3. 台湾・外交部の主張(自由時報2012.4.18)

 ワシントンでの石原発言の直後、台湾政府外交部のスポークスマン章計平氏はただちに次のような声明を発表しました。「中華民国はこの種の発言内容を承認するものではない。釣魚台列嶼は中華民国固有の領土であり、政府は『主権は我にあり、争議は棚上げし、和平互恵、共同開発』の原則を守る。同時に日本政府に対し、この問題を慎重に処理し、台日友好関係を損なうことがないよう訴える」

 ニュースは続けて、「台湾の国家安全局の某氏によれば、表面的にはどうであれ、台日の政府関係者間には、保釣活動は『時々生ずる麻疹のようなもので、健康を害するようなものではない』という暗黙の了解があり、双方がそれぞれの立場を表明するが、両者の関係は影響を受けることはなく、外部が想像するような緊張はない」と書いています。

 保釣活動というのは、「中国固有の領土である釣魚台列島(尖閣諸島)を守れ」と中国人社会で湧き起こっている運動で、沖縄復帰に伴い尖閣諸島の施政権が日本に返還されることに対し、アメリカに留学中だった台湾人学生が1971年1月から5月にかけてワシントンD.C.や台北市などの都市で抗議デモを展開したのが始まりとされる(ウィキペディア)。その後1996年(香港活動家が海に飛び込み溺死)、97年(西村眞悟氏等上陸)、04年(中国人が尖閣諸島に上陸)、08年(聯合号事件)、10年(中国漁船衝突事件)、11年(「世界華人保釣連盟」を設立)にいろいろな事件、衝突が引き起こされています。

 1971年のデモには当時留学中の馬英九現総統も参加していたといいます。馬英九は後に「海底油田の紛争:東シナ海海底境界線と外国投資の法律問題」という論文を書き、ハーバード大学の法学博士号を取得している(聯合報)とのことです。彼は尖閣諸島の領有権は中華民国にあるとの立場のようですが、李登輝元総統がいろいろな場で、尖閣諸島は日本の領土であることを明確に主張されているのは有名な話です。

4. 「頭城鎮誌」には何と書いてあるか

 中華民国が尖閣諸島の領有権を主張する根拠が、宜蘭県の「頭城鎮誌」に記載されています。「鎮」は行政単位の一つで県の下に位置しますので、「頭城鎮誌」は頭城という郡か村の歴史などを記述した資料とでも言いましょうか。宜蘭県は台湾の北東部にありますが、その東側海上の沖合に日本の与那国島、さらにその向こうに西表島、石垣島があり、そして東北の沖合に問題の尖閣諸島があります。

 自由時報は、「宜蘭県の『頭城鎮誌』にれば、釣魚台列嶼(尖閣諸島)は民国60(西暦1971)年1月、政府が宜蘭県に組み入れ、頭城鎮大渓里に所属させた。県の役所は民国93(西暦2004)年4月地籍の登記を済ませたので、国有地は政府が公開の競売をしない限り、売買はできない」と書いています。

 これは自由時報の記事ですが、インターネットで「頭城鎮誌」を検索してみますと、その中に「釣魚台列嶼は台湾本島の東北約120カイリの沖合にある8個の小島からなり、島には人が住んでいないので、宜蘭県の漁民は『無人島』と呼んでいる」と紹介しています。

 そしてこの島嶼の地理形勢について記述し、漁民がこの地域を好漁場として活用してきたこと、また最近、地下資源の可能性が見出されたこと、「保釣運動」の歴史を振り返り、現在日本、中国、台湾がそれぞれこの島の主権を主張しているが、宜蘭県としては、政府機関がしっかりと主権を主張し、民間が実際的な協力をし、学識経験者が論文を国際社会に発表することにより、我々の立場や問題解決への態度を明らかにし、国際社会に釣魚台の問題をアピールすることができるとしています。

5. 中国ネットの主張

 5月8日の「自由時報」記事の中に中国の反応が伝えられています。引用します。

≪中国は東京都の尖閣諸島購入宣言に敏感に反応し、先週2隻の漁政船を釣魚台近くの海域に派遣し、日本の領海に2日にわたって反復出入りした。中国のネット上には『東京都を丸ごと買い上げよう』という資金集めの呼びかけさえも現れた。中国のあるネット仲間は、中国人一人当たり10,000寄付すれば、東京はおろか日本全体すら買うことができると、説いています。≫

 東京都民である私としては少々驚かされ、穏やかな気分にもなれず、その可能性を早速試算してみました。

 このネットの主張には「10,000」としか書いてなく、単位が人民元か、日本円か、それとも米ドルかわかりません。もし、中国人各人が10,000人民元寄付するということになれば、中国人の平均年収はUS$3,800と聞いておりますので、それは人民元約24,000元(日本円約304,000円)で、年収の半分を寄付することになります。これは並大抵のことではありません。いわんやUS$10,000では年収の約3年分、とても無理でしょう。日本円10,000円なら年収の約1/30、約0.4か月分、これなら何とかなるでしょうか。やはりきついですね。10,000台湾ドルならUS$338ですから、やはり無理でしょう。どうすれば「中国人一人当たり10,000寄付すれば……」なんて言えるのでしょうかねぇ。

6. 東京都尖閣諸島寄附金

 東京都が尖閣諸島寄付金の窓口を設けましたが、応募金額はすでに8億円を超えたそうですね。尖閣諸島の購入価格がいくらになるかわかりませんが、東京都民税で購入するのではなく、日本国民の寄付によって購入するということは素晴らしい。

 いったい一人当たりいくらくらい寄付をしているのでしょうか。ネット情報によれば、5月21日現在60,450件、840,629,923円だそうです。1件当たり13,906円になります。私は現在台湾におりますので直接寄付できませんが、もうすぐ一時帰国しますので、そのとき応分の寄付をさせていただこうと考えております。まだご存じない方のために、文末に口座名を記します。

7. おわりに

 北方四島、竹島、対馬、尖閣諸島などの領有権問題、最近の外国人(企業)による日本国土(森林や水源地)の買収問題などに対する政府の対応に嫌気が差したり、憤っている国民は少なくないと思います。民主党政権に限らず、歴代政権の態度にイライラが募っていた矢先、石原東京都知事の尖閣諸島買取りの話を聞いて快哉を叫んだのは私だけではありますまい。

 今回の「台湾通信」執筆に当たり、各種資料にあたってみましたが、たまたま台湾の一地方の郷土史・誌を見る機会がありました。この『頭城鎮誌』で主張している領有権の根拠はとても納得できるものではありませんが、「政府機関の主権宣言、民間の協、学識経験者の情報発信によって、世界にその問題を考えさせる」ことが可能という主張は理解できます。

 だらしない政府は何かに怯え、情報発信の代表たるマスコミも何かに媚を売っているように見受けられる日本において、尖閣諸島寄付金は民間人の国土、主権に対する意思表示であると考えられます。

 金額はもちろん大切なバロメターですが、人数が大切です。たとえ小さな額でもいい、尖閣諸島寄付者が一人でも増えることを願います。

◆尖閣諸島寄付金振込先口座
 みずほ銀行 東京都庁出張所(777)
 口座名:東京都尖閣諸島寄付金
 口座番号:(普)1053860