「サァ、どうしようか」となったとき、ひとりの若い海軍重砲隊の中隊長が提案を出します。軍という組織は、あくまでも上位下達の組織です。下の者の意見などというものは、基本、まったく反映されることはない。そんなことを許せば、軍の組織が乱れるもとになるからです。

けれど、このとき、その若い中隊長の案は採用となりました。案を出したのは、若き日の永野修身です。

会社勤めをしていても、こうしたほうがいい、ああしたほうがいいなど、「良い案」を持つ人はたくさんいます。百人の社員がいれば、百通りの方法案がある。特に知的レベルが高く、一人一人の組織への忠誠心の高い日本人社会では、その傾向がとくに強いとさえいます。

けれど、意見があるからといって、その意見が全てが万事受け入れられるものではありません。その意見が、きちんと筋が通っていること、そして大切なことは、意見を出す者自体が、日頃から周囲に信頼されていることが、大切な要素となります。

具申した意見が良ければ採用となるほど、世の中甘くはありません。たいせつなことは、昨日今日学校を出たばかりの「青二才」だった永野の意見が採用になったということは、それだけ日頃からの永野の振る舞いや言動が、周囲をして「なるほど」と納得させるだけのものを持っていた、ということです。

このことはとても大切なことです。昨今では「意見が通らないから」と拗ねたり、それどころか意見を聞いてくれないと上司の悪口を言ったりするのが、あたりまえになっているかのような社会風潮ががあるけれど、そもそも、そのような発想が出てくること自体が、間違いなのです。

意見を通すには、その意見の内容が正鵠を得ていることもさりながら、日頃から上司や同僚、部下などからのきちんとした信頼関係を築いておかなければならない、ということです。つまり、意見を通したいなら、日頃から意見を通せるだけの働きをしておけ、ということです。それが日本社会というものです。

そして若き日の永野は、見事に自身の意見を通しました。無線通信によって弾道を補正するという案を、軍に採用させたのです。

どういう案かというと、二〇三高地から着弾地点を観測し、敵艦の座標をもとにして、無線連絡で着弾点を補正し、命中させる、というものです。

現代の無線通信技術なら、なんだそんなことか、と思われるかもしれません。けれど、当時の無線通信技術は、まだトンツートントンのモールス信号です。

そのトンツートントンだけで、リアルタイムに着弾点の補正をする。大砲の方位と角度を微妙に調整し、火薬の量を調整し、正確に命中させる。

発射した大砲の弾の着弾地点を見て、具体的に方位何度、仰角何度修正、しかもその修正をモールス信号で無線で知らせ、その上で「撃て~!」とやるわけです。

そしてこのとき、最前線で着弾地点の観測した永野は、瞬時にこの方位、仰角の修正角を暗算し、修正角を無線で指示しています。後方で大砲を撃つ砲術班は、その指示通りに、見えない敵艦をめがけて、大砲を発射する。

永野の指示した弾は、ことごとく命中したといいます。まさに鍛え抜かれた、プロの匠み技だったわけです。

後年、永野修身は、海軍軍令部総長にまで栄達します。けれど彼は、単に頭がよく、人柄も良くて、体力、気力にも恵まれ、軍事に関する技量にも恵まれていたというわけではだけではありません。若い頃から常に才能を磨き、新しい技術に挑戦し、工夫し、改善し、周囲の者と協調し、これを実現にまで漕ぎ着けるだけの徳を持っていた、という、これはひとつのエピソードです。

さてその永野、若い頃からたいへんに義侠心が強かったそうです。一時は清水次郎長一家に本気で弟子入りしようとしています。

侠気がある、ということは、人の悲しみや辛さをわがこととして理解し、同苦し、一緒に泣き、一緒に笑う男気がある、ということです。そんな永野は、大東亜戦争のさなか、軍令部総長としての実務は次長以下に任せ、自身は戦没者の墓碑銘を日々、書き連ねていたといいます。

よく「軍人は戦争好き」などとバカなことを言う人がいます。それは違います。だいたいそのような「争いごと好き」な人物には、誰もついていきません。人がついてこないということは、命令に対する離反を起こすということで、そもそもそういう人物は出世できるものではない。もっといえば、軍人ほど戦争の厳しさを知り、戦争回避を願う者はいないということです。

大東亜戦争が、いよいよ開戦という方向に向かったとき、終始一貫して反対したのも永野でした。米国との戦いにおいて、太平洋まで出て米国と直接対決するという案に、「あまりにも博打すぎる」として、猛反対し続けています。



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