ナイアガラのシェルコフ一族(四) | 醒餘贅語

醒餘贅語

酔余というほど酔ってはいない。そこで醒余とした。ただし、醒余という語はないようである。

 ネット上にある文献だけでは分からない部分もあるので、少し現地の図書館や博物館のサイトに当たってみた。たとえばThe Buffalo History Museumの蔵書中にThe Schoellkopfs, 1842-1994, a family historyという書籍が見つかった。Diane Glynnという人が1995年に出している。アマゾンなどを調べてみたがどこにも在庫がない。一応、この書籍とAnna SchoellkopfについてMuseumに照会したところ、該当する部分のページを送ってくれた。


 それによると確かに外交官のWalter Scchoellkopfはバッファローのシェルコフ家の出身である。第一次大戦に従軍し海外に派遣されたことが転身のきっかけであったらしい。確かに富裕な一族のメンバーではあるが、経歴を見る限り、日本で言われるような大富豪、すなわち財閥の当主もしくは後継者というものではなく、大勢のシェルコフの一人である。しかし、滝を臨む好位置の大邸宅を購入したともあるから、それを見た外国人には相当な富豪に見えたかもしれない。またAnnaについては数冊の書籍を著したとあるが、日本文学との接触については何も触れられていない。


 あとは補足である。第二世代のJacob F. Schoellkopf Jr. は父と共に化学会社を興したと書いたが、この人も技術者で、米国化学会のアーカイブを調べると多くはないがいくつか記事がある。ただ、それよりもSchoellkopfの名を今に伝えるのはJacob F. Schoellkopf Medalかも知れない。これは米国化学会(ACS)西部ニューヨーク支部の賞で地区限定であるが、1931年から現在まで続く歴史あるものである。ニューヨーク西部と言っても、例えばロチェスターはロチェスターで別に支部があるので、バファロー周辺に限定されるのだろう。確かに近年の受賞者はUniv. of Buffalo(SUNY, Buffalo)の教員がほとんどである。


 1999年の受賞者はParas N. Prasad教授であった。インド出身で化学だけではなく、生体・医療工学、光科学、電子工学にまたがる広範な領域で著名な仕事をした人である。筆者の往年の研究分野とも一部かぶさる。先方は覚えていないかもしれないが、何度か学会の懇親会で同席したことがある。しかし、これはこの稿とは関係のない話である。