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メールコラム「使える!ビジネス古典」
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■No.24■■
何ぞ必ずしも利と曰わん
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前回のコラムでは、利益を得て財を成す王道の方法を、
『大学』章句伝十章よりご紹介しました。
この中でも「真の利益」とは何かを説いていますが、
『孟子』もまた同様に、「本当の利」を得たいのであれば、
目先の利を追うより先に、心がけるべきことを説いています。
孟子が、戦国七雄の一国、梁(りょう)の恵王に面会した時の
問答です。
孟子梁の恵王に見(まみ)ゆ。
王曰わく、叟(そう ※1)、千里を遠しとせずして来る。
亦(また)将(まさ)に以って吾が国を利する有らんとするか、と。
孟子対(こた)えて曰わく、王何ぞ必ずしも利と曰(い)わん。
亦仁義有るのみ。
***解釈***
孟子が梁の恵王に面会した。
王のいうには、「先生は、千里もの遠い路を遠いともせられずに、
はるばる来て下さったが、それは、先生もまた他の人のように、
わが梁の国を強くし、国土をひろげ、富まそうとして下さるので
ありましょうか。それならば、その方法をうかがいたいものだ。」と。
そこで孟子はこたえて、「王様よ、何も国を治めるのに、
そう利、利とだけ、利することばかりを言うことはありません。
それには、(利などということより、昔の聖賢のように、)
王もまたやはり仁義をおこなうということがあるだけです。
それだけを考えていればいいのです。」〕
**********
※1 「叟」とは、痩(やせる)のことで、痩せた老人の意。
そこから老先生のことに用い、ここでは、孟子に対する尊敬の言葉
として使われている。
いつの時代も人は、「利」の追求をしたがるものであり、
また一様に、まずは、利を得るためのノウハウを聞きたがるものです。
2000年の時を経た現代でもなお、儲けるためのノウハウ本が売れ、
成功者の周りには、儲けのノウハウを聞き出そうという人が殺到する
のですから、人間の根本なんて、何も変わっていないのでしょう。
孟子はさらに続けます。
王は、何を以て吾が国を利せんと曰い、士庶人(ししょじん)は、
何を以て吾が身を利せんと曰い、上下(しょうか)交々(こもごも)
利を征(と)れば、国危し。万乗の国、其の君を弑(しい)する者は、
必ず千乗(せんじょう)の家なり。千乗の国、其の君を弑する者は、
必ず百乗の家なり。万に千を取り、千に百を取る、多からずと為さず。
いやしくも義を後にして利を先にすることを為さば、奪わずんばあかず。
***解釈***
「王は王で、どうやって自分の国を利しようかとばかりいい、
大夫は大夫で、どうやって自分の家を利しようかといい、
士庶人は士庶人で、どのようにして自分の身を利しようかとばかりいって、
上の者も下の者も、めいめい自分の利益ばかり取ることを追い求めた
ならば、そのような時は、国家は誠に危い。
もともと、兵車一万台を出すような大国に於いて、その君を殺すものが
あるとすれば、それは必ず兵車千乗を出す程の領土をもらっていた
その国の家老の家である。又、兵車千台を出すほどの国に於て、
その君を殺す者があるとすれば、それは必ず兵車百乗を出すほどの
領土をもらっていたその国の家老の家である。
万の中から家来として千を取り、千の中から家来として百を取る
ということは、俸禄として決して少ないことではなく、随分多い方である。
それなのに、かりにも義ということを後回しにして、利ということばかり
をまっ先に考えるようなことをするならば、結局、君主のものでも何でも、
悉(ことごと)くうばってしまわなければ満足しない、ということになって
しまうのである。
**********
この時は、まさに戦国時代。
「万に千を取る」ような家臣が次第に実力を蓄え、主君を殺す下剋上の
世の中になっていることを、孟子は嘆いているのです。
現代は、実際に社長を殺して会社を乗っ取るような役員こそいませんが、
社長の失脚を誘い、ビジネス的に抹殺して、上に立とうとする者が
いないとは言えません。
また、利益ばかりを追求し、義の無い経営、お客様や取引先、自社の社員
に対してうそをついたり、思いやりのない経営を行っていれば、結局は、
その報いを受けることは、すでに証明されています。
高級料亭の看板と大勢の顧客を持ちながら、食品の偽装の発覚から
破綻へと追い込まれた船場吉兆は、高い資金力を背景に、
再建を計ったものの、その後また、食品の使いまわしが発覚して、
結局は倒産に追い込まれました。
そして、これら一連の事件は、その後も営業を続けるグループ企業の
経営にも大きく影響したことは、言うまでもありません。
また、農薬の残留などがある、であるいわゆる事故米を、
工業用(非食用)として仕入れておきながら、酒造会社や菓子メーカー
に転売したことが発覚した三笠フーズは、5名の逮捕者を出して
破産しました。
取引先の社長が自殺するという事件や、当初、被害者とされていた
人気酒造メーカーも、実は三笠フーズからワイロを受けていたことが
後から発覚するなど、その波紋は広がりました。
このように、世の中で話題になった事件を少し振り返ってみるだけでも、
自己の利益だけを追求する義の無い経営の末路がどのようなもので、
その代償がどれほど大きなものとなるのかは、明確です。
私たちも、真の利を求めるのであれば、
また、末長く続く利を得たいからこそ、孟子が恵王に進言した、
何ぞ必ずしも利と曰わん。亦仁義有るのみ。
の言葉を、今一度かみしめたいものです。
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『大学』章句伝十章よりご紹介しました。
この中でも「真の利益」とは何かを説いていますが、
『孟子』もまた同様に、「本当の利」を得たいのであれば、
目先の利を追うより先に、心がけるべきことを説いています。
孟子が、戦国七雄の一国、梁(りょう)の恵王に面会した時の
問答です。
孟子梁の恵王に見(まみ)ゆ。
王曰わく、叟(そう ※1)、千里を遠しとせずして来る。
亦(また)将(まさ)に以って吾が国を利する有らんとするか、と。
孟子対(こた)えて曰わく、王何ぞ必ずしも利と曰(い)わん。
亦仁義有るのみ。
***解釈***
孟子が梁の恵王に面会した。
王のいうには、「先生は、千里もの遠い路を遠いともせられずに、
はるばる来て下さったが、それは、先生もまた他の人のように、
わが梁の国を強くし、国土をひろげ、富まそうとして下さるので
ありましょうか。それならば、その方法をうかがいたいものだ。」と。
そこで孟子はこたえて、「王様よ、何も国を治めるのに、
そう利、利とだけ、利することばかりを言うことはありません。
それには、(利などということより、昔の聖賢のように、)
王もまたやはり仁義をおこなうということがあるだけです。
それだけを考えていればいいのです。」〕
**********
※1 「叟」とは、痩(やせる)のことで、痩せた老人の意。
そこから老先生のことに用い、ここでは、孟子に対する尊敬の言葉
として使われている。
いつの時代も人は、「利」の追求をしたがるものであり、
また一様に、まずは、利を得るためのノウハウを聞きたがるものです。
2000年の時を経た現代でもなお、儲けるためのノウハウ本が売れ、
成功者の周りには、儲けのノウハウを聞き出そうという人が殺到する
のですから、人間の根本なんて、何も変わっていないのでしょう。
孟子はさらに続けます。
王は、何を以て吾が国を利せんと曰い、士庶人(ししょじん)は、
何を以て吾が身を利せんと曰い、上下(しょうか)交々(こもごも)
利を征(と)れば、国危し。万乗の国、其の君を弑(しい)する者は、
必ず千乗(せんじょう)の家なり。千乗の国、其の君を弑する者は、
必ず百乗の家なり。万に千を取り、千に百を取る、多からずと為さず。
いやしくも義を後にして利を先にすることを為さば、奪わずんばあかず。
***解釈***
「王は王で、どうやって自分の国を利しようかとばかりいい、
大夫は大夫で、どうやって自分の家を利しようかといい、
士庶人は士庶人で、どのようにして自分の身を利しようかとばかりいって、
上の者も下の者も、めいめい自分の利益ばかり取ることを追い求めた
ならば、そのような時は、国家は誠に危い。
もともと、兵車一万台を出すような大国に於いて、その君を殺すものが
あるとすれば、それは必ず兵車千乗を出す程の領土をもらっていた
その国の家老の家である。又、兵車千台を出すほどの国に於て、
その君を殺す者があるとすれば、それは必ず兵車百乗を出すほどの
領土をもらっていたその国の家老の家である。
万の中から家来として千を取り、千の中から家来として百を取る
ということは、俸禄として決して少ないことではなく、随分多い方である。
それなのに、かりにも義ということを後回しにして、利ということばかり
をまっ先に考えるようなことをするならば、結局、君主のものでも何でも、
悉(ことごと)くうばってしまわなければ満足しない、ということになって
しまうのである。
**********
この時は、まさに戦国時代。
「万に千を取る」ような家臣が次第に実力を蓄え、主君を殺す下剋上の
世の中になっていることを、孟子は嘆いているのです。
現代は、実際に社長を殺して会社を乗っ取るような役員こそいませんが、
社長の失脚を誘い、ビジネス的に抹殺して、上に立とうとする者が
いないとは言えません。
また、利益ばかりを追求し、義の無い経営、お客様や取引先、自社の社員
に対してうそをついたり、思いやりのない経営を行っていれば、結局は、
その報いを受けることは、すでに証明されています。
高級料亭の看板と大勢の顧客を持ちながら、食品の偽装の発覚から
破綻へと追い込まれた船場吉兆は、高い資金力を背景に、
再建を計ったものの、その後また、食品の使いまわしが発覚して、
結局は倒産に追い込まれました。
そして、これら一連の事件は、その後も営業を続けるグループ企業の
経営にも大きく影響したことは、言うまでもありません。
また、農薬の残留などがある、であるいわゆる事故米を、
工業用(非食用)として仕入れておきながら、酒造会社や菓子メーカー
に転売したことが発覚した三笠フーズは、5名の逮捕者を出して
破産しました。
取引先の社長が自殺するという事件や、当初、被害者とされていた
人気酒造メーカーも、実は三笠フーズからワイロを受けていたことが
後から発覚するなど、その波紋は広がりました。
このように、世の中で話題になった事件を少し振り返ってみるだけでも、
自己の利益だけを追求する義の無い経営の末路がどのようなもので、
その代償がどれほど大きなものとなるのかは、明確です。
私たちも、真の利を求めるのであれば、
また、末長く続く利を得たいからこそ、孟子が恵王に進言した、
何ぞ必ずしも利と曰わん。亦仁義有るのみ。
の言葉を、今一度かみしめたいものです。
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