「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年5月29日(火曜日)
通巻第3665号
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これじゃ新幹線プロジェクトと同じ、拙速、がむしゃら。技術の背伸び
中国は66ケ国で、じつに300のプロジェクトを推進中
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中国は国内だけでは飽きたらず、海外へ、特許契約に違反しても平気で大型プロジェクトを低利融資を付帯させて輸出する。政経分離ではなく政経一致である。
ロシアのジェット戦闘機技術をライセンス生産し、契約を反故にして、ほかの国へ輸出したためロシアは怒った。ジェット戦闘機の部品供与を中断し、空母ウクライナのカタパルト技術をプーチン政権は中国軍に渡さなかった。
最先端のステルス技術をどこかで入手して、中国はステルス戦闘機の弐回目のテスト飛行をおこなったが「この第五世代のステルス戦闘機(J-20「マイティ・ドラゴン」)は米製「F22=ラプター」に酷似しており、米国かロシアから盗み出した技術だ」(英語版プラウダ、5月21日付け)。
独・加、そして日本の三カ国から仕入れた新幹線技術は、「あれは中国の独自開発」と偽って新幹線車両ばかりか、その高度技術を海外へ輸出しようと動いた。日本の車両メーカーは275キロ以上出した場合、責任は取らないという念書を中国の新幹線製造メーカーの責任者からとった。
そして2011年7月23日、浙江省温州で300キロを平気でだした後続車が追突、先頭の三両が脱線するという痛ましい事故が起きた。悲惨だったが、日本の所為だと、いつものイチャモンは無かった。身から出たさび。
欧米からパクッた技術は他にもあるが、中国が国家ぐるみ、助成金をつけて開発した風力発電、太陽パネルでも、面妖なビジネス抗争が起きており、これから各国との訴訟合戦も始まるだろう。
ジム・ファローズが冷たく言い放った。「中国の現象的な成功の実態とは脆弱さと失敗の証明でもある」(ヘラルドトリビューン・アジア版、2012年5月28日)。
▼せっかくつくったのに五万ケ所でダムが破損したりし、既に発電をやめている
さて中国の水力発電である。巨大ダム建設による発電は、他方において地盤沈下、地震、異常気象をともない、想定外の豪雨などをもたらした。とくに世界一といわれた三峡ダムは上流地域で地震の頻発、下流地域では洪水の懼れによる立ち退き計画が立案され、また洞庭湖、番陽湖などが干し上がった。
貴州では異常気象により河川が干ばつ、すでに1000の工場に電力がこないため、操業停止に追い込まれた。乱開発のダムの所為だという(ジェイムズタウン財団「チャイナブリーフ」、5月25日号)。
一方で既存のダムの五万個所で非効率や破損のため発電をやめているが、その発電プロジェクトにまつわる幾多のスキャンダル、汚職、無駄な投資という批判が渦巻いている。
海外へのダム建設プロジェクトの供与も活発化した。じつにメコン川上流に13のダム、イラワジ河上流に26のダム建設等々。実際に過半の計画は実行に移され、建設が始まっている。
ところがミャンマーは北東部カチン族居住区で中国が建設を開始していた巨大ダムのプロジェクトを中断した。テイン・セイン政権はカチン族との宥和政策を優先し、中国にしか裨益しないダムにはNOと言ったのだ。すっかり中国は慌てたが、同様な動きは中国と国境を接するラオス、ベトナム、バングラデシュ、ネパール、インドで顕在化している。
なぜ止めないか。現在推進中ならびに計画中のダムの総費用は1360億ドルと推計されており、この巨大な利権をおさえる中南海の政治家が、みすみす巨額の賄賂収入を辞退することはありえないだろう。
(註 番陽湖の「番」には「こざと」)
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読者の声 どくしゃのこえ 読者之声
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(読者の声1)薄煕来失脚までの王立軍亡命未遂事件からの動きをメディアの中でも一番早く報じた貴誌ゆえに、ひとつ質問です。息子の薄瓜瓜はボストンから行方不明になったと言われましたが、その後、中国へ帰国したのですか。あるいは中国当局に、かれも拘束されたのでしょうか(UI生、三鷹)
(宮崎正弘のコメント)薄瓜瓜はボストンの豪華マンションからは姿を消しましたが、彼の担当教官のひとり、エズラ・ボーゲル教授に拠れば「元気だ」といわれてきました。5月24日、ハーバード大学の卒業式に現れた薄瓜瓜は、卒業証書を受け取り、にこにこ笑いながらマスコミの取材を蹴って、ふたたび米国内の何処かへ消えました。
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(読者の声2)在米読者ですが、所用あって日本に戻り、紀伊国屋で貴著をすぐに買い求めました。『中国が世界経済を破綻させる』(清流出版)は題名も中味も世界市場の巨視的な感覚で展望されていて、納得するばかりです。貴著が、このタイミングで極めて重要であるばかりか、まさに米国の議論と同時並行的という早読みのセンスの冴えです。というもの、おりから米国で注目されている書物はルチール・シャーマ(モルガン・スタンレー『新興国ファンド』主任)が書いた『BREAKOUT NATIONS』です。このなかでルチール・シャーマは中国経済の衰退は自然の流れでもあるが、急激なおちこみは世界の経済バランスを崩すと言っており、またこの本を評して著名コラムニストのザガリアは『ワシントン・ポスト』(5月24日付け)で同様な危機感を警告しているのです。そういう意味で貴著は、いまの日本のパラノイア的非常識な言論界の中でひときわ光ります。こういう本質を把握している評論家が日本にいることに安堵感があります。(HJ生、在ニューヨーク)
(宮崎正弘のコメント)ご指摘の書籍、まだ読んでいませんでしたが、それは現場の声ですから、切迫感があると思われます。
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(読者の声3)貴誌3663号(読者の声1)でHK氏が「宮崎先生は『日米先端特許戦争』(ダイヤモンド社)を1983年頃、かかれて、いち早く特許技術戦争に警鐘を鳴らされた」と書かれたのに対して、(宮崎正弘のコメント)「出願件数と特許成立件数を間違えていませんか? かたや中国はダボハゼ型。なんでもかんでも出願して、中味で日本が中国の脅威に晒されるのは、まだかなり先のことですよ」と書かれました。HK氏も宮崎先生も慧眼です。しかし、一つ付け加えさせてください。それは1983年当時、対日国家防衛の一環として米国の特許政策があった時点からの情勢の変化です。まず歴史的にみると、米国においては憲法自体に特許権の規定があり、発明者の権利が建国の時点から法的に保障されていました。それ以降、特許権を大きく保護する(pro-patent)の時代と特許権の行き過ぎを反省し、権利を抑制する(anti-patent)の時代が30年の周期で繰り返しました。その周期が、1990年代になって次の通りに大転換しました。
1.特許権をより強く保護し、特許料をとることを強く支持する一方、特許権の範囲を明確にし、あいまいで抽象的な「請求項(claim)」で少しでも引っかかれば特許権を主張できたのができなくなった。


