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メールコラム「使える!ビジネス古典」

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相手を納得させてしまう孟子の話し方
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人間の心には、生まれつき「仁・義・礼・智」の四徳(しとく)が
備わっているとする「性善説」を主張したことで有名な孟子は、
一流の弁舌家でもありました。


孟子は、話をする相手に、真から自己の主張に共感してもらえるよう、
相手に合わせて話し方を選び、相手にとって分かりやすい例え話をする
などの、巧みな話術を持っていました。

その見事で鮮やかな説得術は、そのまま、商品のセールスや、
部下の指導、業者との折衝の参考となるでしょう。

例えば、対照法を巧みに利用して弟子の難しい質問に答えているのが、
『孟子』告子章句上にある、「大体と小体」のお話です。


対照法とは、相手が既に持っている知識を基礎として、
その差異を中心に論を積み重ねていく話法です。

相手を思わず納得させる、孟子の論理展開に注目しながら、
読んでみてください。



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 【大体と小体】

 公都子が尋ねた。

 「同じく人間ですのに、偉大な人物もあればつまらぬ人物もあるのは
 なぜでございますか」

 孟子は言った。

 「『大体』すなわち心の命ずるところに従ってゆけば偉大な人物となり、
 『小体』すなわち耳や目の欲に従ってゆけばつまらぬ人物となるのである」

 「同じく人間ですのに、ある者は心の命ずるところに従い、ある者は
 耳や目の欲に従ってゆくのはなぜですか」

 「耳や目には考えるはたらきがないから、外界の物にながされて、
 正しいはたらきができなくなる。
 だから外界の物が目や耳にふれると、耳目は一途にその方に引き寄せられて
 しまう。だが心には考えるはたらきがある。
 考えれば正しい道がわかってくるが、考えなければわからない。
 これらはみな天がわれわれに与えた器官だが、その中で、
 心という大いなるものをまず第一にすれば、耳や目などの小さいものが
 心の働きを奪いまどわすことはできなくなる。
 偉大な人とはこのような人にほかならない。

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孟子は、誰の心にも思い当たるであろう事柄を例にあげ、
心に従う「大体」と耳目の欲に従う「小体」をうまく対比させて
質問に答えると同時に、どうすれば「大体」となれるのかまでを示して、
好ましい行動を促しています。


派手なテレビCMに踊らされて大手商品を購入しがちな消費者に
地味ではあるものの良質な自社製品の良さを分かってもらいたい場合など
そのまま応用できそうです。


同様の話法は、滕文公(とうぶんこう)章句、「心の労働と身体の労働」
にも見られます。

この章は、全文1,118字で、『孟子』中でも2番目に長い文章
となっていますので、少しかいつまんでご紹介しましょう。



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 農業の改組とされている「農神」の説を信奉する許行という者が、
 楚(そ)から滕(とう)へやってきて、儒者陳良(ちんりょう)の弟子、
 陳相(ちんそう)と出会った。
 陳相は、許行の説に共感し、儒家の説を捨てて許行の教えを学んだ。

 ある日、陳相は孟子に会い、許行の説を持ちだして言った。

 「滕の殿さまは誠にすぐれた君主でいらっしゃるのですが、まだ本当の道
 をご存じありません。本当の賢者は人民とともに耕して自分の食糧を作り、
 自分で煮炊きをしながら政治をするものです。ところが今、滕には殿さま
 の穀倉(こめぐら)があり、財倉(かねぐら)があるというのは、つまり
 殿さまが人民をこき使って生活なさっているということになります。
 これではとてもすぐれた君主とは言えますまい」

 孟子は言った。

 「許先生は必ず自分で作物を植えてたべるのかな」

 「そうです」

 「では、許先生は、必ず自分で麻布を織って着るのか」

 「いいえ、許先生は粗末な木皮の布をお召しになります」

 「許先生は帽子をおかぶりか」

 「はい」

 「どんなものをお用いになる」

 「白絹のものです」

 「それは自分で織りなさるのかな」

 「いいえ、穀物と交換なさるのです」

 「許先生はなぜ自分で織りなさらぬ」

 「それは農耕の妨げとなるからです」

 「許先生は釜や蒸し器で飯を炊き、鉄の農具で耕しなさるのか」

 「そうです」

 「それらは自分で作られるのか」

 「いいえ、穀物と交換なさるのです」

 「穀物を道具類と交換することは、別に道具を作る陶工や鍛冶屋を
 こきつかったことにはならぬ。
 陶工や鍛冶屋にしても自分の作った品物を穀物と交換したところで、
 どうして農夫たちをこきつかったことになろうか。
 それはそうと、許先生はどうして陶器を焼いたり鉄を鍛えたり
 なさらないのか。
 必要な道具をなんでも自分のところで作って使うことをせず、
 なぜいろいろな職人と七面倒な交換をなさるのか。
 許先生はなんとまあわずらわしいことを嫌わずになさるものよ」

 「それは、職人の仕事は農耕の片手間ではとてもできないからです」

 「そうだとすると、天下の政治だけが農耕の片手間でできるというわけか。
 そんなことはなかろう。だいたい世の中には、上に立って治める者の仕事
 もあれば、一般庶民のする仕事もあるものだ。
 ところで、ひとりの人間の身に、あらゆる職人の腕が備わっているのが
 建前だとして、もしすべての物を、みな自分で作って使わねばならぬという
 こととなると、天下の人びとはみな、横路(よこみち)にまぎれこんで、
 くたびれ果ててしまうだろう。
 だから昔から、『心を労する者もあれば、身体を労する者もある』と
 言われているのだ。
 心を労する者は人を治め、身体を労する者は人に治められる。
 人に治められる者は治める人たちを養い、
 人を治める者は治められる人たちに養われる。
 これは天下に通ずる道理なのである。」

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孟子の話はこの後、君主の在り方から、孔子の喪に服した弟子達の話
にまで広がり、楚の許行に染まった陳相への非難へと進みます。


孟子は、この時、すぐに本題には入らず、質問で相手の情報を
引き出しながら、説得の導入としています。

そして、情報を確認し終えたら、矛盾点見つけ、そこを一気に衝いて
相手を論破しているのです。


まとめるとこうなります。

①質問で相手の知識を確認しながら情報を引き出す。

②情報を確認して矛盾点を衝く。

③矛盾の根拠となる事柄を対比させて、違いを明確にして説得。


大変効果的な論法ですから、覚えておいて損はないでしょう。


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