「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成24(2012)年5月9日(水曜日)
通巻第3642号
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訪米した中国軍人は「陸海空の将軍団」
パネッタ国防長官と梁光烈国防部長が会見、「軍事交流は有意義」
****************************************
米国を訪問した梁光烈・国防部長はパネッタ長官と会見し、共同記者会見では「両国の軍トップによる軍事交流は有意義である」という点で意見が一致したが、ハッカー攻撃など対立が浮き彫りとなった。
梁光烈に同行した中国の「将軍団」は陸海空のトップばかりで構成されていたことがわかった。
張又侠は瀋陽軍管区司令員。陝西省生まれで父親も軍人、中越戦争に参戦経験がある。七つの軍管区司令員(司令員は軍管区のトップ)のなかで、張はただひとりの実戦経験組。62歳。
蘇土亮は海軍副司令員(海軍中将)。山東省出身で海軍指揮学院校長をつとめ、海軍全般に通暁するほか、北海艦隊、南海艦隊司令員を経験、09年から10年まで海軍参謀長。
楊国海は空軍参謀長、天津生まれ。空軍師団長、上海空軍司令員、蘭州軍管区空軍参謀長を歴任した。
高津は第二砲兵参謀長でミサイル専門、陸軍少将、江蘇省出身で技術系の秀才。新型ミサイル開発などに貢献し、ミサイル戦略の理論などを執筆した理論家としても知られる。
膨勇は新彊軍管区司令員。新彊ウィグル自治区の党委員会常任委員兼任。
現在、中国はフィリピンとの領海紛争が一触即発の状況にあり、かつ薄煕来失脚以来の軍の動揺が拡がるという状況の最中、これだけの将軍一行が訪米したという意味は、軍の団結を内外に誇示する狙いが含まれているように見受けられる。
△△
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◆BOOKREVIEW ◆書評 ◇しょひょう ◇ブックレビュー ★
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西尾幹二全集第二巻 『悲劇人の姿勢』(国書刊行会)
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この巻では「悲劇人の姿勢」というカテゴリーのなかに小林秀雄、ニーチェ、福田恒存、そして三島由紀夫が論じられている。
引き続き小林、福田が続編で論じられ、さらに別立ての章には福田恒存論として哲学・思想が語られる。個人的印象をいうと、本巻冒頭の写真は福田さん主催の「蔦の会」に、西尾さんも加わっての、若き日の談笑のスナップがおさめられていて、あの時代の知的環境、風俗的な思想集団、あの熱血の論争などを一気に思い起こさせてくれる。
まだ続きがある。
第五部は「三島由紀夫論」としての「三島の死とわたし」(これはPHPから単行本ででた)、そして第六部は「憂国忌」が集中的に語られる。とりわけ「憂国忌」の文壇史における役割、その思想的バックグランドの変遷を簡潔に考察した論考である。
この巻は西尾全集の中で特に重要な作品が収録されているため、時間をかけて読みたいと考えながら、評者は旅行がつづき、現時点では下記の告示をかねて、全集の紹介に留めたい。
************
西尾幹二講演会のお知らせ
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この全集刊行とあわせて三回目の西尾幹二講演会が開催されます
演題は「真贋ということ 小林秀雄、福田恒在、三島由紀夫をめぐって」
記
とき 5月26日(土曜日) 午後六時半(六時開場)
ところ 永田町 「星陵会館」ホール
http://www.seiryokai.org/kaikan.html
入場料 おひとり 1000円
特記 駐車場がありませんので、地下鉄などでお越し下さい
終了後、サイン会、名刺交換会があります
問い合わせ 国書刊行会(03-5970-7421)
△□ ○ ◇☆ △□ ○ ◇☆
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樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム 樋泉克夫のコラム
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樋泉克夫のコラム
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【知道中国 748回】
――読まないなら運転するな
『送法下郷之道路交通事故』(周紅格・劉顕剛 中国法政大学出版社 2010年)
△
これも雲南省とミャンマーと国境を接する国境の?町の新華書店支店で購入。前回紹介の『中華人民共和国婚姻法』と同じく店の入り口に積まれ、表紙は砂埃でザラついてはいなかった。店員に聞くと、親指を立てて「売得不錯(売れ筋だよ)」。
モータリゼーションの波は農村にも押し寄せ、多くの車が行き交い、勢い事故は多発する。ところが車の買い方と動かし方は知っていても、事故処理の方法は判らない。なにしろオレ様意識が超過剰な方々のことだから、いったん事故が起こったら蜂の巣をつついたように騒ぎはするが、具体的にどう処理すべきか。なんとも要領をえない。そこで法律を農村に下し、交通事故の処理方法を具体的に示そうというのが、この本の趣旨である。
下郷の2文字から思い起こされるのは、都市の若者を知識青年と煽てあげ農民に学べと農山村に送り出した文革当時の上山下郷運動だが、文革から半世紀ほどが過ぎた現在では、農山村に送り出されるのは法律、それも道路交通安全法だった。確かに社会は激変した。
「新世紀農村普法読本」の副題を持つこの本は事例を示しながら、「一、事故が発生したらどのように処理するのか(4例)」「二、事故が発生したら誰が処理するのか(5例)」「三、事故が発生したら誰が保障するのか(26例)」「四、事故後の賠償(9例)」「五、故意により発生した事故の実刑の可能性(8例)」を判り易く説明している。どの事例も面白いが、たまたま目に付いた「夫が事故を起こし、妻が死亡した場合の補償」の項目を見ておく。
昨(2009)年10月、朱天鵬さんは作業車に妻を同乗させ帰宅を急いでいた際、前方から猛スピードで向かってきたバイクを避けようとしたが、余りにも慌てていたため、ハンドル操作を誤り路肩から車を転倒させてしまい、重傷を負っただけでなく、最愛の妻は車の下敷き。妻を死亡させてしまった心の痛みに自らの怪我が加わり、病院のベッドの上で我が身を苛む日々の朱さんに追い討ちをかけたのが、義理の両親による損害賠償訴訟だった。
老後を一人娘夫婦に養って貰おうと思っていた義理の両親は朱さんに損害賠償を求めた。娘を失っただけでなく、事故の傷が癒えた後に娘婿が再婚でもしたら他人になってしまう。自分たちの老後が不安だというのだ。訴状を受け取った朱さんは心を痛めているのは自分だ。「義理の両親の面倒はどこまでもみる。だが私に損害を賠償させようなどと断じて理解できない。訴訟は受け付けられないし、断固として同意できない」。
だが裁判が行われ、執行2年延期という条件が付いたが、1年半の実刑に加え1万元余の賠償が命じられた。
この実例に、朱さんの主張は尤ものようだが、?妻が死亡した以上、法的には婚姻関係は解消され、夫婦の財産は分割される。?妻が亡くなった以上、朱さんには元妻の両親を扶養する義務はない。?賠償金は死者の近親が被った精神的・経済的被害に対するものであり、死者の両親による賠償要求は当然であると、道路交通安全法(第74条)、侵権責任法(16条)、最高人民法院判例などを引用しながら詳しく解説している。
農村地帯を歩くと到るところで道路建設が進み、車も激増し、車なしの生活は考えられない新世紀の到来を、確かに実感する。ならば農村もまた法律に依拠した法治意識の普及が必要であり、であればこその「農村普法読本」「送法下郷」だろう。だが農村もさることながら「普法」が急務なのは北京の最上層だろう。
先ず隗より始め・・・ませんよネ。《QED》
平成24(2012)年5月9日(水曜日)
通巻第3642号
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訪米した中国軍人は「陸海空の将軍団」
パネッタ国防長官と梁光烈国防部長が会見、「軍事交流は有意義」
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米国を訪問した梁光烈・国防部長はパネッタ長官と会見し、共同記者会見では「両国の軍トップによる軍事交流は有意義である」という点で意見が一致したが、ハッカー攻撃など対立が浮き彫りとなった。
梁光烈に同行した中国の「将軍団」は陸海空のトップばかりで構成されていたことがわかった。
張又侠は瀋陽軍管区司令員。陝西省生まれで父親も軍人、中越戦争に参戦経験がある。七つの軍管区司令員(司令員は軍管区のトップ)のなかで、張はただひとりの実戦経験組。62歳。
蘇土亮は海軍副司令員(海軍中将)。山東省出身で海軍指揮学院校長をつとめ、海軍全般に通暁するほか、北海艦隊、南海艦隊司令員を経験、09年から10年まで海軍参謀長。
楊国海は空軍参謀長、天津生まれ。空軍師団長、上海空軍司令員、蘭州軍管区空軍参謀長を歴任した。
高津は第二砲兵参謀長でミサイル専門、陸軍少将、江蘇省出身で技術系の秀才。新型ミサイル開発などに貢献し、ミサイル戦略の理論などを執筆した理論家としても知られる。
膨勇は新彊軍管区司令員。新彊ウィグル自治区の党委員会常任委員兼任。
現在、中国はフィリピンとの領海紛争が一触即発の状況にあり、かつ薄煕来失脚以来の軍の動揺が拡がるという状況の最中、これだけの将軍一行が訪米したという意味は、軍の団結を内外に誇示する狙いが含まれているように見受けられる。
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◆BOOKREVIEW ◆書評 ◇しょひょう ◇ブックレビュー ★
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西尾幹二全集第二巻 『悲劇人の姿勢』(国書刊行会)
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この巻では「悲劇人の姿勢」というカテゴリーのなかに小林秀雄、ニーチェ、福田恒存、そして三島由紀夫が論じられている。
引き続き小林、福田が続編で論じられ、さらに別立ての章には福田恒存論として哲学・思想が語られる。個人的印象をいうと、本巻冒頭の写真は福田さん主催の「蔦の会」に、西尾さんも加わっての、若き日の談笑のスナップがおさめられていて、あの時代の知的環境、風俗的な思想集団、あの熱血の論争などを一気に思い起こさせてくれる。
まだ続きがある。
第五部は「三島由紀夫論」としての「三島の死とわたし」(これはPHPから単行本ででた)、そして第六部は「憂国忌」が集中的に語られる。とりわけ「憂国忌」の文壇史における役割、その思想的バックグランドの変遷を簡潔に考察した論考である。
この巻は西尾全集の中で特に重要な作品が収録されているため、時間をかけて読みたいと考えながら、評者は旅行がつづき、現時点では下記の告示をかねて、全集の紹介に留めたい。
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西尾幹二講演会のお知らせ
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この全集刊行とあわせて三回目の西尾幹二講演会が開催されます
演題は「真贋ということ 小林秀雄、福田恒在、三島由紀夫をめぐって」
記
とき 5月26日(土曜日) 午後六時半(六時開場)
ところ 永田町 「星陵会館」ホール
http://www.seiryokai.org/kaikan.html
入場料 おひとり 1000円
特記 駐車場がありませんので、地下鉄などでお越し下さい
終了後、サイン会、名刺交換会があります
問い合わせ 国書刊行会(03-5970-7421)
△□ ○ ◇☆ △□ ○ ◇☆
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――読まないなら運転するな
『送法下郷之道路交通事故』(周紅格・劉顕剛 中国法政大学出版社 2010年)
△
これも雲南省とミャンマーと国境を接する国境の?町の新華書店支店で購入。前回紹介の『中華人民共和国婚姻法』と同じく店の入り口に積まれ、表紙は砂埃でザラついてはいなかった。店員に聞くと、親指を立てて「売得不錯(売れ筋だよ)」。
モータリゼーションの波は農村にも押し寄せ、多くの車が行き交い、勢い事故は多発する。ところが車の買い方と動かし方は知っていても、事故処理の方法は判らない。なにしろオレ様意識が超過剰な方々のことだから、いったん事故が起こったら蜂の巣をつついたように騒ぎはするが、具体的にどう処理すべきか。なんとも要領をえない。そこで法律を農村に下し、交通事故の処理方法を具体的に示そうというのが、この本の趣旨である。
下郷の2文字から思い起こされるのは、都市の若者を知識青年と煽てあげ農民に学べと農山村に送り出した文革当時の上山下郷運動だが、文革から半世紀ほどが過ぎた現在では、農山村に送り出されるのは法律、それも道路交通安全法だった。確かに社会は激変した。
「新世紀農村普法読本」の副題を持つこの本は事例を示しながら、「一、事故が発生したらどのように処理するのか(4例)」「二、事故が発生したら誰が処理するのか(5例)」「三、事故が発生したら誰が保障するのか(26例)」「四、事故後の賠償(9例)」「五、故意により発生した事故の実刑の可能性(8例)」を判り易く説明している。どの事例も面白いが、たまたま目に付いた「夫が事故を起こし、妻が死亡した場合の補償」の項目を見ておく。
昨(2009)年10月、朱天鵬さんは作業車に妻を同乗させ帰宅を急いでいた際、前方から猛スピードで向かってきたバイクを避けようとしたが、余りにも慌てていたため、ハンドル操作を誤り路肩から車を転倒させてしまい、重傷を負っただけでなく、最愛の妻は車の下敷き。妻を死亡させてしまった心の痛みに自らの怪我が加わり、病院のベッドの上で我が身を苛む日々の朱さんに追い討ちをかけたのが、義理の両親による損害賠償訴訟だった。
老後を一人娘夫婦に養って貰おうと思っていた義理の両親は朱さんに損害賠償を求めた。娘を失っただけでなく、事故の傷が癒えた後に娘婿が再婚でもしたら他人になってしまう。自分たちの老後が不安だというのだ。訴状を受け取った朱さんは心を痛めているのは自分だ。「義理の両親の面倒はどこまでもみる。だが私に損害を賠償させようなどと断じて理解できない。訴訟は受け付けられないし、断固として同意できない」。
だが裁判が行われ、執行2年延期という条件が付いたが、1年半の実刑に加え1万元余の賠償が命じられた。
この実例に、朱さんの主張は尤ものようだが、?妻が死亡した以上、法的には婚姻関係は解消され、夫婦の財産は分割される。?妻が亡くなった以上、朱さんには元妻の両親を扶養する義務はない。?賠償金は死者の近親が被った精神的・経済的被害に対するものであり、死者の両親による賠償要求は当然であると、道路交通安全法(第74条)、侵権責任法(16条)、最高人民法院判例などを引用しながら詳しく解説している。
農村地帯を歩くと到るところで道路建設が進み、車も激増し、車なしの生活は考えられない新世紀の到来を、確かに実感する。ならば農村もまた法律に依拠した法治意識の普及が必要であり、であればこその「農村普法読本」「送法下郷」だろう。だが農村もさることながら「普法」が急務なのは北京の最上層だろう。
先ず隗より始め・・・ませんよネ。《QED》