『芸人は学生時代暗い奴が多い』


そういうイメージも最近はわりと普通の事になってきたのではないでしょうか。

そして皆様のご想像通り私の学生生活も決して明るく時に甘酸っぱく他校との覇権争い等とも無縁の地味なすこぶる地味なものでした。

皆さんのクラスにも異常に前髪が長かったり、真面目にノートとってるのに赤点をとったり、異性と喋っているのを見たことのないクラスメート、いや、あなたが喋った事のないクラスメートがいるはずです。それが哀愁の漂う人『哀人』つまり『私』です。

しかし『地味=つまらない』とはあまりに安易、地味な人間ほど哀愁漂う何ともいえないニヤリとさせる笑いを巻き起こすのです。

地味な僕の周りにもやはり地味な、いや、哀愁漂う友達が伏し目がちに集まっていました。

ここではそんな僕自身や僕の哀愁友達『哀友』の哀愁漂うお話を皆さんにご紹介したいと思います。



天然パーマに大きなメガネ、僕の哀友の中でも別格の風格をもつF君とは中学生の時に知り合いました。同じクラスになった事はありませんでしたが一目見た時から彼の醸し出す哀愁に僕は惹かれ虜になってしまいました。


基本的に学生時代の哀メン(哀愁の漂うメンズ)はヤンキーからの被害を極力避ける為、気配を消す術を会得しています。存在を消し背景に馴染む。擬態。理想は空気のような存在。長年連れ添った夫婦の事ではありません。哀メンの処世術です。

しかしFに漂う哀愁は消そうとして消せるような代物ではなく、当然ヤンキーというライオン達に時折甘噛みされていました。


そんなある日Fがまた甘噛みされていると聞き、僕達哀メンはFのクラスへと急ぎました。すると前からFが1人で歩いてきます。



『おいF!お前またやられたんか!?』



『は?何が?』



『大丈夫か!?』



『あ?何がやねん?便所行くから。』



・・何もなかったのか、通り過ぎるFの背中を見送ると髪の毛に大きなゴミがついています。



『おい、F、髪に何かついて・・お前これガムやんけ!』

Fの天パに大きなガムが絡まっています。


これは絶対によくない事です。本来なら笑えるような話ではありません。


しかしその瞬間振り返ったFが照れながら一言





『バレたか(笑)』


一同爆笑。


Fはとても強く苦難を笑いに変えれる本物の漢(おとこ)だったのです。

その仏様の様な笑顔の顔面から放たれるまばゆいばかりの光を僕は生涯忘れません。


『イケてないよね』と言われてしまう、彼ら彼女らを敬意を込めて僕はこう言いたい『哀愁すごいよね』


学生の皆さん、本当におもしろい人間はいつも机で寝たふりをしてる彼や彼女かもしれませんよ。

とはいえ、無神経に話しかけてはいけません。
哀人はデリケートです。くれぐれも取り扱いには注意しましょう。