『三島由紀夫の総合研究』(三島由紀夫研究会 メルマガ会報)
平成24年(2012)5月7日(月曜日)
通巻第644号
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日本軍歌史論(その5)
高山一彦(軍歌研究家・会員)
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明治から大正に時代がうつると、世相もぐっとかわってくる。大正時代日本がかかわった戦争といえば第一次世界大戦とその後のシベリア出兵であるが、あくまで日英同盟や当時の連合国との関係での参戦、出兵であり、日清・日露両戦争のような国運を賭した国民的戦争とは程遠かった。
したがって大正期における軍歌は少ないが、その中で秀逸な曲が以下に紹介する海軍兵学校と陸軍士官学校の校歌である。ともに今に至るも歌い継がれている。やはり音楽的にもすぐれているからであろう。
8.江田島健児の歌 (作詞・神代猛男、作曲・佐藤清吉)
(一番)
澎湃寄する海原の 大濤(オオナミ)くだけ散るところ
常盤の松の翠濃き 秀麗の国秋津洲(アキツシマ)
有史悠々数千載 皇謨(コウボ)あおげばいや高し
(二番)
玲瓏そびゆる東海の 芙蓉の峰を仰ぎては
神州男児の熱血に わが胸更に躍るかな
ああ光栄の国柱 護らで止まじ身を捨てて
(三番)
古鷹山下水清く 松籟の音冴ゆるとき
明け離れゆく能美島の 影紫にかすむとき
進取尚武の旗あげて 送り迎えん四つの年
(四~六番は省略)
一般に海軍兵学校(海兵)校歌として知られるこの曲は、実は正式の校歌ではない。大正八年海軍兵学校創立五十周年を記念して校歌がつくられることとなり、募集の結果海兵五十期の神代猛男作詞の「江田島健児の歌」が当選した。作曲は佐藤清吉軍楽少尉であった。しかし何故かこの歌は品格にかけるという理由で正式の校歌としては扱われなかった。
結局正式な校歌のない海軍兵学校においては終戦まで在校生や卒業生によって校歌代わりとして歌い継がれることになった。他方同じ海軍でも海軍機関学校や海軍経理学校にはそれぞれ正式な校歌が制定されている。
余談であるが、戦後つくられた大映映画『海軍兵学校物語 あゝ江田島』(昭和34年、小林勝彦、本郷功次郎主演)において歌われた「あゝ江田島」という主題歌があった。歌ったのは「喜びと悲しみも幾年月」の若山彰である。「あゝ江田島」の一番の歌詞は次の通りである。
(一番)
瀬戸の小島に 羽ばたく児らが
今宵かぎりの 命をのせて
波のまにまに 友綱とけば
わかれ惜しむか しぐれ雨
戦後つくられたいわゆる戦後派軍歌としては回天特攻隊の遺族会がつくった「あゝ回天」や鶴田浩二が歌った「戦友(とも)よ安らかに」などとともに名作というべきであろう。
9.陸軍士官学校校歌(作詞・寺西多美彌、作曲・陸軍戸山学校軍楽隊)
(一番)
太平洋の波の上 昇る朝日に照り映えて
天聳(あまそそ)り立つ富士ケ峰の 永久(とわ)に揺がぬ大八洲(おおやしま)
君の御楯と選ばれて 集まり学ぶ身の幸よ
(二番)
誉も高き楠の 深き薫りを慕ひつつ
鋭心(とごころ)磨くわれらには 見るも勇まし春毎に
赤き心に咲き出づる 市ヶ谷台の若桜
(三番)
隙ゆく駒のたゆみなく 文武の道に勤しめば
土さえ劈くる(さくる)夏の日も 手握る筆に花開き
星欄干の霜の晨(あさ) 揮う剣に龍踊る
(四番~七番略)
(八番)
嗚呼山行かば草蒸すも 嗚呼海行かば水漬くとも
など顧みんこの屍 われらを股肱と宣ひて
慈(いつくし)みます大君の 深き仁慈(めぐみ)を仰ぎては
この校歌の前に大正十年につくられたものがあったが、どういうわけか大正十二年にこの校歌に改正された。校歌の二番の歌詞で分かるように、当時の陸軍士官学校(陸士)は現在の防衛省がある市ヶ谷台に位置していた。のちに戦時なるとに陸軍省や参謀本部などが市ヶ谷台に移転し、陸軍士官学校は相武台(神奈川県の座間)に移った。それに伴い、歌詞の一部が変更されて歌われた。たとえば「市ヶ谷台」が「相模原」、「戸山代々木」が「富士の裾野」という具合である。また振武台(埼玉県朝霞)に移った陸士予科の校歌もやはり「市ヶ谷台」が「振武の台」、「戸山代々木」が「大武蔵野」などに替えられて歌われた。尚陸士にはこの他に各期ごとにつくられた歌がある。面白いのは陸士最後の期である61期(入校約5千名)もやはり戦後になって「陸士最後の兵(つわもの)第六十一期生」という同期歌をつくっていることである。その最後の四番の歌詞を紹介する。
戦やぶれて山河あり 剣を折りて幾星霜
血潮は今も炎ゆるなり 社稷の付託重ければ
六十一期おおわれら 国の栄に生きんかな
軍人になる夢を絶たれ、戦後社会に生きた若者たちの思いがよく伝わってくる。
(つづく)
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宝塚で『春の雪』
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◆宝塚バウホール:2012年10月11日(木)~10月22日(月)
◆一般前売:2012年9月8日(土)
◆座席料金:全席6,000円(税込)
◆
◆東京特別(日本青年館):2012年10月31日(水)~11月5日(月)
◆一般前売:2012年9月30日(日)
◆座席料金:S席7,500円、A席5,000円(税込)
バウ・ミュージカル
『春の雪』 三島由紀夫 著 「春の雪」(豊饒の海 第一巻)より
脚本・演出/生田大和
三島由紀夫最後にして最大の長編小説「豊饒の海」四部作の第一巻「春の雪」。侯爵家の若き嫡子・松枝清顕と、幼馴染である伯爵家の美貌の令嬢・綾倉聡子との禁断の恋を通して、優雅を規範とする矜り高い青年が、その胸の内にどこまでも美化された理想と、己の力及ばぬ現実との狭間で揺れた末、求め続けた真実の愛を見出していく姿を描いたミュージカル作品。
主演は現在の月組二番手男役 明日海りおさんとなります
※公演詳細URL
http://kageki.hankyu.co.jp/news/detail/7c43d8ce6bdf9fc98c7ed96a7e8e8d99.html
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例会、公開講座、勉強会など連続開催のお知らせ
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三島研究例会(弊会会員を講師に迎えて行う会員勉強会です)
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日時: 5月25日(金)18:30(開場18:00)
会場: 中野サンプラザ8階研修室6
講師: 田中秀雄(会員、近現代史研究家)
演題: 石原莞爾の最終戦争論、そして支那朝鮮
(昨年9月に行われた満洲事変80周年記念講演の続編に当ります。)
<講師プロフィール>昭和27年、福岡県出身、慶應義塾大学文学部卒業 近現代史研究家、石原莞爾平和思想研究会、台湾研究フォーラム幹事。著書として『石原莞爾と小澤開作 民族協和を求めて』、『石原莞爾の時代 時代精神の体現者たち』(いずれも芙蓉書房出版)など多数。
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公開講座 富岡幸一郎氏を招いて
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日時: 6月22日(金)18:30~2030(18:00開場)
会場: アルカディア市ヶ谷(私学会館)4階会議室
講師: 富岡幸一郎(鎌倉文学館館長。文藝評論家)
演題: 三島由紀夫は女系容認論者か?
~ その天皇論の意味するもの ~
会場分担金 おひとり2000円(会員千円)
<講師プロフィ-ル>昭和32年生、中央大学文学部卒業、文芸評論家、関東学院大学文学部比較文化学科教授。著書 『仮面の神学三島由紀夫論』(構想社)、『新大東亜戦争肯定論』(飛鳥新社)など多数。
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平成24年(2012)5月7日(月曜日)
通巻第644号
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日本軍歌史論(その5)
高山一彦(軍歌研究家・会員)
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明治から大正に時代がうつると、世相もぐっとかわってくる。大正時代日本がかかわった戦争といえば第一次世界大戦とその後のシベリア出兵であるが、あくまで日英同盟や当時の連合国との関係での参戦、出兵であり、日清・日露両戦争のような国運を賭した国民的戦争とは程遠かった。
したがって大正期における軍歌は少ないが、その中で秀逸な曲が以下に紹介する海軍兵学校と陸軍士官学校の校歌である。ともに今に至るも歌い継がれている。やはり音楽的にもすぐれているからであろう。
8.江田島健児の歌 (作詞・神代猛男、作曲・佐藤清吉)
(一番)
澎湃寄する海原の 大濤(オオナミ)くだけ散るところ
常盤の松の翠濃き 秀麗の国秋津洲(アキツシマ)
有史悠々数千載 皇謨(コウボ)あおげばいや高し
(二番)
玲瓏そびゆる東海の 芙蓉の峰を仰ぎては
神州男児の熱血に わが胸更に躍るかな
ああ光栄の国柱 護らで止まじ身を捨てて
(三番)
古鷹山下水清く 松籟の音冴ゆるとき
明け離れゆく能美島の 影紫にかすむとき
進取尚武の旗あげて 送り迎えん四つの年
(四~六番は省略)
一般に海軍兵学校(海兵)校歌として知られるこの曲は、実は正式の校歌ではない。大正八年海軍兵学校創立五十周年を記念して校歌がつくられることとなり、募集の結果海兵五十期の神代猛男作詞の「江田島健児の歌」が当選した。作曲は佐藤清吉軍楽少尉であった。しかし何故かこの歌は品格にかけるという理由で正式の校歌としては扱われなかった。
結局正式な校歌のない海軍兵学校においては終戦まで在校生や卒業生によって校歌代わりとして歌い継がれることになった。他方同じ海軍でも海軍機関学校や海軍経理学校にはそれぞれ正式な校歌が制定されている。
余談であるが、戦後つくられた大映映画『海軍兵学校物語 あゝ江田島』(昭和34年、小林勝彦、本郷功次郎主演)において歌われた「あゝ江田島」という主題歌があった。歌ったのは「喜びと悲しみも幾年月」の若山彰である。「あゝ江田島」の一番の歌詞は次の通りである。
(一番)
瀬戸の小島に 羽ばたく児らが
今宵かぎりの 命をのせて
波のまにまに 友綱とけば
わかれ惜しむか しぐれ雨
戦後つくられたいわゆる戦後派軍歌としては回天特攻隊の遺族会がつくった「あゝ回天」や鶴田浩二が歌った「戦友(とも)よ安らかに」などとともに名作というべきであろう。
9.陸軍士官学校校歌(作詞・寺西多美彌、作曲・陸軍戸山学校軍楽隊)
(一番)
太平洋の波の上 昇る朝日に照り映えて
天聳(あまそそ)り立つ富士ケ峰の 永久(とわ)に揺がぬ大八洲(おおやしま)
君の御楯と選ばれて 集まり学ぶ身の幸よ
(二番)
誉も高き楠の 深き薫りを慕ひつつ
鋭心(とごころ)磨くわれらには 見るも勇まし春毎に
赤き心に咲き出づる 市ヶ谷台の若桜
(三番)
隙ゆく駒のたゆみなく 文武の道に勤しめば
土さえ劈くる(さくる)夏の日も 手握る筆に花開き
星欄干の霜の晨(あさ) 揮う剣に龍踊る
(四番~七番略)
(八番)
嗚呼山行かば草蒸すも 嗚呼海行かば水漬くとも
など顧みんこの屍 われらを股肱と宣ひて
慈(いつくし)みます大君の 深き仁慈(めぐみ)を仰ぎては
この校歌の前に大正十年につくられたものがあったが、どういうわけか大正十二年にこの校歌に改正された。校歌の二番の歌詞で分かるように、当時の陸軍士官学校(陸士)は現在の防衛省がある市ヶ谷台に位置していた。のちに戦時なるとに陸軍省や参謀本部などが市ヶ谷台に移転し、陸軍士官学校は相武台(神奈川県の座間)に移った。それに伴い、歌詞の一部が変更されて歌われた。たとえば「市ヶ谷台」が「相模原」、「戸山代々木」が「富士の裾野」という具合である。また振武台(埼玉県朝霞)に移った陸士予科の校歌もやはり「市ヶ谷台」が「振武の台」、「戸山代々木」が「大武蔵野」などに替えられて歌われた。尚陸士にはこの他に各期ごとにつくられた歌がある。面白いのは陸士最後の期である61期(入校約5千名)もやはり戦後になって「陸士最後の兵(つわもの)第六十一期生」という同期歌をつくっていることである。その最後の四番の歌詞を紹介する。
戦やぶれて山河あり 剣を折りて幾星霜
血潮は今も炎ゆるなり 社稷の付託重ければ
六十一期おおわれら 国の栄に生きんかな
軍人になる夢を絶たれ、戦後社会に生きた若者たちの思いがよく伝わってくる。
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宝塚で『春の雪』
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◆宝塚バウホール:2012年10月11日(木)~10月22日(月)
◆一般前売:2012年9月8日(土)
◆座席料金:全席6,000円(税込)
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◆東京特別(日本青年館):2012年10月31日(水)~11月5日(月)
◆一般前売:2012年9月30日(日)
◆座席料金:S席7,500円、A席5,000円(税込)
バウ・ミュージカル
『春の雪』 三島由紀夫 著 「春の雪」(豊饒の海 第一巻)より
脚本・演出/生田大和
三島由紀夫最後にして最大の長編小説「豊饒の海」四部作の第一巻「春の雪」。侯爵家の若き嫡子・松枝清顕と、幼馴染である伯爵家の美貌の令嬢・綾倉聡子との禁断の恋を通して、優雅を規範とする矜り高い青年が、その胸の内にどこまでも美化された理想と、己の力及ばぬ現実との狭間で揺れた末、求め続けた真実の愛を見出していく姿を描いたミュージカル作品。
主演は現在の月組二番手男役 明日海りおさんとなります
※公演詳細URL
http://kageki.hankyu.co.jp/news/detail/7c43d8ce6bdf9fc98c7ed96a7e8e8d99.html
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例会、公開講座、勉強会など連続開催のお知らせ
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三島研究例会(弊会会員を講師に迎えて行う会員勉強会です)
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日時: 5月25日(金)18:30(開場18:00)
会場: 中野サンプラザ8階研修室6
講師: 田中秀雄(会員、近現代史研究家)
演題: 石原莞爾の最終戦争論、そして支那朝鮮
(昨年9月に行われた満洲事変80周年記念講演の続編に当ります。)
<講師プロフィール>昭和27年、福岡県出身、慶應義塾大学文学部卒業 近現代史研究家、石原莞爾平和思想研究会、台湾研究フォーラム幹事。著書として『石原莞爾と小澤開作 民族協和を求めて』、『石原莞爾の時代 時代精神の体現者たち』(いずれも芙蓉書房出版)など多数。
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公開講座 富岡幸一郎氏を招いて
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日時: 6月22日(金)18:30~2030(18:00開場)
会場: アルカディア市ヶ谷(私学会館)4階会議室
講師: 富岡幸一郎(鎌倉文学館館長。文藝評論家)
演題: 三島由紀夫は女系容認論者か?
~ その天皇論の意味するもの ~
会場分担金 おひとり2000円(会員千円)
<講師プロフィ-ル>昭和32年生、中央大学文学部卒業、文芸評論家、関東学院大学文学部比較文化学科教授。著書 『仮面の神学三島由紀夫論』(構想社)、『新大東亜戦争肯定論』(飛鳥新社)など多数。
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