だいぶ前のことですが、

TBSで放送中の人気番組「プレバト」の水彩画コーナーで見たやりとりが印象に残っています。

 

番組のなかで、特待生の土屋アンナさんが別の特待生に

「あの先生は設計図みたいな絵は評価するけど、パッション系は評価しないから気をつけて」

と、アドバイスしていて、

後からそれを聞いた先生は「いやいや、内面のパッションは評価していますよ」

と苦笑いしながら語っていました。

(記憶で書いているので正確な言葉ではないかもしれませんが、意味的にはそういう趣旨の発言でした)

 

といいつつ、

高い評価を受けるのは「まるで写真みたい」とか

「細かいところまでよく描けてますね」という絵にほぼ限られていますよね。

 

そういう指摘が視聴者、もしくは出演タレントからあったのか、最近は、

くっきーさんがそこそこ評価されたり、土屋アンナさんの発言も本来ならカットされるところをあえて放送したのでしょうか?

 

 

先生というのは、野村重存さんという有名な水彩画家です。

野村さんの作品模写を勉強のため2020年4月に描いたことがあります。

 

*作品名:失念

*鉛筆下絵はトレースにてアタリ取り

MUSE ACRYBROCK  F6  /  透明水彩

 

いわゆる写実的な絵です。

私の模写が稚拙なのでそう見えないかもしれませんが、本物はまさに「写真のような絵」です。

 

一方、エモーショナルな絵というのは、

対象をありのままに写実的に描くのではなく、対象を見た時の感動や感情を絵の中に表現するもので、

例えば、私の好きなアーティストの一人である カスタネット(Alvaro Castagnet)氏のような絵のスタイルです。

 

下の絵は野村さんの絵より少し早い2020年3月に模写したものです。

*カスタネット氏に関しては、後日、改めて何回か書きます(描きます)。

 

reproduction for study: the piece of fine art painted by Alvaro Castagnet

MUSE ACRYBROCK  F6  /  透明水彩

 

 

もちろん、

どちらのスタイルの方が「上」だとか「下」だとか優劣がある訳ではありません。

あくまで見る側(描く側)の好みの問題だと思います。

 

 

ただ、強いて言えば、「プレバト」の功罪はあります。

 

功に関して言えば、それまで興味がなかった人にも水彩画をより身近なものにしたことです。

一方、罪は写実画スタイルだけが水彩画だと錯覚させ、また、そういう描き方ができる人だけが上手な人だと思わせてしまうことです。

 

写真がなかった大昔は写実画が絶対的なものだったと思いますが、今はだいぶ違います。

 

言うまでもなく、写実的に描くことはピアノでいうバイエルみたいなもので、これが基礎力として欠落していると(ごく一部の天才は別にして)パッション系も描けないわけで、大切なものではあります。

 

しかしその次のステップでは、いろいろな方向に枝分かれしていく訳で、

もちろん、その枝のひとつには、写実画、精密画のさらなる高みを求めてスキルを磨いていく枝(”えだ”です、”わざ”と読み違えないように)もありますし、エモーショナル的な絵に進む枝もあるわけです。

 

逆に、パッション系が好きな人のなかには写実画系を否定する人もまれにいますが、これもいかがなものかとは思います。あくまで「私は、こっちのスタイルが好きです」というところで留めておくべきだとはおもいます。

 

そういう おまえはどっちなんだ?と聞かれるかもしれませんね。

 

私は、エモーショナル 派の絵が好きなので そちらを目指しています。

とはいえ、特に意識しないで描いていると、

見えているものすべて描いてしまうので、根は「写実 派」です。

ところが、その割に根気がなく丁寧に描くことができない、という

どっちつかずの「中途半 派」というやつです。  

出ました、ジジ・ギャグ・・・・・35点!

 

 

最近は、「エモーショナル派」を目指すためには、何か違うsomethingが必要だと感じていて、それが何であるかは頭では分かっているつもりですが、体に染みついていないためもがいている といった状況です。

 

 

 

この投稿を読まれた方から こんなコメントを頂きました。

 

『プレバトの先生、野村重存氏は 見た目が正確でないと評価されません。
野村氏が書く絵がお手本とされることが問題なのです。
』(オリジナルから一部抜粋)

 

ので、追記します。                                                                 

これは、同じくTVのカラオケコンテストにも共通していますね。

楽譜通りの音程とリズムで歌うと高得点になるのですが、

その歌が聞いている人の心を打つかというと、必ずしもそうではないと思います。

 

プロの歌手は、意図的に微妙に音程を狂わせたり、シンコペーションでリズムの強弱をずらしたり、溜めをつくったり、心に刺さる音楽を追及しています

 

とは言え、絵でも音楽でも万人に納得させる評価基準となると

写実的なもの、唱歌的なものでないと難しいというのが現実ではあります。

 

プレバトで、例えばピカソみたいな作品を先生が「すばらしい!一発特待生!」

と言ったら多くの視聴者が「どうして?」と疑問に思うでしょうけど、

今の基準で選考すると多くの視聴者は納得するのでしょう。

 

不特定多数を相手にするTVではまあ仕方がないことでしょうね

 

それより、私的に気になるのは、トレースですかね。

特待生や名人と言われている人の中には明らかにトレースで描いている人がいることです。

 

トレースというのは、こちらをお読みください 。

 

やはり、特待生、名人はトレース禁止にすべきだと思いますが、、、どうでしょう?

 

いろいろ書きましたが、

私的には、あまり硬いこと言わずに娯楽番組として楽しんで見ています。

 

 

 

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