鳩の宿る場所への二日間をあかりが書き始めます。


風華さんには普通では考えられないようなご足労をおかけしての二日間でした。

それでも、それであかりの気が済むならと、笑ってそうしましょう。と風華さん。


歌だけでどんな夜だったかわかっていただけるかどうか。


帰路につく

あなたの鞄の

熊鈴の

音を見送り

こころ満ちゆく


その日の宵を想いを尽くして二人で過ごした後、夏至の日の遅い宵闇の中、宿を後にして帰路につく風華さん。その後ろ姿を、寂しさではなく、とても満たされた気持ちで見送ることができた自分に少し驚きました。信じることで得られる強さを知れた。そんな気持ちになりました。


この宵と次の日の朝のことを、あかりはずっと忘れることはないと思います。



時を忘れ

我を忘れて

君に酔う

昨日の宵の

今朝もそのまま


次の朝早く、宿の玄関先で風華さんの到着を待つ

間の幸福感。玄関に向かう坂道を下ってくる風華さんの姿を見つけた時の幸福感。

その感覚もまた忘れることはないでしょう。


あかりは風華さんのとても深い思いやりと

ある種の決意を見せていただいたように思います。


風華さんにとって、あの宵と次の朝とがどんなものだったのか、書き残せる範囲で書き添えていただけたら。と思います。



風華が辿ります。


あかりさんを山の宿にその夜、お一人にするのはとても心軋む思いでした。


その気持ちは熊が出そうな夜の無人駅に置き残して、東へ向かう列車を待ちました。


夜の帷

裂くヘッドライトは

見送りて

テイルランプと

君の宿振り返る


たとえ一夜を離れて過ごしても、二人の気持ちの紐は切れません。むしろそうした時間が二人の気持ちの紐を綱のように鍛えているという思いがしました。



翌朝早く、同じ鉄路であかりさんが待つ西の宿に向かいました。渓谷が列車沿いに流れ出し、目を空に向けると、山並みの襞に残る朝靄が、風にあおられて霧雨をともないながら高い青空に夢散していく車窓の風景は見事でした。あかりさんがお好きな景色だろうなと思いながら西へ向かいました。


昨夜置き残した気持ちを無人駅で拾って心の中で温めながら、あかりさんの待つ宿への坂を下って行きました。

昨夜から今朝まで、夢の中で魔法の絨毯に乗っていたような気がしました。山遠く、朝鳴く野鳥の声で夢から醒め、魔法の絨毯から降りました。この坂の下の宿の玄関であかりさんがお待ちのはずです。


なぜ鳴くか

一番鳥の

その気持ち

分かりし今は

坂道駆けくだる



最後をあかりが書きます。

なぜ二人で宿を取ってあるのに、そんなことに?と思われる方もいらっしゃるでしょう。

それは読んでくださる方が想像される通りの理由かもしれません。