今村教授は、その回顧録に次のように書いています。
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関東大震災において、その災害を軽減する手段があらかじめ講究されなかったことは、為政者の責任であったろう。関東大地震の災害の九割五分は火災であった。水道管はあまり強大でない地震によっても破損して用をなさないものであるから、大地震の場合に於いては全然破壊されるものと覚悟しなければならぬ。このことは大森房吉など科学者が最も力説したところだが、為政者は顧みなかった。
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また別の本でも、
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地震学の泰斗大森博士は、震災と消防の関係について深く憂い警告を発せられた。自分も大森博士の驥尾に付して、機会あるごとに・・・
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と書いています。

大森博士は、今村を新聞事件当時、名指しで非難しているのです。にも関わらず、今村は、生涯、先輩である大森博士を敬い続けています。

なぜでしょう。どうして今村は、自分を名指しで非難した大森教授を尊敬し続けていたのでしょうか。

これには理由があります。大森博士は、ちゃんと知っていたのです。今村の説が正しいことを、です。

知っていて、大森教授は今村の説を否定しました。なぜなら彼は、発展途上にある地震学を、なんとしても我が国に根付かせねばならなかったからです。そして同時に、首都圏を襲う地震被害の最大の問題は、地震そのものよりも、むしろ震災以後に起こる火災被害の方が、はるかに大きな問題であることをさえ、理解していました。

市井の人々の関心は、大地震が来るというなら、それがいつ来るのかです。けれど、それはわからない。今日来るかもしれないし、何十年も先に来るかもわからない。いつくるかは、天のみぞ知ることです。

それ以上に大切なことは、被害が最小に収まるように、人知を尽くすこと。震災による家屋の倒壊、火災の発生、そうした事態に備えて、防火対策を施すこと、避難所や避難経路を日頃から確立すること、そうした「人にできること」を、地震の研究を続けると同時に、根気づよく人々に訴え続けていかなければなならい。地震学を世に根付かせ、研究を続けていかなければならない。いっときの「予言が当たった、外れた」で、地震学という学問を失ってはならないのです。そのことを大森教授も、今村も、ともにちゃんと理解していた。

だからこそ今村は、世間からどんなに非難されても地震学教室から出ることはなかったし、その後も大森教授のもとで研究生活に打ち込むことができたのです。

今村が、生涯を通じてもっとも尊敬した人物、それが大森教授でした。世間の誰もがわかってくれなくても、師弟の間にちゃんと通じるものがある。絆だけじゃない。もっと深い心の相互信頼がある。それが、私たち日本人がとっても大切にしてきた師弟関係というものではないかと思います。

もしお時間があったら、今日の記事の冒頭の今村教授のお写真を、もう一度ご覧になってみてください。とっても良いお顔をされています。何を言われても、どんなことがあっても、決して切れない相互信頼と絆を大切に生きた人だけが持つ、素敵な晩年の笑顔が、そこにあります。

この二人の教授のことは、一部の方にはよく知られた話で、本も出ています。ただ、多くの識者のみなさまが書いておられるのは、要するに先輩といったって、あるいは東大教授と言ったって、しょせんは権力欲に取り憑かれた人たちであり、二人の関係を、きわめて対立的にとらえています。要するに、この二人の教授の関係を、先輩教授と後輩教授の「階級闘争」としてとらえているわけです。

けれど、もし、先輩の大森教授が今村教授と対立的関係にあったのなら、今村教授はとっくの昔に東大を放逐されていたろうし、今村教授も何十年もそうやって先輩のことを悪し様に思い続けたのなら、はっきり言って晩年の人相にそういうものが出るものです。つまり、人相が悪くなる。

ところが、この二人、どちらも非常に良いお顔をされています。しかも今村教授は、その著書であくまでも大森教授を立てておいでになる。

このことがはっきりと明示しているのは、二人の先輩後輩教授の間にあったのは、共産主義的階級闘争などという悪辣なものではなく、上辺は別として、心の底で互いを尊敬し敬愛するきわめて日本的な相互信頼関係にあった、ということです。これを古い言葉で「悌(てい)」といいます。

「悌」は、弟が兄を慕うように、長序をわきまえ、互いに尊敬し、信頼しあうことをいいます。私は、この二人の教授の中に、その「悌」の姿を見ます。なぜなら、それが日本人というものだからです。

そうそう、いまに残る関東大震災の「地震波」を記録した地震計は、今村が大森式地震計を改良して作ったものなのです。地震計は、その後いろいろな形に改良されて今に至っているけれど、基本的な仕組みは、大森、今村両教授が開発した地震計が、いまでも世界の地震の観測に役立てられています。二人の教授の活躍は、時代を越えて、いまも生きているのです。


 
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