致知出版社の「人間力メルマガ」

       【2012/5/10】 致知出版社編集部 発行
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 現在発行中の『致知』6月号で、作家の北康利さんが、かつて敗戦により焦土と化した日本を奇跡の復興へと導いた吉田茂について詳しく語ってくださっています。

 本日はその記事の一部をお届けします。

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 「吉田茂の最大の功績」
   北康利(作家)
        
   『致知』2012年6月号
             特集「復興への道」より

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吉田茂の最大の功績は、なんといっても早期講和を実現して日本の独立を取り戻したことであろう。

そして経済復興の道筋をつけ、次代のリーダーを育てたことである。

サンフランシスコ講和条約に際しては、吉田がアメリカとの部分講和を進めようとするのに対し、ソ連や中国も加わった全面講和を主張する者たちから強い反対にあった。

しかし米ソ冷戦が始まったばかりの当時、ソ連と中国にアメリカと同じ方向を向かせて講和に参加させることは至難の業であった。


先ほども述べたように吉田は、講和を早期締結し、国民に独立心を植え付けなければと考えていた。実際、マッカーサーがアメリカに帰る時、人々は自分たちを占領した国の総司令官に対して沿道から旗を振り、「ありがごうございました」と口々に叫んで見送った。

吉田はそうした日本人の国民性を冷静に見据え、占領を長引かせてはいけないと強く思っていたのである。ゆえに時間のかかる全面講和ではなく、部分講和を通じての早期独立の道を目指したわけである。


軍備にしても同様である。

再軍備を遅らせる結果を招いた軽武装、経済優先の復興路線、いわゆる吉田ドクトリンの功罪がしばしば論議されるが、軍隊のない国家などあり得ないことを吉田は百も承知であった。

しかし百万人単位で餓死者が出るほどの窮状の中で、まずは経済を優先すべきだとの彼の決断があったからこそ、日本は早期復興を果たせたのである。

それができたのは、アメリカからの執拗な軍備増強の要求を、新憲法の9条を盾に懸命にかわしたからである。

新憲法はきわめて屈辱的な押しつけ憲法であった。しかし吉田には転んでもただでは起きない粘り強さがあった。

制定に当たって日本側の要求がことごとく却下される中、ともかくも国の拠り所である天皇制を死守した。

さらに、米ソ冷戦の始まりでアメリカが手のひらを返したように日本に軍備増強を迫るのに対して、不本意な憲法を逆手にとって拒否したのである。

リアリストの彼は、困難な目標に対しては一直線に向かっていくのではなく、いったん横に進んでも最終的に必ず成し遂げようとした。

その間も目標を見失うことなく、軸をブラさない。ビジョンを明確に示していたため、国民も彼が何をなそうとしているのかがよく理解できていた。

このように懸命に国を守ってきた吉田の思いを、我われ日本国民は十分に汲み取っているだろうか。

彼がサンフランシスコ講和条約にサインをした1951年9月8日、あるいは条約が発効した翌年の4月28日は日本にとって実に重要な意味を持つ。

にもかかわらず、祝日にしてそれを顕彰しようという動きはなかった。

当然いまの国民にも、その両日についての認識がほとんどないことには忸怩(じくじ)たるものがある。


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