深夜放送されたドキュメンタリー番組、すごいわ。

 

ドキュメンタリー「解放区」

The Soul of Swan Lake

TBS 8月7日放送

 

 

 

番組放送にあわせて再読したけれど、この本に出てくる当事者たちを宮尾俊太郎さんがお一人お一人訪ねて、丹念に聞き取りしている。

インタビュー時の宮尾さんの真摯でひたむきな姿が好印象だ。

 

 

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▲焼け跡の「白鳥の湖」島田廣が駆け抜けた戦後日本バレエ史 小野幸恵著 文藝春秋 2013年

 

 

著者の小野幸恵さんもインタビューを受けていた。

本は島田廣先生がご存命のときに聞き取りをして、その他たくさんの文献も読み込んで書かれたもので、戦前戦中戦後の日本バレエ史を通説している。

今回の「白鳥の湖」全幕日本初演を語るには外せないだろう。

 

 

戦前、すでに日本ではバレエ文化は芽生えていて、その辺りはエリアナ・パブロワをたどるとわかる。

ロシア革命から逃れて日本へたどり着き、鎌倉にバレエスクールを開設したエリアナ・パブロワは、日本バレエ界を担う人たちを多く育んだ。

 

 

「白鳥の湖」上演に限って言えば、その抜粋をエリアナ・パブロワと島田廣が演じた記録が残っている(1940年)。

でも、全幕を日本人だけで上演するなど夢のまた夢だったし、それをことごとく困難にしたのが彼の大戦だった。

 

 

 


日本洋舞史研究会編 新国立劇場情報センター刊行の『日本洋舞史年表Ⅰ 1900~1959』によれば、今回放送されたドキュメンタリーで扱ったのは、1946年4月~8月のおよそ4か月間ということになる。

 

 

 

 

1946年4月23日、島田廣の声かけによって蘆原英了宅に集まった人たちが『白鳥の湖』全幕の日本初演を決める。

そのたった2日後には、貝谷八百子スタジオにて稽古がスタートする。

そしておよそ3か月後の8月9日、初日の幕が上がる。

公演は17日間のロングランで、これは好評により5日間延長された(ソワレのみの上演。マチネはすでに別の興行が決まっていた)。

 

 

他の業界に先を越されまいとする焦りのようなものから始まった企画は、集まったダンサーたちの意地と執着にも似た熱い思いに支えられ、真夏の舞台に大きく花開いた。

 

戦中そして戦後のバレエはほとんど命がけにも聞こえ、食べるものも着るものも満足にない中、どうしてこんなにバレエに情熱を傾けることができたのか。

ただただあきらめなかった人たちの物語は、その時代を生きる多くの人の励みとなり救いとなったに違いない。

 

 

番組後半、当時の振付を再現するシーンは贅沢な試み。

今となっては滑稽にも映るカツラも衣裳も本で読んだ通り。

文献と写真だけで、よくここまで再現できたなと思う。

ダンサーならではの想像も推測も大いに発揮されていて、とても興味深かった。

 

 

当時に思いをはせるには十分すぎるくらい十分な映像資料。

 

 

 

※番組は今のところ、TBSFreeまたはTVerで無料で視聴できます。

ドキュメンタリー「解放区」

The Soul of Swan Lake

 

TBSFree↓

https://cu.tbs.co.jp/episode/20447_2024268_1000025274

 

TVer↓