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■5.「プーチンはマジで世界の支配者たちと戦うつもりだ」

 さらにプーチン政権を驚愕させる行動を、ホドルコフスキーはとった。ユーコスと、米石油大手のシェブロンテキサコ、エクソンモービルとの資本提携を図ったのである。

 米メジャーがロシア最大級の石油会社に、法的拒否権を持つ形で入ってくると、事実上、米国務省、国防総省がユーコスの後ろ盾につくことを意味する。

 プーチンとホドルコフスキーの対立は、あくまでロシアを覇権下に置いておこうとするアメリカと、そこから抜け出そうとするロシアとのつばぜり合いであった。

 2003年10月25日、プーチン政権はホドルコフスキーを脱税などの容疑で逮捕した。北野さんは、これで「プーチンはマジで世界の支配者たちと戦うつもりだ」と悟ったという。[1,p138]

 これを機に、アメリカとロシアは「新冷戦」時代に突入する。新興財閥を屈服させ、ロシア国内の独裁を確立したプーチンは、アメリカの覇権に挑戦状を叩きつけたのである。


■6.反米の砦

 アメリカの逆襲も凄まじい。ソ連から独立したロシア周辺の諸国に次々と民主革命を仕掛け、親米政権を誕生させていく。

 2004年1月、グルジアのバラ革命、同年12月、ウクライナのオレンジ革命、2005年3月、キルギスのチューリップ革命と親米政権が誕生した。

 いずれも、議会選挙でロシア寄りの政権が勝った後で、選挙で不正があったと民衆のデモが発生し、再選挙で親米政権が逆転勝利する、というパターンが繰り返された。陰でアメリカ政府がバックアップするNPOが大量の金をばらまいて、デモを扇動していた。

 しかし、3度も成功すれば、アメリカの手の内は見透かされてしまう。2005年5月、ウズベキスタンで独裁者カリモフ大統領の辞任を求める大規模デモが発生すると、同大統領はこれを武力鎮圧し、アメリカが「ウズベキスタン支援停止」「民主化のための制裁」を唱えて非難しても、耳を貸さなかった。

 さらにウズベキスタン政府は、2005年7月30日、2001年のアフガン攻撃時から駐留していた米軍の180日以内の撤退を、正式に要求した。まさに絶交状である。

 実は、この7月5日、ロシアと中国、ウズベキスタンを含む中央アジア4カ国で構成する上海協力機構(SCO)で、中央アジア駐留米軍の撤退を要求するアスタナ宣言が採択された。ウズベキスタンの強硬な米軍撤退要求は、ロシアと中国の支持を背景にしていた。

 プーチンは、アメリカの覇権に挑戦するために、それまで仮想敵国だった中国との同盟を成し遂げ、上海協力機構を反米の砦にしていたのである。


■7.アメリカのアキレス腱・ドル基軸体制への攻撃

 外交面での反米戦略が上海協力機構だったとすれば、経済面での攻撃が、ドル基軸体制を揺るがすことだった。プーチンは2006年の国会での方針演説の中で、「石油などわれわれの輸出品は、世界市場で取引されており、ルーブルで決済されるべきだ」という爆弾発言をした。

 アメリカの対外債務は2004年当時で2.5兆ドル。世界の貿易はドルで行われているので、アメリカとしてはドル紙幣さえ刷れば、いくらでも輸入ができる。

 しかし欧州諸国がロシアから石油や天然ガスをロシア通貨ルーブルで買わなければならないとすれば、ドルの外貨準備を売って、ルーブルに変えなければならない。各国がそうすれば、ドルは暴落する。ドルの暴落は、ドル売りを呼んで、さらなる暴落をもたらすというドル基軸体制崩壊への循環に入ってしまう。

 上海協力機構の準加盟国として、中ロに守られているイランも、2007年、原油のドル決済を中止した。サウジアラビア、クウェート、アラブ首長国連邦など中東産油大国がつくる湾岸協力会議も、「イランがアメリカから逃げ切ることができれば、自分たちも決済通貨を変えてしまおう」と考えている。

 プーチンは、アメリカのアキレス腱であるドル基軸体制の崩壊への引き金を引いたのである。


■8.プーチン再び、そして我が日本は?

 2007年末、プーチンの大統領2期目が終わった。プーチンの8年間で、アフガン、イラク戦争と中東の不安定化を背景に、原油価格は30ドルから100ドルを超えるまでに上昇。膨大なオイルマネーがロシアにも流れ込み、ロシアのGDPは5倍となり、国民の平均収入も5.4倍に増えた。

 欧米諸国がいくら「プーチンは独裁だ!」と非難しても、ロシア国民のプーチン支持率は70%台を維持していた。

 プーチンは、後継者として子飼いのメドベージェフ第一首相を任命。2008年3月2日の大統領選挙で、メドベージェフは70%以上の票を集めて圧勝した。プーチンは、以後の4年間、首相として働くことになった。

 しかし、今度はメドベージェフが、英米の後援を得て、プーチンから離れようとする。まさに下克上の世界である。その一例が、国連安保理でのリビア攻撃を容認する決議案に/