最近、チャットGPT他「生成AI」の是非が毎日のように話題になってますね。
課題をインプットすると、AIが 司法試験にも合格点が取れる回答や、絵画、楽曲、小説等を非常に高いレベルで生成してしまうというものです。
次元が違いますが、ふと、絵画における「トレース」という手法にもある意味似ているなと思い、ちょっと長くなりますがお付き合いください。
☆ ☆ ☆
プロのアーティストの方の多くは写真等を転写するトレース手法を使って絵を描くのはNGと言いますね。
トレース手法というのは、絵や写真の輪郭を画用紙に転写して描く手法です。
このやり方ならデッサンが苦手な人でも簡単に形を正確に描くことができるというものです。
トレースの本来の目的は、
下絵の段階で、何度も形を探して描いたり消したりしていると紙を汚してしまうので、別の紙でデッサンして、それを清書する紙に転写するためだと思います。
それは、オリジナル→オリジナルなので問題はありませんが、問題は写真からのトレースです。
方法は、
写真と画用紙の間ににカーボン紙(水で濡らすと写した線が消えてしまう便利なものもあるそうです)を挟むか、
写真をコピーした紙の裏をB系の濃い鉛筆で均一に真っ黒に塗って、
写真に写っているものの輪郭をポールペン等で強くなぞり下の画用紙に写しとるというのが一般的な方法です。
またはライトボックスやプロジェクターを使う、やり方もあります。
ちなみに下の絵は、黒田清輝氏作品を画集からA3に拡大コピーして、裏面を鉛筆で塗って、F6用紙に輪郭のあたり線(目安にする線)をトレースし、透明水彩で描いた模写です。
黒田清輝 「読書」 模写 *下絵はトレースにて
MUSE ACRYBROCK F6 / 透明水彩
どうでしょう、デッサンばっちり決まってませんか?
トレースだから 当たり前ですね。
この絵はトレース手法の勉強用に描いたものなので、ブログ掲載せずお蔵入りになっていたのですが、このテーマのおかげで日の目を見ることができました(笑)
トレースで描くのはNGと言いますが、レオナルド・ダ・ヴィンチやフェルメールは肖像画を描く時、大きな幻灯機のようなものでカンバスに像を写して それをなぞって下絵を描いていたという話を聞いたことがあります。
もっともこの頃は、絵は貴族やお金持ちの依頼で描くもので、上手く(似せて)描けないと、収入の道を断たれてしまったり、王様の機嫌をそこね 下手をすれば殺されてしまったり、するので必死だったんでしょうね。
大昔と違って現代のプロがトレースで描くのはもっての外というのは当然のことかもしれません。
が、アマチュアが趣味で描いているのならトレースで描こうが、何でもありでいいとは思います。
絵を描く楽しみは、形をとらえて描き起こす楽しみと、彩色する楽しみとの二つありますが、どちらか一つだけでも良いのではないでしょうか。
線描はしないで、ぬり絵を楽しんでいる人も大勢います。これも一種のトレースですよね。
大人の塗り絵大賞の優秀作品を観たことがありますが、これはこれで見事で素晴らしい芸術作品だと思います。
「上手に描けるようになる」の前に「楽しく描き続ける」というのも大切ですね。
とは言え、
形をとらえて描き起こす楽しみも追求する場合は、トレースに頼っているとデッサン力はいつまでたっても身につかないということは言うまでもありません。
トレース手法で上手く描けて、周りの人から「お上手ですね!」と褒められ、それ以降 レベルを落とすのが怖くて、常にトレースでないと絵が描けなくなってしまうというのは避けたいものです。
定規やグリッドも使うのも、同様に、それらを使わないとまったく描けないというのは良くないですね。なければないでフリーハンドでも描けるというのが大前提です。
あと付け加えると、
アマチュアであっても トレースで描いた場合は その旨 クレジットをつけておくのがフェアですね。
ちなみに、
私は、これまでこのブログで掲載した作品中、12作品をトレース手法で描いています。
(下絵をトレースで描いたものには その旨のクレジットを記載してあります)
トレースで描いたもの、そうでないもの、見比べて頂ければ面白いかと思います。
最近はあまり見てないのですが、以前 TBS「プレバト」を見ていたら、一部の特待生、名人の中には明らかにトレースで描いている方がいましたが、その方を「デッサン力 満点」とか、「名人」とか「特待生」とするのはいかがなものでしょうかね。
今日、プレバトで水彩画コーナーやってましたね。
誰とは言いませんが、やはりトレースで描いたと分かる人はいましたね。
先生の野村重存さん自らがトレース容認派なので仕方がないのかもしれませんが、やはり釈然としないものがあります。
特待生、「名人」という称号を与えるのならトレースは使わないことを前提にすべきではないでしょうか。
以上、個人的感想 です。
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