その日、センターでは同じグループでワルツ。
アンシェヌマンの最後はピルエットで〆。
今日もちゃんと回れなかった、とがっかりしつつかろうじて4番で着地したら、後ろから、ぅわあ!ダブル?!って、控えめながら歓喜の声が聴こえる。
振り返ると、狐につままれたような顔をしたお仲間さんが、興奮したご様子。
どうやらはじめてダブルを回れたらしい。
ああ!決定的な瞬間を見逃した!!!
(見れなかったけど)よかったねー!と手を取り合って喜ぶ。
いつもみなさんどうして回れるんだろう、と思って見てたんですけど、なんか今日は回れた!最後の方はうしろパッセになっちゃってたけど!とうれしそう。
彼女がレッスン中にこんなふうに顔を輝かせることはめったになく、真剣に難しい顔をしていることの方が多いから、そんなはち切れそうな笑顔を見られてうれしい。
以前、先生やみんなと談笑していた時、泣きながら帰ったこともあるとおしえてくれたことがあり、バレエに真剣に向き合っているのはわかっていたけれどまさかそこまで追い詰められているとは知らなくて、いつもクラスをご一緒しているのに泣きながら帰ったことのない私は想像力が全然足りていなかった。
一度でいいから、そんな彼女に、彼女自身の美しい背中を見せたい。
自分の背中は自分では見えないから、ご自身がどんなに美しい背中をしているのか、きっと知らない。
いつものひたむきな努力が全てそこに表れていることを私はずっと、もう何年も見ているので、知っている。