ネット新連句「藤沢周平・(春蝉)」⑥(ゴール)
スタート 平成二十二年三月十五日
ゴール 平成二十二年三月三十日
メンバー 小童(B)・宣長(B)・不遜(B)
(一) 正調
一 春蝉やこゝら武蔵野影とゞむ 藤沢周平 春
二 霞しく夕周平ドラマ 不遜 春
三 江戸日記用心棒の温くして 宣長 春※
四 武士の本分武士の一分 小童 雑
五 海鳴りにうなされて見る十三夜 不遜 秋月
六 鱗雲佳し秋時雨佳し 宣長 秋
(二) 破調
一 藤沢は江ノ島遊行寺東海道 小 雑
二 まなうらのふるさとのやまゆきがふる 不 冬
三 非情の掟にも従わねばならぬ定め 宣 雑
四 必殺請負小判一枚 小 雑
五 風死す日たそがれ清兵衛老いが恋 不 夏恋
六 男が男に惚れる竹光始末 宣 雑恋
七 雨あがり庄内平野稲みのる 小 秋
八 まぼろしの小童の句君知るや 不 雑
九 花月夜破顔一笑酌み交わすなり 宣 春花月
十 羽目板割りの卒業式 小 春
十一 何時もの席にとぐろ巻く蛇 不 夏
十二 金頭おいしい夏の味噌汁 宣 夏
(三) 乱調
一 ひもじい爺さん「なせばなる」で東洋の魔女 小 雑
二 脱サラは海坂藩の麓村 不 雑
三 根無し草にも矜持ありて心雪化粧 宣 冬
四 「路チュー」で言訳あるつらつきや引がへる 春恋
五 ハニートラップ危ない危ない 不 雑恋
六 日本脱色黒い軍艦旗 宣 雑
七 ルーツさがしに胸板叩いてたたいて紙ふうせん 小 春
八 彼岸会や徳川霊台もあり高野山 不 春
九 人情しぐれ町夜のふけて独りゆく 宣 雑
十 義民起つか藁蒲団剥ぎ襤褸を翻し 小 冬
十一 落とし水金峰山は豊かなり 不 秋
十二 短冊に月の句ばかり書いて「出羽さらば」 宣 秋月
(四) 正調
一 気がつけばうつぶせ梅雨の音すなり 小 夏
二 哭けととどろく重い海風 不 雑
三 人知れず派手な色着て土手をゆく 宣 雑
四 火鉢抱えて炭火傾く 小 冬
五 忘却の希望の二字の花の文字 不 春
六 湯煙ただよう陸奥の春 宣 春
(留書きに替えて)
小菅留治、この平凡な名前。教え子に慕われ、一生平凡な中学教師で終わってもよかった。彼を多くの人に読まれる文人に仕立てたものは、その天性の「心ここに留まらぬ」遍在する魂への希求によるものとみたい。秘められた矜持、「留」から「周」への価値転換こそ、藤沢文学のベクトルの変異というところだろう。わずかながらその片鱗に触れてみて、またこの巻にも得るものがあった。次にどのように移行しても、あなた任せ、風任せというところ。(宣長)
「司馬遼太郎と対置させるためには、池波正太郎ではなく藤沢周平でなければならないと思った。端的に言えば、司馬は商人であり、藤沢は農民である。そして、池波は職人である。職人と商人をコントラストさせることはできない。いささかならず調子のよい商人と対抗するためには、寡黙に働く農民のエネルギーをもってこなければならないのである。と佐高信は『司馬遼太郎と藤沢周平』のあとがきで、二人の作家の視点の違いを対比させている。http://www.ran.sakura.ne.jp/~unpluged/sibavsfujisawa.htm
↓
大陸系か半島系かと問う日教組的見解。われわれは列島にいることを忘れたくないものだ(小童)
「働き盛りで、職場の中心人物で、登り龍のごとき勢いの人は、司馬遼太郎を愛読するらしい。それに対して、藤沢周平を愛読するのは、もう先が見えてきて、大きな望みを抱けなくなった人だという説があります。確かに今の自分に当てはめてみてうなずける説ですね。でも、就職した当時も嫌いな作家ではなかった。とすると、藤沢周平に共感した時点で、僕の会社での出世というものは、もうあり得ないという結論が出ていたのかもしれません。→http://www.sepia.dti.ne.jp/jonthefirst/nikki200810.html
↓
この藤沢論に痛く好感。(小童)
☆ 「オール三去り」というネーミングは、ネーミングとしては面白いが、誤解を生むネーミングである。標準式目
(ルール)の「二句去り」・「三句去り」・「五句去り」が複雑なので、「オール三去り」と単純化しただけのものであ
る。そして、「同字三去り」というのもその根底にある。しかし、この「去り嫌い」に関連して「句数」が、俳諧(連句)
式目の二大要なのだが、標準式目では、「一句」・「一~二句」・「一~三句」・「二~五句」・「三~五句」と、こちら
も、複雑なので、打越を嫌っての、「一~二句」としたのだが、「オール三去り」のネーミングでいくと、「一~三句」
の方が分かり易いのかも知れない。また、連句の流れから行くと、「句数」を先に持ってきて、「去嫌」は後の方
が、混乱しないで、良いのかも知れない。
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「句数三句以内、オール三去り」
↓
今回の※の所は、上記の新ルールの、先行的な、「春」の「三句続き」のものである。(不遜)
ネット新連句「宮沢賢治・五輪塔」⑤(ゴール)
スタート 平成二十二年二月二十二日
ゴール 平成二十二年三月 十五日
メンバー 小童(B)・宣長(B)・不遜(B)
(一) 正調
一 五輪塔のかなたは大野みぞれせり 宮沢賢治 冬
二 バンクーバーは三寒四温 不遜 冬
三 鉦叩きトヨタ叩きはやらせにて 小童 秋
四 コンバイン無く稲束を負う 宣長 秋
五 秋じゃなく夏の月ではおかしいか 不 夏月
六 禿を笑うな禿が笑うぞ 小 雑
(二) 破調
一 それなりに犬の遠吠え訳あるごとし 宣 雑
二 風の太郎の名は春一番 不 春
三 セロ弾きはしばしば苗代迂回せり 小 春恋
四 弟ならば相聞にならず 宣 雑恋
五 休ミタイ野原ノ松ノ下闇ニ 不 夏
六 涼し額に鴉の洗礼 小 夏
七 どとと落ちし雪の音にも驚かず 宣 冬
八 寒月浴びて檻のライオン 不 冬月
九 ヤツに誰が王の冠を与えたか 小 雑
十 太って若い方は大歓迎 宣 雑
十一 花巻の賢治の詩碑で花見酒 不 春花
十二 春遅々として早池峰見仰ぐ 小 春
(三) 乱調
一 稲も我も病(いたつき)癒えず稗のみ稔る 宣 秋
二 「ドッテテドッテテ、ドッテテド」月夜の軍歌 不 秋月
三 岩手の浮糞参議院選へ向け「どですかでん」 小 雑
四 「いい湯だべ」「健児になって里サ帰るべ」 宣 雑
五 四月の気層を行き来するおれもひとりの修羅なのだ 不 春
六 I子さん登校拒否で橋龍の春眠如何に 小 春
七 冷血動物充満すれば個人の幸福あり得ず皆凍死 宣 冬
八 まがった てっぽうだまのように 一目ぼれした 不 雑恋
九 嗅いでも握るな、風だって甘くささやく 小 雑恋
十 自由というこの厄介さに竹の皮ぬぐ 宣 夏
十一 へんなおじさんの宮沢某に蛇を投げなさい 不 夏
十二 桜よ詩人よぺーらぺらーのひーらひら 小 春
(四) 正調
一 恩師の著『賢治の手帳』なつかしく 宣 雑
二 千草が揺れて無声慟哭 不 冬
三 シベリアは墓また墓は凍土なり 小 冬
四 銀河系なる宇宙へ帰還 宣 雑
五 雨ヤ風モノトモセズニ花詩人 不 春花
六 億数千の羊の毛刈る 小 春
(湘南通信→「留書き」に替えて)
雨の日は外出せず野良猫を心配し、風の日は山鹿を思いやり、雪山は仰ぎ、夏の暑さに山ビルを思い出す。身体はそこそこの丈夫で満足し、銭に縁のないのを潔しとし、決して人の妻には手を出さず、いつも静かにムッツリを決め込み、間違ってもメリケン粉を主食とせず、コーヒーに煙草は少々を心がけ、ときどき己れを忘れ、そこそこに働きそこそこに戯れ、詰まらんことはすぐ忘れ、海風と山風の交わる丘のささやかな部屋のサッシの内にて、東に病気の子あれば早く病院へ連れて行ってやれと言い、西に疲れた親あれば休息しろとメールを送り、南に死にそうな人あれば誰しもいづれ行くところと言ってやり、北に喧嘩や訴訟あればやりたければやればと傍観し、詩人には自己陶酔もほどほどにしろと言ってやり、成功者にはオマエのことはオマエが思うほどオマエのことを思ってはいないのが人だと忠告してやり、日照のときは帽子をかぶり、寒さの夏は防寒一枚羽織り、みなに変人と思われぬ程度に振る舞い、褒められれば素直に喜び、べつだん無視も評価もされず、ひごろ人には距離を持って接し、挨拶は軽く会釈のみ、声を掛けられるまでは決して自ら語らず、それでも目に余るときには「いま私はあなたに何か出来ることはありますか」と尋ね、化学肥料や新興宗教は決して勧めてまわらず、思いやりという名の独断で個々に押付けることなく、お節介はあくまでも権力や支配者へ向けての反撃とし、私はそういうものであり続けたい。(小童)
(讃岐通信→「留書き」に替えて)
歌仙三十六句の三分の一を担当すると言っても、皆さんのそれぞれの句に助けられていると、賢治らしい気分に少々なってきております。やっぱりこの人は崇敬の的として特別視しておきたいです。次巻への要望はありません。誰であろうと、なんとか対応していきます。私に好き嫌いはありません。(宣長)
(下野通信→「留書き」に替えて)
かの詩人には
この世の夜空はるかに遠く
満天の星がかがやく水薬のように美しく
だがそこにいま
・・・かの詩人は花見連にくだまかれている
「美代子、あの花見連に、石を投げなさい。」(不遜)
ネット新連句「金子光晴・芭蕉(ピーサン)」④(ゴール)
スタート 平成二十二年二月 四日
ゴール 平成二十二年二月二十一日
メンバー 小童(B)・宣長(B)・不遜(B)
(一) 正調
一 ながい袖を飜へす/またその上に袖をかへす/
芭蕉から芭蕉へ/わたる騒がしい雨 金子光晴 秋
二 出た出た月がバナナも熟れる 不遜 秋月
三 おっぺけぺ靑い襟足をそろへて 小童 雑
四 絶望しない驕慢の僕 宣長 雑
五 胡沙来るトラックバック不調なり 不 春
六 冬将軍の横綱審議 小 冬
(二) 破調
一 おっとせい群を離れる寒さを厭う 宣 冬
二 薬局の広告にあり「夫精」 不 雑恋
三 珍入禁止誤認逮捕じゃないですか 小 雑恋
四 くらげの夢見て眠りませう 宣 夏
五 驟雨(スコール)去りエルヴェルフェルトの首に月光 不 夏月
六 金の味する長政の杯 小 雑
七 日本の逆潮尻目に子をいぶしおり 宣 雑
八 半眼にして訥々と「されど老鶯死なず」 不 夏
九 「何杯、二杯ね、はい、じゃもう一杯」の六月 小 夏
十 花見避ける経済 幔幕張って 宣 春花
十一 朝寝覚め賽の河原で賽を振る 不 春
十二 霊峰巡礼中立松和平 小 雑
(三) 乱調
一 何をまた誑かすのか御仁よと言いたいのに(;>_<;) 宣 雑
二 「死んだ」といわれても「死なない」蛇穴に入る 不 秋
三 秋までは流して流れぬ小沢の浮糞 小 秋
四 キリストの復活冬の虹にじむ蒼穹 宣 冬
五 薔薇よ汝は陵辱されつくしたのだ 不 夏
六 ゆるぬるハニーちゃんが日本を救うか 小 雑
七 軽やかに「ユッフォッ」と唄い出そう 宣 雑
八 清楚なる真っ白な襟足月燦々 不 冬月
九 歳の差余ってドロドロ願わくば蚊帳の中 小 夏恋
十 ただ一対の温め合うカラダとカラダ 宣 雑恋
十一 オトボケ封じに二日灸 不 春
十二 「仰げば尊し」和菓子の蓬餅(もちくさ) 小 春
〈四〉 正調
一 無一物青春きっぷ秋の旅 宣 秋
二 洗面器には米搗きばった 不 秋
三 溺れても五七五と甘噛み中 小 雑
四 焼土の歌や亡霊の歌 宣 雑
五 吉報のバンクーバーの花はまだ 不 春花
六 薄氷ニッポン銅に満足 小 春
(湘南メモ)
表現力でメダルをつかんだフィギュア(http://vancouver2010.nikkansports.com/figure/news/f-sp-tp0-20100219-597868.html)
個人的には、フィギアの「見せよう魅せよう踊場のオス鳥」より、カーリングのお姉ちゃんの「ただただ勝負にかける凝縮の集中力」の、あの無表情のアップに、ひたすらエキスタシーをおぼえるのでありますが、ニッポン草食男子の面目のためには、ともあれメダル獲得おめでとうござます。
・(四)三句目の「甘噛み」の「噛」が脱字していたので訂正です。メモ帳において「噛」の旧字で変換してしまったのが原因と思われます。メモ帳をブログへコピーする際は要確認。いつか「髑髏マーク」の絵文字で、同じことがありました。メモ帳の文字がブログ画面では文字化けするということです。正しくは、
↓
三 溺れても五七五と甘噛み中 小 雑
・やはり金子光晴はアナキストですね。一言でアナキストといっても色々あるでしょうが、やはり彼もアナキストでした。つくづくそう思いました。「通信欄も、ネット記事のアドレスのみとか、それぞれの好みの臨機応変なものとしたい」という案に賛成です。あくまでも連句は句が全てであります。説明など不要なのであります。この姿勢に立ち返りたいものです。で、通信欄のアドレスやメモは、あくまでも付録ということで。候補者は捌きさんの特権、お任せしま~す。
(湘南メモ→コメント欄のもの)
【金】取りの【子】よ早現れ【光】満つ日本【晴】となる時を待つ
(留書きに替えて)
2010/2/20(土) 午前 7:13
金子光晴のオヤジギャグですね(笑)
2010/2/21(日) 午前 4:05
(不遜メモ)
今回は、トラックバックの不調があって、つくづくと、こういうシステムでは、トラックバック
が不可欠の思いがした。しかし、トラックバックが不調の場合は、コメント欄などを活用して、
連絡し合い、それぞれのブログで、現在進行形の形でアップするというやり方で、進めていきた
い。連句の付けは、打越・前句と付句と「三句」関連で進行するが、この三吟は、それぞれ慣れ
てきたので、「ずばり一句」と、簡素化もしていきたい。通信欄も、ネット記事のアドレスのみ
とか、それぞれの好みの臨機応変なものとしたい。
☆ さて、次の候補者などがいれば、これまた、臨機応変にお願いしたい。
↓
詩人・金子光晴の次は誰か? → 何事も「水が流れるように」 → 乞うご期待!
ネット新連句「加藤郁乎・十三階の死美人」③(ゴール)
スタート 平成二十二年一月二十一日
ゴール 平成二十二年二月 三日
メンバー 小童(B)・宣長(B)・不遜(B)
(一) 正調
一 十三階の死美人から排卵がとどいてゐる 加藤郁乎 雑
二 モナコ王妃を覗く裏窓 小童 雑
三 さしちがい竹の揺れいる涅槃にて 宣長 春
四 亀の看経江戸の子供屋 不遜 春
五 一筆の一楕円月六ペンス 小 秋月
六 豚児さやかに秋風にばり 宣 秋
(二) 破調
一 俳々と諧々河豚面針千本 不 冬
二 そのオコゼ的物言いが素敵 小 雑
三 喋喋喃喃二階に運び女とす 宣 雑恋
四 郁乎と小百合鴛鴦の仲 不 冬恋
五 以心伝心双子おるかと梟鳴く 小 冬
六 港波競艇はずれ券呑む 宣 雑
七 兄弟句宝井其角名人芸 不 雑
八 謎解き読んで臍に汗 小 夏
九 ひいやりと空念仏の聞こえくる 宣 夏
十 淡月嘆くかくれんぼの鬼 不 春月
十一 花の名残が嘘泣でやって来る 小 春花
十二 栗の木には栗がなる不思議 宣 秋
(三) 破調
一 「おいらんたるごたくさにひょぐるすっぽん」というねごと 不 雑
二 新宿喰つて北千住浦和嫌はれ千葉下田 小 雑
三 しかすがに女の焼餅には口閉ざす 宣 冬恋
四 「童姦だ息み下に下に非直線」?童サン?藪蚊ニヤラレタ? 不 夏恋
五 郁乎火男お尻ぺんぺん金柑鈴なり種ぺっぺ 童 秋
六 順ちゃんユダヤから秋風とともにやってきた 宣 秋
七 ここは、どうしても、金子光晴の「くらげの唄」だ 不 夏
八 ポニョニョも民主主義も要らないから判子返して 小 雑
九 日本全国民よ「いのち」について一言なかるべし 宣 雑
十 口ずさむ「スーダラ節」や夜半の秋 不 秋
十一 石頭ゐて月見て月昇らぬ<排塵>協会 小 秋月
十二 秋をも春に言いくるめる春泥の詩人 宣 春
(四) 正調
一 マスク取れあのチョビ髭を見せなさい 不 冬
二 真知子巻きよりエリマキトカゲ 小 冬
三 飢えるかめ規則正しく不摂生 宣 雑
四 貴乃花理事大島落選 不 雑
五 定型にすぎぬ凡句や花の籠 小 春花
六 光る窓辺に出す春暦 宣 春
(湘南通信)
三 飢えるかめ規則正しく不摂生 宣 雑
四 貴乃花理事大島落選 不 雑
五 定型にすぎぬ凡句や花の籠 小 春 花
○ 定型にすぎぬ凡句やにぎり鮓
言ってくれるよ加藤郁乎
そこまで言うか加藤郁乎
まだまだ言うぞ加藤郁乎
それにしても加藤郁乎あんたホントに信仰(新耕)人?
久々に人格破壊に出会った
久々に正直な人に出会った
ホトがあったら入りたい
穴があったら入りたい
小童には恋句は詠ませぬ
そもそも常句がエログロ
金子光晴またまだ続くぞ変人が
反骨の人と言ってくれ
(讃岐通信)
四 貴乃花理事大島落選 不 雑
五 定型にすぎぬ凡句や花の籠 小 春 花
六 光る窓辺に出す春暦 宣 春
(宣長留書き)今日は節分(冬季)、明日は立春(春季)、一足先に「春暦」(歳時記になし)を出す。観念としての「春暦」。「俳句暦」なるものを届けてくれたブログ仲間への返礼をこめて、さりげなくこの巻を結ぶ。次巻は早春の風がわたる日本の東西を、われら連句通信が新生面を広げていく。
(下野通信)
(不遜留書き)確かに、「加藤郁乎???」、「加藤郁乎あんたホントに信仰(新耕)人?」という感じが常につきまといますね。「江戸俳諧」に通じているので、なおさら、
神秘的な感じすら抱かせると・・・、どうにも、処置なしという感じですね。この歌仙
を通して実感したことは、「この加藤郁乎の世界は余り近づかないのが無難」というこ
とでした。
(追伸)
「金子光晴またまだ続くぞ変人が」→ こちらは「変人・畸人」の部類として、それに
対応する器として、「正・破・乱・正」(オール二去り)の新機軸を狙っているが、ま
ともな(オーソドックスな)「万葉」を本歌としての「発句」としての歌仙が、現在、
三十五回目を迎え、次は、このシリーズの打ち上げの、三十六回目を迎えようとしてる。
その三十五回目の発句(宣長さん)が、まだ、アップされないのだが(アップされているのかどうか、トラックバックはされていない感じで)、打ち上げ前夜祭という感じで、
今までの、「両吟」(不・宣)を「三吟」(不・宣・小童)という趣向を、上記の「留書き」などを見ながら、そんなことが去来した。宣長さんの、その発句などを見て、小童
さんの、お出ましなどが、願えればと、これを追記しておきたい。
ネット新連句「西脇順三郎・崇高な諧謔」②(ゴール)
スタート 平成二十二年一月 七日
ゴール 平成二十二年一月二十一日
メンバー 小童(B)・宣長(B)・不遜(B)
(一) 正調
一 古い池の中へ/かえるがとびこむ/音がする 西脇順三郎 春
二 魚の目濡らす春の霧雨 小童 春
三 永劫の夢は断崖より落ちて 宣長 雑
四 あのたおやめが嫦娥となりし 不遜 秋月
五 朽ちた木はキリコがキコリ六月尽 小 夏
六 カルモヂインのスモモの光り 宣 夏
(二) 破調
一 やぶからし・かたい庭・自然の世の淋しき 不 秋
二 リアルとはかくもスクロール秋の旅人 小 秋
三 寝酒のコップのクコの紫 宣 雑
四 雪よ降れ降れアンバルワーリア 不 冬
五 初声ミクこの(覆された宝石) 小 新恋
六 姫始め嗚呼とは烏のではないの 宣 新恋
七 花薔薇ひとときの歓喜今は棘のみ 不 夏恋
八 淋しい夏は日天月天 小 夏月
九 玄の神秘へ自在のペンが走り過ぎ 宣 雑
十 耕衣の葱に詩人絶賛 不 冬
十一 両手に花車西脇だけが何故モテール 小 春花
十二 落ち着かぬ春の腰掛 宣 春
(三) 乱調
一 シシリヤのパイプとやらこれはお経の続きかな 不 雑
二 モダンとは羽釜・文化鍋・電気釜・電子炊飯器 小 雑
三 万両・千両・百両・十両あれど一両のない正月 宣 新
四 屠蘇に米花福茶に雑煮喰積飽きたぞ祝いの太郎 不 新
五 一日やればやめられぬ乞食稼業あの負傷兵のアコデオン今懐かし 小 雑
六 記者は要らないもっと医者を配置せよ 宣 雑
七 東京地検寒夜「陸山会」捜査・本日民社党大会 不 冬
八 冬の埠頭にメリーさんの電話が立っている 小 冬恋
九 メチャるいボンカレーに薄愛の少女バグ脳 宣 雑恋
十 ハイセコーの馬券を買ったあの人妻は何をしているか 不 雑恋
十一 ほんに不可思議は原節子の夜長 小 秋
十二 秋の火災予防おしんのヒロイン月光の曲 宣 秋月
四 (正調)
一 野べの野馬(やば)遊びせんとや生まれけむ 不 春
二 自家配合の吾子皆オタク 小 雑
三 考古学垂涎の的天皇陵 宣 雑
四 時雨一行詩之野糞如 不 冬
五 しゃりしゃりとモダン撒いてる花咲爺 小 春花
六 俎上に乗せて君桜鯛 宣 春
〈小童・メモ〉
西脇順三郎を崇高と同列するのも俳諧なら、(三)へと進むにつれやはり灰汁の浮いてきて、あげくに西脇の舌の上が糞ころがしの古墳になって終わるというのも俳諧らしく面白いですね。やはり西脇さんは、これがこうだとか何も言ってないですよ、「かもしの天才」だったのではないでしょうか。さて次回もモダニズム候補さん? 名は存知上げてはおりませんが、どこかマエツバ感のある新興宗教の熱心な信者さんとか、舌の上でどんなお言魂を転がしてくれるか愉しみです。それにしてもまた今回も寺山修二の引用がありました。御両人が寺山の修ちゃんを高く評価されているのは意外でありますが、驚き桃木山椒木、平凡パンチ吾々団塊には前衛舞台なんか日常の四畳半にころがっている「ゴキブリの糞」みたいなものでした。
〈宣長・留書きに替えて〉
めでたい桜鯛でむすびました。連句にはずいぶん種々雑多なものが俎上にのぼることになりますが、西脇順三郎を先輩に頂く方には「崇高」さが「諧謔」に料られることで顰蹙をかうことになりますか否やは知らず。いつのまにやら終わった感じで、次のことは考えておりません。捌かれる一手にかかっています。
〈不遜・メモ〉
「すべてのことをサイコロできめる」とか? 西脇順三郎の「古い池の中へ/かえるがとびこむ/
音がする」に、「崇高なる諧謔」と題するのを目にして、やはり、順三郎さんは、「芭蕉好き」
で、芭蕉の最右翼のお弟子さんが、「其角」と来ると、「其角好き」の、加藤郁乎さんも、「さも
ありなん」と、こんな「流れ」で、「サイコロできめる」の「サイコロ」も、意外と、「自然態」
という感じでなくもない。
ネット新連句(歌仙・人名づくし)①「不遜亭希典:アンドレ・ジイド」(ゴール)
スタート 平成二十一年十二月二十四日
ゴール 平成二十二年 一月 七日
メンバー 小童(B)・宣長(B)・不遜(B)
(一) 正調
一 ノーベル賞アンドレ・ジイド麦の秋 不遜亭希典 夏
二 祝い太郎は佐藤栄作 不遜 新
三 由紀ちゃんへ今年のお年玉はなく 小童 新
四 基督も今日誕生日乃木さんも 宣長 雑
五 秋山や好古・真之・子規に律 不 秋
六 詩仙の李白月下独酌 小 秋月
(二) 破調
一 関大大輔氷上妙技大選手 宣 冬
二 織田信長の子孫が負けた 不 雑
三 光秀のコピー人間天海僧正 小 雑
四 兼続熱演天地人歳末 宣 冬
五 小浜よりオバマへ恋の鱚(キス)贈る 不 夏 恋
六 岡田とクリントン月の客 小 秋月恋
七 三輪の美姫真央秋華明子ラブ 宣 秋 恋
八 古橋広之進は死んじゃった 不 雑
九 小沢さんゲームはもうお仕舞いですか 小 雑
十 生没歳末吉村冬彦 宣 冬
十一 世を捨つる花の主は似非西行 不 春花
十二 ロスチャイルドが黄砂を運ぶ 小 春
(三) 乱調
一 東西東西楢山節考田中絹代歯科医へ 宣 雑
二 今川焼きの「夢屋」の包装→横尾忠則 不 冬
三 野坂昭如☆彡愛のコリーダへ熱いナックル 小 夏
四 ナツナツココナッツ中山千夏ナツダイアル 宣 夏
五 あの男阿部定恐れ逃亡中 不 雑
六 愛妻に看取られ大島渚「朝までポルノ」 小 雑恋
七 去年今年貫く棒はクレオ・楊貴妃・小町まで 宣 新恋
八 貘枕にジミー・ウェールズ 不 新
九 ルパン三世ナポレオンの辞書を奪え 小 雑
十 アメリカ版寅さんマイケル男は甘いよ 宣 雑
十一 中島敦の虎が ? 見て泣いている 不 秋月
十二 工作員が英雄に司馬遼太郎騙さる秋の黄昏 小 秋
(四) 正調
一 笑われる日本武尊であるでなし 宣 雑
二 良寛・康成皆道元が好き 不 雑
三 謙信と虹の少年お友だち 小 夏
四 漱石が夏目に涙あり 宣 夏
五 財務省の藤井大臣花と散る 不 春花
六 えがらっぽ菅ハト目借り時 小 春
☆(人名づくし)は、はじめ戸惑いがあったもののコツさえ掴めば案外すらすら、結構面白い企画だったのではないでしょうか。次々回で結構です、とてつもないクレージーな企画をお待ちしております。(小)
☆留書きは特にありません。今回は次々と名前ですから、気楽に取り組めて楽しませてもらいました。 (宣)
☆ひょんな事から(人名づくし)とやら、ゴールに着いて、あらためて見直して、三十六句の人名
は、ぴたりと判明できるが、これが、一ヶ月、一年と年月を経過すると、どうなるものやら、これ
はこれで「楽しみは後で」という雰囲気である。「とてつもないクレージーな企画」をと・・・、
これが、なかなか難しい。(不)
ネット新連句(歌仙)(12)「塚本邦雄・汨羅(べきら) 變」(ゴール)
スタート 平成二十一年十二月 二日
ゴール 平成二十一年十二月二十三日
メンバー 小童(B)・宣長(B)・不遜(B)
(一) 正調
発句 今日こそはかへりみなくて刈り払う (塚本) 雑
脇 帝王貝殻細工百本 (邦雄) 雑
第三 寒星の針穴一つたゆたひて 小童 冬
四 皇帝ペンギン悴む朝 宣長 冬
五 めぐり来て若き麒麟が月仰ぐ 不遜 秋月
六 素数字余り錦秋の故里 小 秋
(二) 破調
一 本名の文学に対する仮名の文学 宣 雑
二 マイナス×マイナスはプラス 不 雑
三 エロスの矢ゆり族ばら族差別せず 小 夏恋
四 常夏国心中湾悶絶 宣 夏恋
五 胸痛い指切りげんまん針千本 不 雑
六 冷血の指揮者ムラヴィンスキー 小 冬
七 甘えの衣さらり脱ぎ捨て我が冬の旅 宣 冬
八 「二五四三」を虫が奏でる 不 秋
九 月に覚(さ)む「双子死産」と読む墓標 小 秋月
十 指折り数え余る兄弟ありや 宣 雑
十一 花あらば「誰か故郷を想はざる」 不 春花
十二 「ピアノ液化」す春の訪れ 小 春
(三) 乱調
一 玉音を玲瓏と聴きなすや危うしニッポニア日本 宣 雑
二 突風に生卵の割れるのをを見ている歌人は胡散臭いゾ 不 雑
三 吾は「家畜人ヤプー」されど桜前線北上せり 小 春
四 啓蟄というおどろおどろしき蚯蚓の紅き戯言 宣 春
五 一問の質問もせずサヨウナラ 不 雑
六 端座す後家の生(なま)膝に・・・蚊ッ 小 夏恋
七 性権後退・男面草色・日本珍没 宣 雑恋
八 ゴルフと私、どっち? → オーマイ・ゴルフ 不 雑恋
九 イギリス人が不細工で寒く青白いのはなぜ? 小 冬
十 難問凍結先送りは世の習い年越し饂飩粉調達中 宣 冬
十一 新月繊月今宵残月残飯 不 秋月
十二 文学の余白硯洗ふ 小 秋
〈四〉 正調
一 親死なす苦労背中にバイシクル 宣 雑
二 屈原の川氷の汨羅(べきら) 不 冬
三 白富士に「日本かたぶく」予震あり 小 冬
四 天に咲き満つ夢の花花 宣 春花
五 鳩山や春風駘蕩母任せ 不 春
六 一身温飽天誅雷落 小 夏
(小→留置) 小童的には、歌人・詩人・俳人・柳人…ソクラテスでもジイドでもOK。個性のある人、意外性のある人、さほど有名でない人もOKです。型に縮むことなく、何でも感じてやろうが新ネット連句と心得ます。また、小童のメモは思い付きのメッセージで、必ずしも句と関連しません。句は句、メモはメモ、そう受け取ってもらえると気が楽です。(メモのための句作りに腐心した経験から)
(宣長→留書き)
平成21年内に「ネット新連句」12巻を巻き終えることができました。新弟子の参入なかりせばここに至らなかったと感慨無量です。この世界は右も左も不案内ながら、手を取り足を取り指南をいただき、辛抱強く面倒見をいただき、ありがとうございます。平気でお師匠さんに楯突いたりすることもありますが、これこそ「新連句」の真骨頂として許容してください。次巻についてはお任せです。
(不遜→お留置き)
「歌人・詩人・俳人・柳人…ソクラテスでもジイド」と来ると、ここは、やはり、「アンドレ・ジイド」か(?) 「ノーベル賞アンドレ・ジイドが戻る秋」、この句は誰の作か(?) 「一月の甘納豆はやせてます」・「二月には甘納豆と坂下る」・「三月の甘納豆のうふふふふ」の、あの「坪内
稔典」さんの作か(?)「牡丹雪頭突きのブッチャーまた頭突く」、これも「稔典」さんの句か(?) 「ラスコーリニコフが戻る麦の秋」、「これだ! これだ!」、この「稔典」さんの句の「本句取り」の句が、「ノーベル賞アンドレ・ジイドが戻る秋」なのだ。この句の作者は、「不遜亭希典(「まれすけ」又は「きてん」)。
↓
http://www2s.biglobe.ne.jp/~ipsenon/essay6.html
ネット新連句(歌仙)(11)「北園克衛・船の行方」(ゴール)
スタート 平成二十一年十一月十三日
ゴール 平成二十一年十二月 一日
メンバー 小童(B)・宣長(B)・不遜(B)
(一) 正調
一 白塗りの船の行方や鰯雲 北園克衛 秋
二 台風一過井戸の水脈 小童 秋
三 ニューフェイス瓜実顔の侍り居て 宣長 雑
四 「VOU」・バウ・ボウと口をモグモグ 不遜 雑
五 不問寺はあつけらかんと月凉し 小 夏 月
六 踊り子沈みヨット現る 宣 夏
(二) 破調
一 ダリ・マグリット・キリコ・オバマも来たぞ 不 雑
二 エリザベス女王馬乗りで「私は神の孫」 小 雑 恋
三 渡辺渡妻「寒朝午前」横恋慕誤殺 宣 冬 恋
四 狂鶯や/コンクリート・ポエトリー/プラスティック・ポエム 不 夏
五 ジュラルミンの盾に石を投げて下さい/音楽ですから 小 雑
六 麻酔離脱/心田開拓/リボリューション「ハイク」へ 宣 雑
七 詩も歌も俳諧もまた一片の雪の塊(かたまり) 不 冬
八 伊勢は春のたりのたりの煙の直線 小 春
九 朱い蝶々が33頭沖縄へ渡っていった 宣 春
十 北園の生家の近く花氷 不 夏 花
十一 「の」の字のテクニックでは妻の詩情泡立たず 小 雑
十二 断片物質のミステリーが我がプラスチックポエム 宣 雑
(三) 乱調
一 ス---・-キ-・-・・ダ-・・・(ニャーン猫さかる)不 春 恋
二 「ざわわざわわ」揚雲雀の父を慕いて少女の恋心 小 春 恋
三 クワディーサーの実の落ちたるを礎(いしじ)の波に拾う 宣 秋
四 パンツ一枚で七輪に火を起こして泡盛飲んでいた詩人 不 夏
五 ボジョレーヌーヴォー解禁またまた西友値下げ749円で完売 小 冬
六 冬蝶のてふてふと舞うを捉へむとして冬扇で招き寄せる 宣 冬
七 壁/は壁のため/の影/にうつり/自由律/の影/を奏でる 不 雑
八 北園うつうつ赴く先は事業仕分け会場か 小 雑
九 春闘の赤い鉢巻ゴミ回収箱に多数発見 宣 春
十 蝶々(てふてふ)が・群蝶となり・何処へ・行くや 不 春
十一 少年は怖くなって屋根屋根の向うへ月を追いやった 小 秋 月
十二 桃太郎鬼無(きなし)の里に柘榴食む 宣 秋
(四) 正調
一 和風なる抒情の調べ心地良く 不 雑
二 烏鐘突く無住寺の朝 小 雑
三 ジーパンを霜に濡らして橋姫御 宣 冬
四 恋句の好きな穴熊冬眠 不 冬
五 投了す将棋の盤に花の片 小 春 花
六 三人三様春風駘蕩 宣 春
(湘南通信)
三 ジーパンを霜に濡らして橋姫御 宣 冬
四 恋句の好きな穴熊冬眠 不 冬
五 投了す将棋の盤に花の片 小 春 花
◇穴熊囲い◇
将棋において使われる守備の陣形の一つで、最も堅い囲いの一つ。囲うまでに手数はかかるが、玉が戦場から離れ、駒が密集しているため、どの駒を使っても1手で王手を掛けることができず、駒を犠牲にして形を崩さなければならない。しかしいったん王手が掛かると、たちまち崩壊する弱点もある。横からの攻めには強いが、上部や端からの攻めには意外に弱い。玉が隅にあるので身動きが取れず、ピンチの時に逃げ道がないからである。手堅さとか、定石には、そういった側面もある。
・(三)の乱調は「急」、今までは絵文字の多様で何とか誤魔化せた。
・メモに比重がかかると、連句の血の巡りが悪くなる。
(讃岐通信)
四 恋句の好きな穴熊冬眠 不 冬
五 投了す将棋の盤に花の片 小 春 花
六 三人三様春風駘蕩 宣 春
(留書きではなく、巻末の感想メモ)
道中振り返る暇なく、ここに至りました。時に師走の始まる日、すべてお師匠さんにお任せというところ。弟弟子が本領発揮。頼もしい限りです。小生は今、立て込んでおります。正式の留書きはお師匠さんということで、よろしくお願いします。
(下野通信)
かって、どういうことが背景にあったかは思い出せないのだが、「前衛派の旗手たち」ということで、「詩人・北園克衛、歌人・塚本邦雄、俳人・高柳重信、詩歌俳人?・寺山修司」を交互に見ていったことがあった。この「新ネット連句」で、再度、これらの、まことに、魅力プンプンの方々に、再度、アプローチができたということは、まことに、僥倖の限りという思いがする。この四人
に共通するのは、それぞれが、「俳句」の世界への思い入れが、強い方々で、北園克衛をのぞいて、「連句」の世界にも関心の強い方々であった。塚本邦雄は、その膨大な全集などを見て行くと、「連句」ものも、それらの中に発見することができる。高柳重信にしても、寺山修司にしても、記憶は不鮮明なのだが、未完の「連句」作品を、今に遺しているように記憶している。いかんせん、北園克衛は、他の三人に比して、先輩格で、年代的には、西東三鬼らと同年代で、この世代の「連句」ものというのは、本当に、一部の人たちだけで、まず、目にすることができない。しかし、この北園克衛の、異様な、「の」の発見と、「縦方向」(垂直志向)ではなく、「横方向」(水平志向)の「つながりの連続」は、何故か、「俳諧・連句」と非常に近いものを感ずるのである。ここで、この四人のうちで、塚本邦雄だけは、この「新ネット連句」では、取り上げていないのだが、実は、この方も、実に、特異な、「の」の発見者であることに、つい最近になって知ったのである。おそらく、塚本邦雄の、「の」の発見ということについては、ここに焦点を当てた方というのは、寡聞にして知らないが、次回の発句と脇との提示のときに、それらのことについて、触れてみたい。「の」の詩人・北園克衛に続き、「の」の歌人・塚本邦雄という雰囲気でなくもない
(やや誇張気味であることはご寛容願いたい)。
ネット新連句(歌仙)(10)「寺山修司・詩人死して」(ゴール)
スタート 平成二十一年 十月三十日
ゴール 平成二十一年十一月十三日
メンバー 小童(B)・宣長(B)・不遜(B)
(一) 正調
一 詩人死して舞台は閉じぬ冬の鼻 寺山修司 冬
二 血は立ったまま立ち枯れている 小童 冬
三 名馬への望郷魂を揺るがせて 宣長 雑
四 ビラに落書き「祖国はありや」 不遜 雑
五 「ふるさとの訛りなくせし友」と月 小 秋 月
六 「今も咲けるや」陸奥秋草 宣 秋
(二) 破調
一 揚羽舞うスキャンダリストの名を遺し 不 春
二 刺客走らす春の朝雨 小 春
三 新宿区字恐山に宅急便 宣 雑
四 べたべたと牧羊神と女郎蜘蛛 不 夏 恋
五 母のなか糸ひく蛇の泳ぎをり 小 夏 恋
六 かくれんぼの鬼成人式に 宣 冬
七 「目つむりていても吾(あ)を統(す)ぶ」ものは何 不 雑
八 「キャベツをむくと芯が出る」して玉ねぎは 小 夏
九 麦藁帽寝ても醒めても被りししまま 宣 夏
十 願うこと皆輝きぬ極月の月 不 冬 月
十一 大山デブ子のわが身は花と散るらん 小 春 花
十二 新学期男女席を同じうして 宣 春
(三) 乱調
一 ボク テラヤマ ハ「汽車の口真似が上手かった」 不 雑
二 「義肢県灰郡入れ歯村」ミステリー・ツアー 小 雑
三 「売郷奴」罵声浴びれど「冬の手のひら閉じひらき」 宣 冬
四 ポー! ポー! ポー! ポー! ボクハ五月ニ誕生シタ 不 夏
五 仮想メモリ不足のおたまじゃくしのまんまで死にたかった 小 春
六 游游子 賭博師 魔術師 昭和席捲 いつも心は春色 宣 春
七 彼は定型子をこよなく愛しロバの如く仕えた 不 雑 恋
八 不倫に義理はないけれど、たまにはお前からメールしろオバケ 小 雑 恋
九 ぺらぺらと薄っぺらいからこそ奥深いアッパッパ 宣 夏 恋
十 ブラックスワンが月下の海を泳いでいる 不 冬 月
十一 太古より石工ノミ打つ猿の惑星 小 雑
十二 地球の重さに叶う打ち出の詞術 宣 雑
(四) 正調
一 病む雁の修司の軽さ知りにけり 不 秋
二 ときには秋のない秋のよう 小 秋
三 本家取り父母を斬る大技に 宣 雑
四 チエホフ祭には高尾山中 不 雑
五 命とはリズムのことか花舞台 小 春 花
六 春の坩堝の慧眼炯炯 宣 春
◇小童の雑感◇
連句を巻くのも寺山修司で十人目ですね。個人的には、夏石番矢さんは中途参加で、しかも俳諧に慣れないこともあり、あれあれで終わってしまったのが残念です。大西泰世さんには、川柳のもつ親近の底知れぬ可能性をおぼえました。橋本夢道の長い句には酔わされました。俳句は、何も観察しなくとも詠めるということ。これは寺山にも感じたことです。住宅顕信は、これは真似の出来ないと思った。短い自由律が定型を超えているんです。渡辺白泉には、何はともかく真摯と的確さを感じ親近感をおぼえた。この白泉が内の景なら、三橋敏雄は外と思った。その観察眼は冷静で繊細、不遜さんによると俳諧にも通じていたとのこと。誰が何を言おうと、好き嫌いは別にして西東三鬼は巨人である。理屈抜きの容赦しない句が二、三句はある。金子兜太さんぐらいになると近い存在だ。まだ尊命なので「さん」なのである。彼が若い寺山修司をどう見ていたか少し気になるところ。高柳重信はお手上げだった。寺山修司が俳句と短歌の垣根を取っ払う方法を示したが、高柳重信は、詩との境さえ無きものとする怪人に見えた。それはそれで大いに研究の余地あることと思う。ただ、升目の都合上、俳句誌への投句は拒否されるだろう。これは蛇足だが、五行歌にするくらいならボクは散文詩でズバリ語りたいことが幾らもある。さて、次は北園克衛さんとか。詩のサンプルが欲しいですね。
(留書きに代えて・宣長)
寺山 修司 1935年12月10日~1983年5月4日 享年48歳。日本の現代文学者として多才で特異な存在。詩人、歌人、俳人、エッセイスト、小説家、評論家、映画監督、俳優、作詞家、写真家、劇作家、演出家など。演劇実験室・天井桟敷主宰。本業を問われると「僕の職業は寺山修司です」そのとおり、一ジャンルに留まらず、駆け回りながら、ものの真髄を独自の視点で鋭く捉える炯眼を具え持っていた。「炯眼の人」だった。「慧眼の人」でもあった。(あの鋭い眼光が寺山のシンボルである)
言葉の錬金術師の異名をとり、膨大な量の文芸作品(小説・エッセイ・評論・戯曲・シナリオなど)を発表。その一方で、映画・演劇なども幅広く手掛けた。競馬への造詣も深く、『ユリシーズ』(船橋競馬場所属)という競走馬の馬主になるほど。メディアの寵児的存在で、新聞や雑誌などの紙面を賑わすさまざまな活動を重ね、昭和をいち早く駆け過ぎた。(修司逝きても千の風にはなっていない)
◇不遜メモ◇
[リレー:夏石番矢→大西泰世→橋本夢道→住宅顕信→渡辺白泉→三橋敏雄→西東三鬼→金子兜太→高柳重信→寺山修司]
この顔ぶれを見て、いずれも、「五七五」の不可思議な「定型の世界」に果敢に挑戦した(してい
る)という思いがする。いや、「五七五」というよりも、「五七五」・「七七」の、得体の知れな
い「定型の魔力」との、形を変えての格闘のようなものを垣間見る思いである。寺山修司などは、
この「定型の申し子」のような方で、可哀そうなくらいである。橋本夢道にしても住宅顕信にして
も、いくら、この「定型の魔王」に挑戦しても、ドンキホーテのように、敗北感のみ味わった
のではないか?????? この敗北感を実感したとき、これは「連句の遊びに興ずるに如かず」という
ことになるのではないか????? (呵々大笑)
ネット新連句(歌仙)⑨「高柳重信・軍靴に来て」(ゴール)
スタート 平成二十一年十月十六日
ゴール 平成二十一年 月 日
メンバー 小童(B)・宣長(B)・不遜(B)
(一) 正調
一 軍靴に来て/蘆生の/雲雀/絶えにけり 高柳重信 夏
二 東国の毛人解体約図 小童 雑
三 こりやこりやと新世界には歩を入れて 宣長 雑
四 虚実皮膜の破(やれ)破(やれ)芭蕉 不遜 秋
五 身をそらし鋏翳して月仰ぐ 小 秋 月
六 売り家と描くジグソーパズル 宣 雑
(二) 破調
一 女・女・男そして役僧の青頭巾 不 冬
二 トルコのサンタクロースは笑わない 小 冬
三 変換ミス坂の上の肝にも驚かぬ 宣 雑
四 負数やら無用やら全て「液化するピアノ」 不 雑
五 蟻か蚯蚓かと問われれば遠慮なく鳶 小 夏
六 戸籍のない幽霊を抱きしめてやりたい 宣 夏
七 「日本脱出したし」佐渡のコウノトリは大空へ 不 雑
八 キューブリックの秘めた暗号「A11」 小 雑
九 クライマックスシーズン満塁逆転一球に泣く 宣 秋
十 「青春は一瞬にして髭」ボウボウと月けむる 不 秋 月
十一 かぐや姫浦島太郎を手招き花の日のたり 小 春 花 恋
十二 浮かれ猫ナビゲーションで池に落つ 宣 春 恋
(三) 乱調(絵文字・記号も可)
一 「森の夜更けの拝火の彌撒」に蝙蝠??が飛ぶ 不 夏
二 病みゐる人形の腕まで?ぎるかフェチ関節狂`∀´重信 小 雑
三 ヒトよフタよミよかさねきてヒノモト●よ 宣 雑
四 母が長泣く(ノ_・、)シクシク野に牡丹雪 不 冬
五 ブロクで寝んねの髑髏??メモ帳で起ち上るそぞろ寒 小 冬
六 福耳を披露する彼女→反り耳も心の耳とする彼女 宣 雑
七 「正調」=「五二・三四」調?「破調」=「二五・四三」調?? 不 雑
八 花の兄よ小窓よ運命の車輪♪~と修道院トイレの落書 小 春 恋
九 二つ文字牛の角文字直ぐな文字まどろこいしいな恋猫! 宣 春 恋
十 「石を投げなさい」→「デレデレ・女殺しの石田純一に」 不 雑
十一 「友愛なら任せなさい」→北京の三日月を満月にする 小 秋 月
十二 天上天下↑↓唯我独尊→遙かなる時空の中で秋霜の記 宣 秋
(四) 正調
一 江戸は春「口語の時代は寒い」 不 春
二 塀の鳥居へ注ぐ小走り 小 雑
三 すさまじくすまじきものは宮仕え 宣 雑
四 夜は怒りに冷酒あおる 不 夏
五 書を捨てて町へ出ようか花筏 小 春 花
六 霞となりて消えゆける天 宣 春
(湘南通信)
三 すさまじくすまじきものは宮仕え 宣 雑
四 夜は怒りに冷酒あおる 不 夏
五 書を捨てて町へ出ようか花筏 小 春 花
次回は『書を捨てよ、町へ出よう』の寺山修司だそうですね。
当時、渋谷の駅を出て、場外馬券所への通りの左手に、フェリーニの映画に出てきそうな、ピンク色の何んともハレンチなデカパイ女像が立っていました。それが寺山の主催する劇場「天井桟敷」でした。この新装開店に、葬儀用の花輪を送ったのが唐十郎でした。正直言って、60年代後半に上京した世代にとって、寺山修司という存在はアングラそのものでした。
高柳重信に、鋳型の製作者を想像しました。それほど形式を追求した人ってことです。あるときは外科医か板前。切って切って切り刻む。そのそれぞれの切口を並べて眺めているんです。この高柳重信にかかると、俳句も短歌も詩も、皆同じに思えてくるから不思議なのです。寺山修司はその逆ですね。外からより内から、内にトラウマのような独自のメロディーがあって、それを持て余している、そんな印象です。
(讃岐通信)
四 夜は怒りに冷酒あおる 不 夏
五 書を捨てて町へ出ようか花筏 小 春 花
六 霞となりて消えゆける天 宣 春
(留書き)
10月下半期で巻き上げた三吟。誰もほめてくれませんが、仮にもそんなことはない方がいいでしょう。前に前に進んでいる我々。自己発見の旅路です。高柳重信を垣間見て、だしにしながら歌仙を楽しんだ始末であります。お互いに仲間に支えられながら、また無限のネオ連句の旅を続けることになります。
(下野通信)
前々回の金子兜太さんの半ばで、高柳重信が浮かび上がって来て、重信さんの半ば
で、次は、寺山修司さんが浮かび上がってきた。まだ、修司さんの歌仙が入る前に、次
は、誰になるのやら、それは、全くの未知数で、歌仙の進行中に、それが徐々にベールを
脱いてくる。今度の歌仙が、どんな運びとなるものやら、これまた、全くの未知数であ
る。この未知数のところが何とも魅力的である。「寺山修司とは心中してもいいが、先に
死なれた」(某氏)。どうやら、「寺山かぶれ」の出だしの雰囲気でなくもない。