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◆ 2011年1月18日 第1269号「 シシュポスの神話 」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
★きょうは、ギリシャ神話に出てくるシシュポスという男の話です。
この世界は矛盾だらけに作られている。そうである以上、人間のやるこ
となんか、どれが善でどれが悪かわからない。どの道シシュポスが岩を
山へ運ぶのと同様に意味のないことだ。ただ、その努力そのものの中に
人間の価値がある。( 阿刀田高さん )
【世界の名言】
立派に仕事を為した報酬はすでにそれを達成したことにある
( エマソン )
The reward of a thing well done is to have done it.
( Ralph Waldo Emerson, American philosopher, 1803-1882 )
●ギリシャ神話のなかでシシュポスは、天上の神ゼウスから罰をうけ、
死後、終りのない苦役を与えられます。
『ギリシャ神話を知っていますか』http://tinyurl.com/73oqne3
【 阿刀田高、新潮社 (1984/02)、p116 】
地獄の一番深いところは、これもすでに述べた通りタルタロスとい
う地獄で、ここには主として神々を冒涜(ぼうとく)した重罪人が幽
閉されていた。
シシュポスはゼウスの秘事をあばいたという、あまり明確ではない
理由によってここに送られたのであったが、その刑罰は山に大きな
岩石を押しあげ、届くとその石は転げ落ち、またそれを押し上げな
ければいけない。永遠にこの無償の努力を繰り返すのが彼の受けた
罰であった。
フランスの作家アルベール・カミュがこの逸話をもとにして哲学的
エッセイ“シシュポスの神話”を書いたのは、ご存知のかたも多い
だろう。
●カミュの『シシュポスの神話』については多くの作家がとりあげ、そ
の哲学的意味を解説しようとしています。阿刀田高さんは、そこに人間
の尊厳さを見るといいます。
【 同 】
カミュの哲学を簡単に要約するのはむつかしいが、あえてそれをお
こなうならば、カミュは従来の神話では無償の労苦と考えられてい
たシシュポスの行為を肯定的なものとして捉(とら)え、
“人間のおこないはこれも突きつめて考えればシシュポスの行為同
様に無償のものではないか。その無償性に向って無償と知りつつ努
力を続けることが人間の尊厳さを保つことだ”
と、解明したわけである。
平たく言えば、この世界は矛盾だらけに作られている。そうである
以上、人間のやることなんか、どれが善でどれが悪かわからない。
どの道シシュポスが岩を山へ運ぶのと同様に意味のないことだ。た
だ、その努力そのものの中に人間の価値がある、と、まあ、こう言
いきっても当らずとも遠くはあるまい。
●茂木健一郎さんは、そこに無限の自由を見ています。
『思考の補助線』http://tinyurl.com/77tmkno
【 茂木健一郎、筑摩書房 (2008/02)、p223 】
アルベール・カミュの『シーシュポスの神話』で考察したのは、神
によって罰を受け、岩を押して坂道を上ることを永遠にくり返す運
命に落とされた男の物語である。男は、その宿命から逃れることが
できない。死ぬこともできない。永遠にそのような意識の流れの中
に閉じこめられてしまっている。しかし、そのような定めから離れ
て彼の生命はなく、それこそがまさに自身の自己同一性の証しであ
るということに思い至ったとき、男は無限の自由を感じるとカミュ
は書く。
●五木寛之さんは、無益な仕事に無言でとり組むシシュポスに感動を覚
えた、と書いています。
『養生の実技』http://tinyurl.com/6pgonqo
【 五木寛之、角川書店 (2004/12/17)、p204 】
私たちの学生時代、サルトルとならんで愛読されたのはカミュの作
品だった。そのひとつに『シジフォスの神話』というのがあった。
ギリシャ神話にでてくるシジフォス(シーシュポス)という男の物語
である。
(中略)
シジフォスは与(あた)えられた運命を呪ったり、歎(なげ)いたりは
しない。ただ黙々とその運命に向きあおうとするのである。
私たちはその姿に、なぜか感動をおぼえずにはいられない。無益と
わかっている仕事に無言でとり組むシジフォスを、愚か者として笑
う人がいるだろうか。
●無償性に向って努力を重ねるシシュポスは、いまでも多くの人々に感
動を与えつづけています。
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