スターダンサーズ・バレエ団公演「The Concert」を観に東京芸術劇場へ。

トリプル・ビルとして、

 

ジョージ・バランシン「スコッチ・シンフォニー」

ジェローム・ロビンス「牧神の午後」

ジェローム・ロビンス「コンサート」(国内初演)

 

の順に上演された。

SDB総監督のプレトークでは、期せずして1950年代に作られたバレエがそろった、とおっしゃっていたけれど、一見まったく趣の異なる3作品を同時に鑑賞することになんの躓きも感じなかったのは、それらに通底する時代の空気のせいだったのかもしれない。

各作品の感想は後日ゆっくり振り返るとして、とりあえず今日のところは ” コンサート “ について。

 

 

 

 

 

実は、私の座った席の周りも「The Concert」状態だった。

ひとりでいるとどうしても時間を持て余すので、つい人間観察をしてしまう。

 

 

開演前のプレトークの最中に、のしのしと入ってきた夫婦。

席番号がよくわからないようで、私の前を行ったり来たり、脚を引っ込めつつちょうどいいところで総監督の話が頭に入らない。

 

 

(なぜ?!今!!)

 

 

結局その夫婦は前列と後列に分かれて着席した。

私の右隣りに座った妻は用があるたびに前の席に座る夫の肩に爪を立てて(!)振り向かせる。

 

 

(怖い。なんか怒ってる???)

 

 

それから、開演ギリギリに入ってきた父娘。

娘は見るからにバレリーナ。

私の左隣りに座った父はあまり気乗りしない様子で、座るなりずり落ちそうなくらいの寝の体勢に入る。

 

 

娘はこれからはじまるプログラムについて、興奮気味に父に説明する。

父はマスクを外して洟をすすりながら、生返事をする。

 

 

Tne Concertを見てほしかったの!

ねえ、聞いてるの?!

携帯切った?

うるさいなあ、もう!わかってるよ、だってここ圏外だろ?

でもちゃんと切らなきゃダメなの!

 

 

父娘の苛立つ声に、周りが訝しげに振り返る。

 

 

(もうはじまるんですけど。ちょっと静かにしてくれない?)

 

 

 

 

 

 

はじめは迷惑だなあと思ったけれど、いや、これもコンサートなんじゃないか?と思えたら笑いをこらえるのが大変だった。

 

 

「Tne Concert」って、こんな作品。

 

 

 

 

ピアノのコンサートを聴きに来た観客たちの人間模様と、彼らの頭の中を描いたとされるコミカルな作品で、声を出して笑える稀有なバレエ。

 

 

総監督からは、声を出して笑っていいですよ、と言っていただけたから、遠慮することなく笑えたけれど、笑うどころかもうずっとクスクス笑いで、止まらない震えはどうしてくれよう。

 

 

そして信じられないことに、左隣りのお父さんはクスリともしなかった。

そのことが一層私の笑いを誘った。

 

 

ただひとつ、rainのシーンだけは、しんとした心持ちになった。

行きかう傘が美しい。

オール・ショパンのリサイタルはすばらしいものだった。

帰宅してからプレイリストを調べた。

 

 

Polonaise in A major "Military", Op. 40, No. 1
Berceuse in D flat major, Op. 57
Prelude in F minor, Op. 28, No. 18
Prelude in B flat minor, Op. 28, No. 16
Waltz in E minor, Op. posth.
Prelude in A major, Op. 28, No. 7
Prelude in E minor, Op. 28, No. 4
Mazurka in G major, KK IIa/2
Ballade No. 3 in A flat major, Op. 47

 

 

rainのシーンはPrelude in E minor, Op. 28, No. 4。

 

 

 

昨日からずっと繰り返し聴いている。

 

 

ピアニストの小池ちとせさんの演奏はもちろん、演技もまた特筆すべきで、まさか!ピアニストさんまで!

 

 

スターダンサーズ・バレエ団「The Concert」は本日9月24日まで。