られていることがわかったんです。スタメンを外されても、変わらずにいよと、気持ちを強く持てた。[3,p123]
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄