『三島由紀夫の総合研究』(三島由紀夫研究会 メルマガ会報)
    平成24年(2012)5月14日(月曜日)
        通巻第648号  
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日本軍歌史論(その6)
                 高山一彦(軍歌研究家・会員)
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 昭和維新の時代の象徴的な歌である。いわば日本の革命歌ともいうべき存在である。五・一五事件の指導者であった三上卓がその二年前の昭和五年海軍士官としての任地であった佐世保でつくった歌であり、五・一五事件そして二・二六事件など昭和維新運動にかかわった青年将校などに愛唱された。一般に「昭和維新の歌」として知られる。二・二六事件以降陸海軍ではこの歌を歌うことを禁じたが、それでも半ば公然と歌い継がれ、戦後も現在にいたるまで多くの民族派青年・学生によって歌われている。

 歌詞は主に土井晩翠の「万有と詩人」、「星落秋風五丈原」、「赤壁図に題す」や大川周明の「則天行地歌」などから引用されている。「汨羅の淵」とは屈原が入水した地であり、「巫山の雲」とは男女の交情を意味する。また「離騒」とは屈原の詩である。著作権にやかましい現代から見れば、三上卓の詩にはかなり上記作品からの引用が多く、盗用といわれても仕方ないが、しかしこの「青年日本の歌」が昔も今も多くの人々に愛唱されているのはやはり漢文の持つ力強さと社会変革を志向した青年のロマンチシズムが人の心を打つからであろう。

10.青年日本の歌  (作詞・作曲 三上卓)

 (一番)
  汨羅の淵に波騒ぎ 巫山の雲は乱れ飛ぶ
  混濁の世に我れ立てば 義憤に燃えて血潮湧く
 (二番)
権門上に傲れども 国を憂ふる誠なし
  財閥富を誇れども 社稷を思ふ心なし
 (三番)
ああ人栄え国亡ぶ 盲たる民世に踊る
  治乱興亡夢に似て 世は一局の碁なりけり
 (四番)
昭和維新の春の空 正義に結ぶ丈夫が
  胸裡百万兵足りて 散るや万朶の桜花
 (五番)
古びし死骸乗り越えて 雲漂揺の身は一つ
  国を憂ひて立つからは 丈夫の歌なからめや
 (六番)
  天の怒りか地の声か そもただならぬ響あり
  民永劫の眠りより 醒めよ日本の朝ぼらけ
 (七番)
  見よ九天の雲は垂れ 四海の水は雄叫びて
  革新の機到りぬと 吹くや日本の夕嵐
 (八番)
  ああうらぶれし天地の 迷ひの道を人はゆく
  栄華を誇る塵の世に 誰が高楼の眺めぞや
 (九番)
  功名何ぞ夢の跡 消えざるものはただ誠
  人生意気に感じては 成否を誰かあげつらふ
 (十番)
やめよ離騒の一悲曲 悲歌慷慨の日は去りぬ
  われらが剣今こそは 廓清の血に躍るかな
    
 三上卓は明治三十八年佐賀県に生まれた。佐賀は明治七年江藤新平らによる佐賀の乱が起きた地である。三上卓は佐賀中学校を経て大正十五年海軍兵学校を卒業して海軍士官となった。(海兵五十四期)
「青年日本の歌」は三上が海軍中尉として赴任していた佐世保でつくられた。昭和七年上海事変に三上は陸戦隊参謀として従軍し、五・一五事件直前には重巡洋艦「妙高」の乗組となっている。五・一五事件では首謀者として総理官邸を襲撃し、犬養毅首相を銃撃、暗殺した。事件のとき三上中尉は二十七歳であった。軍法会議では死刑の求刑を受けたが、当時の国民世論は青年将校ら事件の被告たちに対して圧倒的に同情的で、多くの助命・減刑嘆願書が山をなし、結局反乱罪で禁固十五年の判決が下されたが、事件から六年後の昭和十三年には仮釈放で出所した。首謀者殆どが銃殺にされた後の二・二六事件とは対照的である。三上卓はその後近衛新体制の下で翼賛運動の中枢で活躍している。

 戦後三上卓の名前が再び登場したのは昭和三十六年に起きたク-デタ-未遂事件(「三無事件」)であった。三上はその関係者として逮捕されたが、結局不起訴となった。この事件は当時川南工業の社長であった川南豊作を首謀者に陸士五十九期・六十期生などがかかわったとされる。桜井徳太郎元少将や三上卓なども連座して逮捕されたが、首謀者の川南豊作が死亡して事件の真相はいまだ不明である。事件関係者で現在でも活躍しているのは高野山真言宗大僧正の池口恵観師である。当時の池口師は代議士秘書として国会襲撃に加担することになっていたという。現在、池口恵観師は民族派陣営とも交流が深いが、一方で北朝鮮シンパとしても知られている。

三無事件の九年後に三島事件が起き、再び「青年日本の歌」が脚光を浴びることとなった。三島事件が起きたとき三上卓は六十五歳であった。そして翌年の昭和四十六年に六十六歳で他界した。晩年の三上は自らを大夢と号した。これにちなんで毎年五月十五日に事件を記念する「大夢祭」が行われている。

 七十年代の左翼学生運動で盛んに歌われた「インタ-ナショナル」や「ワルシャワ労働歌」などの革命歌が今やすっかり廃れて耳にすることがなくなった一方で、「青年日本の歌」が今も幅広く歌われているのはやはり維新革命が日本における永久革命運動であることをこの歌が象徴しているからではないだろうか。(つづく)

(編集部より)中央公論社から江面弘也の八年がかりの取材を経た労作、『青年日本の歌をうたう者 五一五事件、三上卓海軍中尉の生涯』が出ました。
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 (事務局より)
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(事務局より)下記の会員の皆様、このところ、宅配便も郵便も戻ってきます。新住所をお聞かせいただければ幸いです(敬称略)
 大庭和孝
 金谷幸司 
 高橋和幸
中尾征秀郎
若島和美
    以上
      
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まもなくです
三島研究例会(弊会会員を講師に迎えて行う会員勉強会です)
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日時:  5月25日(金)18:30(開場18:00)
会場:  中野サンプラザ8階研修室6
講師:  田中秀雄(会員、近現代史研究家)
演題:  石原莞爾の最終戦争論、そして支那朝鮮
(昨年9月に行われた満洲事変80周年記念講演の続編に当ります。)
<講師プロフィール>昭和27年、福岡県出身、慶應義塾大学文学部卒業 近現代史研究家、石原莞爾平和思想研究会、台湾研究フォーラム幹事。著書として『石原莞爾と小澤開作 民族協和を求めて』、『石原莞爾の時代 時代精神の体現者たち』(いずれも芙蓉書房出版)など多数。
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  例会、公開講座、勉強会など連続開催のお知らせ
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公開講座 富岡幸一郎氏を招いて
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日時: 6月22日(金)18:30~2030(18:00開場)
会場: アルカディア市ヶ谷(私学会館)4階会議室
講師: 富岡幸一郎(鎌倉文学館館長。文藝評論家)
演題: 三島由紀夫は女系容認論者か?
      ~ その天皇論の意味するもの ~
会場分担金  おひとり2000円(会員千円)

<講師プロフィ-ル>昭和32年生、中央大学文学部卒業、文芸評論家、関東学院大学文学部比較文化学科教授。著書 『仮面の神学三島由紀夫論』(構想社)、『新大東亜戦争肯定論』(飛鳥新社)など多数。 


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三島研例会 金子宗徳氏を招いて
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日時: 7月30日(月)18:30~ (18:00開場)
会場: 中野サンプラザ8階研修室1番
講師: 金子宗徳(思想研究家)
演題: 三島由紀夫と国体論

<講師プロフィ-ル>昭和50年生、京都大学総合人間学部卒、同大学院修士課程修了、同博士課程修了退学、政治学者、里見日本文化学研究所主任研究員、日本国体学会理事(『国体文化』副編集長)など