自分のことだと距離が近すぎてわからなくなるのだけれど、他人のことなら励ませる。
発表会に出るみたいにキラキラできる人しかここにいられないのかと思って泣きそうになった、とポツリと言うから、そんなことないよ、私みたいなのもいるからだいじょうぶだよ、また一緒にレッスンしようよ、と声をかける。
てっきり出るものだと思っていたみたいで、私も出ないよ、と告げると驚いていた。
何かポリシーが?と訊かれ、いやポリシーというか、先の約束はできないから。
先生やみんなががんばっているものを壊すわけにいかない、自分だけががんばればいいのなら何とかなっても周りにそれを強要できないから、とかいつまんで説明したら、あ、同じ、と言っていた。
その日限りのバリエーションクラスとかなら、参加できるんだけど。
そうそう。
そんなに話せたわけではないけれど、枠組みはたぶん似ているのだと思う。
出ない選択をした人が気後れする必要はなくて、いろんな立場の人が安心して集えるスタジオのはずだ。
この頃は衣装を着てリハーサルをする様子を横目に、そそくさと着替えて帰る。
衣装がこれまた美しい。
邪魔しないように帰るつもりがつい、話しかけてしまう。
あっという間に来週は本番で、ああ、なんとかみんなニコニコで踊りきれるといいなと願う。
がんばってねー!と両手をぶんぶん振りながらスタジオを後にする。