致知出版社の「人間力メルマガ」
【2012/5/27】 致知出版社編集部 発行
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このメールマガジンでは、月刊誌『致知』より皆さまの人間力を高めるエピソードを厳選してご紹介しています。
* *
本日は現在発行中の『致知』6月号より、義眼の現役女子プロレスラーとして活躍する救世忍者 乱丸さんのお話をご紹介します。
ぜひ最後までお読みください。
■「致知随想」ベストセレクション
「不可能を可能にする力」
救世忍者 乱丸(女子プロレスラー、第21代TWF世界タッグ王者)
『致知』2011年11月号「致知随想」
※肩書きは『致知』掲載当時のものです
網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)という目のがんに罹り、片目を摘出したのは私が3歳の時でした。
母は義眼となった娘の私を抱いたまま心中も考えたようですが、当の私は別段そのことを気に病むこともありませんでした。
小学校4年の時、空手師範だった父の影響で空手を習い始めると、他の道場へも出稽古に行くほどのめり込み国際武道大学に進学して世界大会にも出場を果たしました。
ところが大学3年を迎えたある日、なんとなしに観戦したプロレスに私はすっかり魅了され、プロレスラーになりたいという思いが抑えられなくなってしまったのです。
空手家として将来を期待していた父からは「みっともない。頼むからやめてくれ」と反対されたものの私の決意は変わらず、すぐにオーディションを受けました。
厳しい実技試験を終え、手応えを感じていた私でしたが、審査員の長与千種(ながよちぐさ)さんに声を掛けられました。
「ごめんね、傷つく言い方をするかもしれないけど、その目はどうしたの? 空手をやっていたそうだけど、プロレスはぶつかって初めて成るスポーツだから」
「大丈夫です。私、リングで死んでもいいと思ってますから」
「あなたはそれでいいと思うんだ。でも対戦した相手はどうなるかな」。
優しい言い方で、言われていることは十分分かっていました。私は返す言葉もなく、それでもやりたいと泣き喚くことしかできませんでした。
一体どうすればプロレスラーになれるのだろう。
なんとか別のオーディションを探し出してみたものの、やはり結果は同じ。
いくら頑張っても目が悪いだけで弾かれてしまうのか……。
悶々としていた時、偶然見つけたのがアニマル浜口さんのプロレスラー養成ジムでした。
大学の講義を月火水にまとめて取ると、そのまま浅草のジムへ行って泊まり込みで練習。男子でさえ音を上げてしまう厳しいメニューを同じようにこなすことができたのは、プロレスラーになりたいという情熱以外の何ものでもありませんでした。
一年前とは見違えるような体つきに変化した頃、ある出来事をきっかけに業界全体で門戸を広げることとなり、私もあっさりオーディションに合格することができたのです。
ただ入団はしたものの、満足な仕事もできない私は怒られてばかり。そのうち誰にも話し掛けてもらえなくなり、マスクを外して素顔でリングに上がらされたり、頭を坊主に剃られ、見世物のようにされるなど惨めな思いを味わいました。
もうやめてしまおう。
あれほど憧れていたプロレスに終止符を打ち、家業を手伝っていた私の元へ、ある日1本の電話が掛かってきました。
「あんた、まだプロレスやりたいでしょ。うちでやらない?」。
電話の主は吉本女子プロレスのスター選手だったジャガー横田さん。将来この子が障碍者の方の希望になればという思いがあったそうで、未練のあった私は「お願いします」と返事をし、再デビューを果たすことができたのです。
入団後も先輩方の温かい指導のおかげでTWF世界タッグ王者になり、各方面から試合のオファーもいただくようになりました。
原因不明の血尿が出るようになったのはそんな頃のことです。ある日高熱に見舞われ、病院へ行くと集中治療室に入れさせられ、緊急入院の指示を受けました。
「急速進行性糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)」という腎臓病で、治療は安静が原則。運動は禁止でプロレスなどは論外です。その上厳しい食事制限も課され、こんな状態が一生続くのかと思うと絶望的な気持ちになりました。
そんな時お見舞いに来てくださったのが、ジャガーさんと、ご主人で医師の木下博勝先生でした。
先生は私に病名を尋ねられ、
「なんだ。その病気だったら、時間はかかるかもしれないけど、必ず治るよ。安心したよ」
と言われました。
あれ?
それまで主治医や看護師からは薬の副作用で骨粗鬆症になるなどと説明を受けてきたため、不思議な気もしましたが、それならば頑張ろうと気持ちを入れ直しました。
そして密かにリング復帰の決意をし、歩行訓練から始めて筋トレのメニューを少しずつ増やしていきながら、その日を迎える準備を行いました。
2008年、約2年ぶりとなる復帰戦の舞台を用意してくださったのは、ジャガーさんと先輩のライオネス飛鳥さんでした。
あれほど強く望んでいた復帰戦もいざリングを前にすると、まさか本当にこの日が来るとは、と込み上げてくるものを抑えることができませんでした。
無事試合を終えた夜、私は真っ先にジャガーさんと木下先生にお礼を言いに行きました。
「先生のあの時の言葉が凄く励みになったんです」
「いやぁ、実は病名を聞いた時、復帰できると思ってなかったんだよ。可能性はゼロだと思ってたんだ」
世の中には不可能を可能にする力が存在すると私は思います。
一つには固い決意と粘り強さ。
プロレスラーになれなくて悩んでいた時も、私は必死にもがいて行動し、絶対になるんだとしか考えていなかった。入院生活中に復帰を決意した時もそう。
そして不可能を可能に変えるもう一つの力は、周りにいる人がどんな言葉を与えるかではないでしょうか。
苦しい時を経ていまも憧れのリングに立たせていただいていることの幸せを噛み締めながら、私もいつかジャガーさんや木下先生のように、困っている誰かに手を差し延べることのできる存在になれたらと願っています。
※救世忍者 乱丸さんの公式ブログ
http://ameblo.jp/521ranmaru/entry-11247597403.html
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※『致知』は書店では販売しておりません。
『致知』最新6月号 特集テーマ「復興への道」
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▼宮城県知事・村井嘉浩氏が語る復興への視点
▼護国なくして復興なし・黄文雄氏&ペマ・ギャルポ氏
▼東大名誉教授・月尾嘉男氏が語った「日本再生の針路」
▼キヤノン電子・酒巻久社長の「20代をどう生きるか」
▼コミュニケーションデザインで地域を蘇らせる・山崎亮氏
▼被災中小企業の支援に尽力する、ベガルタ仙台社長・白幡洋一氏
【さらに詳しい内容はこちらから】
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【2012/5/27】 致知出版社編集部 発行
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ぜひ最後までお読みください。
■「致知随想」ベストセレクション
「不可能を可能にする力」
救世忍者 乱丸(女子プロレスラー、第21代TWF世界タッグ王者)
『致知』2011年11月号「致知随想」
※肩書きは『致知』掲載当時のものです
網膜芽細胞腫(もうまくがさいぼうしゅ)という目のがんに罹り、片目を摘出したのは私が3歳の時でした。
母は義眼となった娘の私を抱いたまま心中も考えたようですが、当の私は別段そのことを気に病むこともありませんでした。
小学校4年の時、空手師範だった父の影響で空手を習い始めると、他の道場へも出稽古に行くほどのめり込み国際武道大学に進学して世界大会にも出場を果たしました。
ところが大学3年を迎えたある日、なんとなしに観戦したプロレスに私はすっかり魅了され、プロレスラーになりたいという思いが抑えられなくなってしまったのです。
空手家として将来を期待していた父からは「みっともない。頼むからやめてくれ」と反対されたものの私の決意は変わらず、すぐにオーディションを受けました。
厳しい実技試験を終え、手応えを感じていた私でしたが、審査員の長与千種(ながよちぐさ)さんに声を掛けられました。
「ごめんね、傷つく言い方をするかもしれないけど、その目はどうしたの? 空手をやっていたそうだけど、プロレスはぶつかって初めて成るスポーツだから」
「大丈夫です。私、リングで死んでもいいと思ってますから」
「あなたはそれでいいと思うんだ。でも対戦した相手はどうなるかな」。
優しい言い方で、言われていることは十分分かっていました。私は返す言葉もなく、それでもやりたいと泣き喚くことしかできませんでした。
一体どうすればプロレスラーになれるのだろう。
なんとか別のオーディションを探し出してみたものの、やはり結果は同じ。
いくら頑張っても目が悪いだけで弾かれてしまうのか……。
悶々としていた時、偶然見つけたのがアニマル浜口さんのプロレスラー養成ジムでした。
大学の講義を月火水にまとめて取ると、そのまま浅草のジムへ行って泊まり込みで練習。男子でさえ音を上げてしまう厳しいメニューを同じようにこなすことができたのは、プロレスラーになりたいという情熱以外の何ものでもありませんでした。
一年前とは見違えるような体つきに変化した頃、ある出来事をきっかけに業界全体で門戸を広げることとなり、私もあっさりオーディションに合格することができたのです。
ただ入団はしたものの、満足な仕事もできない私は怒られてばかり。そのうち誰にも話し掛けてもらえなくなり、マスクを外して素顔でリングに上がらされたり、頭を坊主に剃られ、見世物のようにされるなど惨めな思いを味わいました。
もうやめてしまおう。
あれほど憧れていたプロレスに終止符を打ち、家業を手伝っていた私の元へ、ある日1本の電話が掛かってきました。
「あんた、まだプロレスやりたいでしょ。うちでやらない?」。
電話の主は吉本女子プロレスのスター選手だったジャガー横田さん。将来この子が障碍者の方の希望になればという思いがあったそうで、未練のあった私は「お願いします」と返事をし、再デビューを果たすことができたのです。
入団後も先輩方の温かい指導のおかげでTWF世界タッグ王者になり、各方面から試合のオファーもいただくようになりました。
原因不明の血尿が出るようになったのはそんな頃のことです。ある日高熱に見舞われ、病院へ行くと集中治療室に入れさせられ、緊急入院の指示を受けました。
「急速進行性糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)」という腎臓病で、治療は安静が原則。運動は禁止でプロレスなどは論外です。その上厳しい食事制限も課され、こんな状態が一生続くのかと思うと絶望的な気持ちになりました。
そんな時お見舞いに来てくださったのが、ジャガーさんと、ご主人で医師の木下博勝先生でした。
先生は私に病名を尋ねられ、
「なんだ。その病気だったら、時間はかかるかもしれないけど、必ず治るよ。安心したよ」
と言われました。
あれ?
それまで主治医や看護師からは薬の副作用で骨粗鬆症になるなどと説明を受けてきたため、不思議な気もしましたが、それならば頑張ろうと気持ちを入れ直しました。
そして密かにリング復帰の決意をし、歩行訓練から始めて筋トレのメニューを少しずつ増やしていきながら、その日を迎える準備を行いました。
2008年、約2年ぶりとなる復帰戦の舞台を用意してくださったのは、ジャガーさんと先輩のライオネス飛鳥さんでした。
あれほど強く望んでいた復帰戦もいざリングを前にすると、まさか本当にこの日が来るとは、と込み上げてくるものを抑えることができませんでした。
無事試合を終えた夜、私は真っ先にジャガーさんと木下先生にお礼を言いに行きました。
「先生のあの時の言葉が凄く励みになったんです」
「いやぁ、実は病名を聞いた時、復帰できると思ってなかったんだよ。可能性はゼロだと思ってたんだ」
世の中には不可能を可能にする力が存在すると私は思います。
一つには固い決意と粘り強さ。
プロレスラーになれなくて悩んでいた時も、私は必死にもがいて行動し、絶対になるんだとしか考えていなかった。入院生活中に復帰を決意した時もそう。
そして不可能を可能に変えるもう一つの力は、周りにいる人がどんな言葉を与えるかではないでしょうか。
苦しい時を経ていまも憧れのリングに立たせていただいていることの幸せを噛み締めながら、私もいつかジャガーさんや木下先生のように、困っている誰かに手を差し延べることのできる存在になれたらと願っています。
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『致知』最新6月号 特集テーマ「復興への道」
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▼宮城県知事・村井嘉浩氏が語る復興への視点
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▼コミュニケーションデザインで地域を蘇らせる・山崎亮氏
▼被災中小企業の支援に尽力する、ベガルタ仙台社長・白幡洋一氏
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