ネット新連句「宮沢賢治・五輪塔」⑤(ゴール)

スタート 平成二十二年二月二十二日
ゴール  平成二十二年三月 十五日 
メンバー 小童(B)・宣長(B)・不遜(B)

(一) 正調

一 五輪塔のかなたは大野みぞれせり    宮沢賢治 冬
二  バンクーバーは三寒四温         不遜 冬
三 鉦叩きトヨタ叩きはやらせにて       小童 秋
四  コンバイン無く稲束を負う        宣長 秋 
五 秋じゃなく夏の月ではおかしいか       不 夏月
六  禿を笑うな禿が笑うぞ           小 雑

(二) 破調

一  それなりに犬の遠吠え訳あるごとし      宣 雑
二   風の太郎の名は春一番           不 春
三  セロ弾きはしばしば苗代迂回せり       小 春恋
四   弟ならば相聞にならず           宣 雑恋 
五  休ミタイ野原ノ松ノ下闇ニ          不 夏
六   涼し額に鴉の洗礼             小 夏
七  どとと落ちし雪の音にも驚かず        宣 冬
八   寒月浴びて檻のライオン          不 冬月
九  ヤツに誰が王の冠を与えたか         小 雑
十   太って若い方は大歓迎           宣 雑
十一 花巻の賢治の詩碑で花見酒          不 春花
十二  春遅々として早池峰見仰ぐ         小 春
 
(三) 乱調

一  稲も我も病(いたつき)癒えず稗のみ稔る      宣 秋 
二  「ドッテテドッテテ、ドッテテド」月夜の軍歌   不 秋月
三  岩手の浮糞参議院選へ向け「どですかでん」    小 雑
四  「いい湯だべ」「健児になって里サ帰るべ」    宣 雑 
五  四月の気層を行き来するおれもひとりの修羅なのだ 不 春
六  I子さん登校拒否で橋龍の春眠如何に       小 春
七  冷血動物充満すれば個人の幸福あり得ず皆凍死   宣 冬
八  まがった てっぽうだまのように 一目ぼれした  不 雑恋  
九  嗅いでも握るな、風だって甘くささやく      小 雑恋
十  自由というこの厄介さに竹の皮ぬぐ        宣 夏
十一 へんなおじさんの宮沢某に蛇を投げなさい     不 夏
十二 桜よ詩人よぺーらぺらーのひーらひら       小 春


(四) 正調

一  恩師の著『賢治の手帳』なつかしく        宣 雑
二   千草が揺れて無声慟哭             不 冬
三  シベリアは墓また墓は凍土なり          小 冬
四   銀河系なる宇宙へ帰還             宣 雑 
五  雨ヤ風モノトモセズニ花詩人           不 春花
六   億数千の羊の毛刈る              小 春


(湘南通信→「留書き」に替えて)

 雨の日は外出せず野良猫を心配し、風の日は山鹿を思いやり、雪山は仰ぎ、夏の暑さに山ビルを思い出す。身体はそこそこの丈夫で満足し、銭に縁のないのを潔しとし、決して人の妻には手を出さず、いつも静かにムッツリを決め込み、間違ってもメリケン粉を主食とせず、コーヒーに煙草は少々を心がけ、ときどき己れを忘れ、そこそこに働きそこそこに戯れ、詰まらんことはすぐ忘れ、海風と山風の交わる丘のささやかな部屋のサッシの内にて、東に病気の子あれば早く病院へ連れて行ってやれと言い、西に疲れた親あれば休息しろとメールを送り、南に死にそうな人あれば誰しもいづれ行くところと言ってやり、北に喧嘩や訴訟あればやりたければやればと傍観し、詩人には自己陶酔もほどほどにしろと言ってやり、成功者にはオマエのことはオマエが思うほどオマエのことを思ってはいないのが人だと忠告してやり、日照のときは帽子をかぶり、寒さの夏は防寒一枚羽織り、みなに変人と思われぬ程度に振る舞い、褒められれば素直に喜び、べつだん無視も評価もされず、ひごろ人には距離を持って接し、挨拶は軽く会釈のみ、声を掛けられるまでは決して自ら語らず、それでも目に余るときには「いま私はあなたに何か出来ることはありますか」と尋ね、化学肥料や新興宗教は決して勧めてまわらず、思いやりという名の独断で個々に押付けることなく、お節介はあくまでも権力や支配者へ向けての反撃とし、私はそういうものであり続けたい。(小童)

(讃岐通信→「留書き」に替えて)

歌仙三十六句の三分の一を担当すると言っても、皆さんのそれぞれの句に助けられていると、賢治らしい気分に少々なってきております。やっぱりこの人は崇敬の的として特別視しておきたいです。次巻への要望はありません。誰であろうと、なんとか対応していきます。私に好き嫌いはありません。(宣長)

(下野通信→「留書き」に替えて)


かの詩人には
この世の夜空はるかに遠く
満天の星がかがやく水薬のように美しく
だがそこにいま
・・・かの詩人は花見連にくだまかれている
「美代子、あの花見連に、石を投げなさい。」(不遜)