しかしながら、ロシア国内の各種世論調査によれば、下院選前からすでに統一ロシアへの支持率は低迷傾向を続け、プーチン本人の支持率もまた下降気味であった。11月27日にモスクワで開かれた「統一ロシア党大会」の時点では、下院選での議席減が予測されていた。それに先立つ11月9日にインドネシアのバリ島で開かれた「東アジア首脳会議」に初登場するロシアの代表として予定されていたメドベージェフ大統領が、急遽ラブロフ外相に差し替えられたのも、下院選対策のため、と報じられていた。
また、深刻だったのは、11月20日にモスクワのオリンピック・スタジアムで開催された格闘技戦でのプーチンへのブーイングである。米ロの格闘家が対決し、ロシア人が勝った。観戦していたプーチンが試合終了後、リングの上に登り、激励のあいさつをしようとしたところ、会場の一角から沸き起こったブーイングが会場全体に広がるという異常事態となった。プーチンにとっては、欧米のメディアが大々的に報じるデモ集会よりも、はるかに深刻なダメージを受けたに違いない。
それというのも、12月10日のモスクワでの2万50000人と云われるデモは、中産階級、知識人、若者たちが主で、いわゆる「リベラルな勢力」が多数を占めた。これに対し、格闘技の対決試合は、リベラルというよりも右派民族主義者の色彩が強い人たちである。格闘技が大好きで「体育会系」のプーチンと同類の「プーチン支持基盤」なのだ。それがブーイングを浴びせたことは、プーチンにとって耐えがたい体験であったろう。
プーチンの政権基盤に、地殻変動が起きていることを、プーチン自身が感じ取らなかったはずはない。
そこで次に、個別的な問題について検討したい。思いつくままに、所感を述べる。
1.プーチンは、いかなる反省/戦略再構築をしなければならないか
プーチンは、政権の政治基盤を変えるなど、何らかの手を緊急に打たなければならない状況にある。大勢翼賛的政党である「統一ロシア」では、もはや、信頼されない。それを察知したプーチンは、すでに、「統一ロシア」から少し距離を置き始めている。大統領選挙での支持基盤は、プーチンが編成してきた「全露国民戦線」という組織体に移し始めようとしている。そこの選挙対策本部長には、保守・民族主義的な映画監督がヴァル―ヒンが指名された。だが、この程度の変革では、根本的な政治制度改革なり新たな政権維持装置の構築を図らなければならない。プーチンは、必ずや、何らかの対策を打ち出すに違いない。
2.モスクワ市民や地方住民の不満の実態と原因
モスクワは、ロシア全体の中でも、平均収入が高く、教育水準も高く、経済的にも自立して暮らしている人が多い。連邦予算に依存していない階層であるだけに、考え方もリベラルで、プーチンのマッチョ的な気質なり、愛国主義や権威主義とは相いれない種類の人たちである。したがって、もともとプーチンを支えてきた「統一ロシア」への支持には、積極的でなかった。支持率も、従前から30%ないし40%で推移してきている。それが今回の下院議員選挙では、43%を超えた。シベリアなどの地方では、30%ぐらいだったのに、本来それよりも低かるべきモスクワの方が高かった。ということから、モスクワ市民の不正選挙疑惑への不信・不満が爆発したと考えられる。
ただし、プーチンへの支持率低下は、今回急に起きたことではなく、長期的傾向なので、不正選挙によるものと別に捉えられるべきものである。その原因は、多岐かつ複雑であり、別の分析を必要とする。
3.不正投票に対する調査結果と今後の予想
プーチンは、「不正投票は無かった」との立場を堅持している。12月15日に行われた全国TV向け恒例の、質問に答える4時間半番組でも、投票結果は確定しており、選挙のやり直しはしない、修正はしない、と主張している。
今回議席を伸ばした野党は、いずれも体制内野党であり、プーチンの意向に逆らうことなく、このままずるずると来年3月の大統領選へと移行するのであろう。下院内では、すでに、議長・副議長や委員会メンバーの選出に目が向くようになった。選挙やり直しの話は、関心外に移って行きつつある。ちなみに、下院議長は、プーチン腹心のナルイシキンが就任した。
不正//
また、深刻だったのは、11月20日にモスクワのオリンピック・スタジアムで開催された格闘技戦でのプーチンへのブーイングである。米ロの格闘家が対決し、ロシア人が勝った。観戦していたプーチンが試合終了後、リングの上に登り、激励のあいさつをしようとしたところ、会場の一角から沸き起こったブーイングが会場全体に広がるという異常事態となった。プーチンにとっては、欧米のメディアが大々的に報じるデモ集会よりも、はるかに深刻なダメージを受けたに違いない。
それというのも、12月10日のモスクワでの2万50000人と云われるデモは、中産階級、知識人、若者たちが主で、いわゆる「リベラルな勢力」が多数を占めた。これに対し、格闘技の対決試合は、リベラルというよりも右派民族主義者の色彩が強い人たちである。格闘技が大好きで「体育会系」のプーチンと同類の「プーチン支持基盤」なのだ。それがブーイングを浴びせたことは、プーチンにとって耐えがたい体験であったろう。
プーチンの政権基盤に、地殻変動が起きていることを、プーチン自身が感じ取らなかったはずはない。
そこで次に、個別的な問題について検討したい。思いつくままに、所感を述べる。
1.プーチンは、いかなる反省/戦略再構築をしなければならないか
プーチンは、政権の政治基盤を変えるなど、何らかの手を緊急に打たなければならない状況にある。大勢翼賛的政党である「統一ロシア」では、もはや、信頼されない。それを察知したプーチンは、すでに、「統一ロシア」から少し距離を置き始めている。大統領選挙での支持基盤は、プーチンが編成してきた「全露国民戦線」という組織体に移し始めようとしている。そこの選挙対策本部長には、保守・民族主義的な映画監督がヴァル―ヒンが指名された。だが、この程度の変革では、根本的な政治制度改革なり新たな政権維持装置の構築を図らなければならない。プーチンは、必ずや、何らかの対策を打ち出すに違いない。
2.モスクワ市民や地方住民の不満の実態と原因
モスクワは、ロシア全体の中でも、平均収入が高く、教育水準も高く、経済的にも自立して暮らしている人が多い。連邦予算に依存していない階層であるだけに、考え方もリベラルで、プーチンのマッチョ的な気質なり、愛国主義や権威主義とは相いれない種類の人たちである。したがって、もともとプーチンを支えてきた「統一ロシア」への支持には、積極的でなかった。支持率も、従前から30%ないし40%で推移してきている。それが今回の下院議員選挙では、43%を超えた。シベリアなどの地方では、30%ぐらいだったのに、本来それよりも低かるべきモスクワの方が高かった。ということから、モスクワ市民の不正選挙疑惑への不信・不満が爆発したと考えられる。
ただし、プーチンへの支持率低下は、今回急に起きたことではなく、長期的傾向なので、不正選挙によるものと別に捉えられるべきものである。その原因は、多岐かつ複雑であり、別の分析を必要とする。
3.不正投票に対する調査結果と今後の予想
プーチンは、「不正投票は無かった」との立場を堅持している。12月15日に行われた全国TV向け恒例の、質問に答える4時間半番組でも、投票結果は確定しており、選挙のやり直しはしない、修正はしない、と主張している。
今回議席を伸ばした野党は、いずれも体制内野党であり、プーチンの意向に逆らうことなく、このままずるずると来年3月の大統領選へと移行するのであろう。下院内では、すでに、議長・副議長や委員会メンバーの選出に目が向くようになった。選挙やり直しの話は、関心外に移って行きつつある。ちなみに、下院議長は、プーチン腹心のナルイシキンが就任した。
不正//