「Flowers of the Forest」は観れば観るほど素敵な作品で、先日の「NHKバレエの饗宴」で再演されてうれしかった。

たまたま一緒に観に行くことになった友人は初見だったのだけれど、いい!すごいよかった!と熱のこもった感想をくれて、そのこともまたうれしかった。

 

昨年の初演時のプログラムを引っ張り出してきて読み返したり、音楽を探して聴いたりして、余韻を楽しんでいる。

ちょっとまだ語り足りないので、しばらくお付き合いください。

 

 

 

デヴィッド・ビントレー振付・演出「Flowers of the Forest」では、「4つのスコットランド舞曲」と「スコットランドのバラード」という二つの楽曲が使われている。
はじめに「4つのスコットランド舞曲」を用いた前半部分が作られ、何年か後に「スコットランドのバラード」を用いた後半部分が作られ、ひと連なりの作品としてできあがったという。
前半と後半で色味こそ違えど、スコットランドの歴史や風土をモチーフにした連続性が強く作品を貫いている。


振付や実際のパフォーマンスは5月の放映に委ねるとして、それまでの間、独特のスコットランドの音楽を聴いて待ちたい。


■前半(10分弱)

マルコム・アーノルド作曲「4つのスコットランド舞曲」

 

Movement 1: Pesante 0:00  重々しく
Movement 2: Vivace 2:28  活発に 速く
Movement 3: Allegretto 4:36 やや急速に やや速く (andante と allegro の中間)
Movement 4: Con Brio 8:23  元気に 生き生きと

上記4つの曲調の変化とともに場面が展開し、男性3人女性3人の計6人がさまざまな組み合わせで踊る。

男たちの力強く生命力にあふれる様子、女友達の陽気な語らい、男友達のちょっとした悪ふざけ、恋人との温かい時間、女たちの快活な様子、そして、今を生きる彼らが自然と携えている未来への希望がパッと弾ける。
この前半部分が屈託なく明るいほどに、後半との対比が生きてくる。


■後半(20分弱)

ベンジャミン・ブリテン作曲「スコットランドのバラード」

 

後半はスコットランドが過去に何度も見舞われた戦禍を表している。
市井の人々の生活が壊され、翻弄される様は、寄り添っては離れる7組のペアによって表現される。

「Flowers of the Forest」のFlowers(花)は、兵士のこと。


確かに戦争を表しているのだろうけれど、見ている側の印象としてそれほど重く感じられないのが不思議なところだ。

曲調は力強く、何層にも重なった金管や打楽器が暗雲垂れ込めるような不幸を暗示しても、実際に目に飛び込んでくる動きは軽快なのだ。

高い跳躍で舞台を次々と横切る。
たぶん、音が大きく強い時ほど跳んでいるから、爽快ですらある。
戦禍の悲惨さは曲と照明に任せ、踊りはどんな時にも失われない人間の生きる力や尊さを表しているのかもしれない。


再び曲が明るく、テンポがより速くなったところで作品は終盤を迎える。
前半部分の6人のダンサーも加わり、所狭しと踊りまくる大団円。

全体を通して、男性ダンサーの目を見張る跳躍や高速回転、女性ダンサーの細かくて素早いポワントワークに感嘆する。
音が終わるか終わらないかのうちに幕となり、いつもなら演奏が終わるのを待って拍手するところをこの作品に限っては、やや被せ気味に手をたたき始める。
彼らに届けるにはそうしないと間に合わない。
 

 

振り返れば、こんな難解な曲をさらりと演奏してしまうオーケストラとピアニストもすごかった。
「スコットランドのバラード」は2台のピアノとオーケストラで演奏される。
道理でピアノが雄弁で、迫力満点なわけだ。

 

 

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3枚のバレリーナのシールを組み合わせるという、絵心のない私の苦肉の策。

「4つのスコットランド舞曲」中の象徴的なポーズなのだけれど、本物のパンシェの脚はもっと上がっているし、片手は腰だった。

アンオーから覗く姿がかわいらしくて、牧歌的な曲とも相まって、とても好きなシーン。

 


ダンサーのみなさんが生き生きと楽しんで、また充実感たっぷりに踊ることで、作品に命が吹き込まれる。

そのことがよくわかる素晴らしい公演だった。