「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年8月10日(金曜日)
通巻第3720号
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台湾政府が「台湾の投資家の利益を守るため」と奇妙な容喙
鴻海精密工業、シャープ買収が再交渉、白紙にもどる可能性も出た
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液晶、電子部品で急激にのし上がってきた鴻海精密工業は台湾企業。アップル、マイクロソフトなどの中枢部品を生産する。
もともとはちっぽけなプラスチック成型屋さん。資本金は僅か230万円。それも頼母子講から掻き集めた。何回も倒産しかけて、仲間は逃げだし、さんざんな苦労の末、日本から導入した技術であたった。
中国大陸ではフォクスコム(富士康)と知られる。後者は中国各地に工場、従業員54万人という大マンモス。深センの主力工場は隣が華為技術。
一昨年から昨年にかけて12名の自殺者がでて世界に悪名をとどろかせた。成都工場では暴動が発生し、ひとりが死亡、待遇改善、賃上げ要求だが、実際はロボット導入による雇用不安が背景にあった。
この精密工業を率いるのは山西省出身の郭台銘(英語名も持っていて、テリィ・グオと名乗る)。純粋な台湾企業と勘違いする向きが多いが、山西省の商人精神を発揮し、台湾では強敵=奇美実業を吸収合併するなど急激な成長には、ライバル企業の買収も盛んにおこなってきた。
その強欲な手が日本のシャープに及び、さきに鴻海はシャープの株式10%を取得すると発表した。
さらには堺のシャープ液晶工場は郭台銘個人で半分を出資すると豪毅な姿勢だった。
ところがシャープの株価が急落、28%も下落した段階になって、郭台銘は「再交渉する」として、取得金額値下げ交渉にはいった。
背景にはシャープ側の交渉下手もあるが、最大の理由は「不況予感」であろう。
というのも鴻海の主力は中国の子会社=富士康が生産しているアップルのiPad、iフォンだが、ブームは頂点を打って、先の需要が見えてきた。
つぎに四川省成都の新設工場に投資したロボット設備の投資資金が膨大で、有利子金利負担も響いている。
そして8月9日、台湾政府が「投資家の利益を保護する」という目的で、鴻海にシャープへの出資に再興を促すという奇妙な手段にでてきた。政府を動かした活発なロビィ工作があったと推定される。
そもそも自由主義経済国家で政府が一民間企業の投資家保護を理由に、企業活動に介入することは考えにくい行為である。
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◆ BOOKREVIEW ◆ 書評 ◇ しょひょう ◇ブックレビュー ★
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真珠湾の半年も前からアメリカは日本空爆を準備していた
ルーズベルトの陰謀、次々と歴史的資料と証言がでてきた
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加瀬英明 & ヘンリー・S・ストークス共著
『なぜアメリカは、対日戦争を仕掛けたのか』(祥伝社新書)
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著者の二人、ともによく存じ上げているので、中身は読まなくても分かる筈だった。いつも正しい史観に立脚して、的確な歴史的分析と判断を展開されるから安心して聞くことが出来るが、こんどの本は従来の延長線上にあるとはいえ、異色である。
まずヘンリー・ストークス氏がかく言う。
「従兄はインドに展開していたイギリス軍部隊に所属していたが、昭和十六年なかばに、ビルマ(現ミャンマー)のラングーン飛行場に降り立って、我が目を疑った。多数のアメリカ軍戦闘機と爆撃機が翼を連ねているのを、目の当たりにしたからだ。日本が真珠湾を攻撃する六ヶ月前のことだった。従兄は職業軍人だったから、その意味を即座に理解した。それは、アメリカが日本に戦争を仕掛ける準備をしていること以外のなにものでもなかった」(本書166p)。
そうだ、あの戦争は日本を罠にはめてアメリカが仕掛けてきたものであり「狂人」(フーバー元大統領はFDRをこういった)の仕業である。
そしてフライングタイガーと命名されるアメリカ空軍は「志願兵」を偽装し、さらに「蒋介石の空軍」を偽装した。遠くビルマ、雲南戦線。そして長沙陥落後の湖南省西南部で、多くの日本兵が犠牲となったが、相手はシナ軍ではなくアメリカ空軍だった。
「シナ軍」とは名ばかりのアメリカの傭兵だったというのが真相である。
加瀬英明氏はこう言う。
「私は1957年(昭和32)年に、晩年のマッカーサー元帥をニューヨークのマンハッタンのウォールドルフ・アストリア・ホテルにあるペントハウスの邸宅に訪ねたことがあった。後にこのときのことを『文芸春秋』(1967年三月号)に寄稿したが、マッカーサー元帥は私に煙草をすすめ、震える手でマッチを擦って、火をつけてくれた。
マッカーサーは、かなり耄碌していた。それでも『日本は軍備を拡張して、自由アジアの一大軍事勢力として極東の安全に寄与しなければならない』と語調を強めた」(154p)。
加瀬さんは続ける。
「東京裁判は司法的にみせかけて、体裁をつくろったリンチだった」
「アメリカが日本に戦争を強いた大きな原因の一つが、人種差別だった」
敗戦の八月十五日は目の前、いまこの稿を書いているとき、テレビは長崎でヘイワの呪文を唱える人たちの集会を実況中継している。過ちは繰り返しません、と。
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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 789回】
――いまこそ歴史から学ぶべきだ・・・?西旅行の終わりに(中)
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ミャンマー(緬)と雲南省西部(?西)とは地理的にも人的にも一体化しているといえるほどに近い。今回の旅行で改めて体感し確認できたことだ。たとえば?緬公路のミャンマー側基点でミャンマー東北部の要衝であるラシオ(漢字で「臘戌」と綴る)だ。
騰冲郊外和順村の寸氏宗廟の碑文には臘戌在住の一族の名前が記され、多額の寄付金――その多くが2000年以降――が寄せられていることが見て取れた。?町で国境関門を越え150、60km南下すればラシオ。
ラシオから西南に直線で300kmほど進めば中部の大都市であるマンダレー(漢字で「瓦城」とも「曼徳勒」とも綴る)だ。
おそらく華人の意識では、ラシオもマンダレーも漢字で表記する臘戌であり、瓦城であり曼徳勒であるはずだ。
そこで「漢-シナ人Han-Chineseのグループ」による「シナ化sinicize」が黄河流域のいわゆる中原地方から南および南西、南東の方向へ向って展開され、「シナ化とはこれら南方地域の漢-シナ人の植民地化colonizationの過程にほかならず」、「それは具体的には城壁都市の建設によって表出され」るがゆえに、「シナ化とは端的に都市化urbanizationである」との大室幹夫(『劇場都市』 ちくま学芸文庫 1994年)の説に拠るなら、ミャンマーの中部以北では、いままさに「シナ化sinicize」が進行中ということだろうか。
そういえば第2次大戦中、蒋介石は英軍撤退後のビルマ領有の正統性を仄めかしたこともあるそうな。
ところでスーチーに戻るが、今年4月1日実施の補欠選挙運動のため、3月半ばにラシオ入りした彼女は2万人余の聴衆に向かって、「NLD(国民民主連盟)が勝利しても、ラシオの華人の企業活動に不都合を与えるようなことはない。
華人がミャンマー国内でビジネス活動を行うことは双方の利益に適うことであり、ミャンマーと中国の間は良好な関係にある。両国間には極めて僅かな問題はあるが双方は相互理解と互譲の関係を結んでいる。
