ども。
今日はどういうわけか「特殊相対性理論」の話をしてみようと思います。
科学哲学ってご存知でしょうか。
「画期的発見はどのようにして見つかったのか?」
を考えたりしているらしいのですが、
決して画期的な発見はしない学問です(悪意はないよ…)。
経済学や教育学にも同じような皮肉があります。
経済学は恐慌を予見できないし、
いつもそれが起こった後で解説している。
で、教育学も似たようなところがある。
グレた中学生を更生できるのかと?
だから、役に立たない学問だと揶揄されたりする。
実際のところ「学問」(博物学?)になってしまうと、
何でもそんなに役には立たないんじゃないかという気もする。
新しいものは、いつでも前線にあるはず。
***
さて、
実はあれだけ有名な相対性理論だって、
実用的に使われているかというと極めて怪しい。
人工衛星くらいの高速の世界になるとかすかに関係するんだけど、
所詮、高速 <<<< 光速。
人工衛星はせいぜい秒速10kmくらいだと思うけど、
光速 c =30万km/sなので
時間のずれは1/√(1 -(v/c)^2) = 1.00000000111..
1年は365x24x3600=3153万秒だから
(年収3千万の人は1秒に1円稼いでるのね)、
人工衛星の時計は相対論的に一年に0.035秒ずれる。
もっと遅い日常生活のものなんて、測定不能な程度にしか影響しない。
そんな感じで実用的には、
相対論ってほとんど何の関係もないのだ。
(物理学科でも使ってるのは宇宙論と素粒子論くらいだし。)
ただし、 E = mc^2 には原子力発電とか核問題とかで
日々お世話になったり困惑させられたりしている。
数学者・物理学者って奴は、原爆はつくるし、
ウォール街に行けばサブプライムは作るしロクでもないやっちゃ
ところで、
「(特殊)相対性理論が分からない」っていう人が
世の中のほとんどだと思うけど、
本当はそんなに難解ではない(ややこしいけど)。
数学だって高校ので十分なのだ。
でも、「どうして時間が遅れるのか分からない」と言うかもしれない。
アインシュタインは「光速度不変の原理」を提唱して、
それを使って思考実験で見事に説明しているけど
(岩波文庫『相対性理論』で原論文が読めマス)、
それは「光速度不変の原理」で「時間の遅れ」を演繹しただけで、
「光速度不変性」以上に何か真理が分かるわけじゃない。(*脚注)
ここに「分かる」ということのカギが一つ隠されている。
僕は「分かる」には二通りあると思う。
・既知の知識から演繹して理解するもの
・見たこと聞いたことを受け入れるもの
大学三年生くらいの相対論の演習をやってると
だんだん分かった気になるんだけど、
実はそれは「使えるようになった」という以上のものではない。
計算できるようになっただけで、
「時間の遅れ」の本質が分かったのではないのだ。
だいたい、「時間の遅れがなぜあるか」なんて問いは誰にも分からない。
「分かる」ということには、
全く新しいものをただ受け入れる
という側面がある。
僕らが知っているのは
「誰が測っても光速は30万km/sで、不変である」ということだけで、
時間のずれは 1/√(1 -(v/c)^2)
と書いたって情報量が増えるわけじゃない。
光速度不変、あるいは、
1/√(1 -(v/c)^2)を信じて受け入れただけだ。
そういう意味では、
全く新しいことを学ぶ過程は、実は、
怪しい宗教を信じてしまうこととプロセスには違いがない。
科学は実証されなくてはならないということの重要性がここにある。
そして相対性理論は実証されているわけだけど。
だから「相対性理論」が分かったという人は
それを使っているうちに慣れちゃったというだけだし、
受け入れないのなら永久に「分からない」。
分からない人は心がそれを受け入れていないだけということになる。
ナスがなぜ紫色なのかというくらい、事実なだけだ。
(もう少し丁寧に書くと、
新しい世界に出会った時には、色々と疑問が湧くけど、
それでも矛盾がないと確かめたときに、心は受け入れるのだと思う。
誰でも、こういうことを異なった形で少なからず
経験しているのではないだろうか。大人になって忘れただけで。)
見慣れてしまえば、当たり前になる。
そして「分かった」とつぶやくようになる。どんなことでも。
ここから、冒頭で触れた科学哲学に関して
トマス・クーンのパラダイム論とか
量子力学とかにも話が拡がるところだけど
内容が発散しそうなのでこんなもので。。
***
最後に、
「4次元時空」と「3次元空間+時間」
ってどう違うのかということにコメントしておきます。
式は省略しますが、(**脚注)
ローレンツ変換という相対性理論の魔法の公式がありまして、
それを見るとこんなことが分かります:
あなたの前後に同じ時刻の時計がずらっと並んでいるとします。
1 1 1 1 1 1 1 1 1 1
突然、あなたは前に向かって凄い高速で走りだしたとします。
そうするとその瞬間、
前の時計は進んで、後ろの時計は遅れているのが観察できます。
1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5
(目に光が届くまでの時間差をきちんと考慮したら、です。)
場所によって時刻が変わってしまったのです!
時間と位置がお互いに関係し合う、または
時間と位置が別々のものではない、という意味で、
相対性理論ではこの世界を4次元時空であると言います。
やっぱり、分かんない?
________________________________
(*脚注)
ありきたりだけど、
例えばあなたが静止しているとして、目の前で、
光に向かって光速の1/3の10万km/s速さで進む人がいるとします。
○ → ←
光は30万km離れた所(月くらいですね)から発射されたとすると、
その人は3/4秒後に(30/4)万km進んだところで光に出会います。
50km/hで車を運転している人が100km/hの対向車を見ると
150km/hに見えるのと同じで、
光に向かって進む人は光が30+10 = 40万km/sに見えそうなものです。
でも「光速度不変の原理」が正しいなら、
この人は「光の速さが30万km/sに見えた」と言い張るはず。
おかしいですね。
こんなことが起こるなら、
「時間と距離」がその人の世界と異なっていることになります。
あなたにとっての3/4秒間にその人と光は30km接近した
というその出来事は、例えば、
その人にとって時間が4/3倍に感じたかもしれないし、
30km /(4/3×3/4秒) = 30万km/秒
距離を3/4倍に感じたかもしれないし、
(3/4×30)km /(3/4秒) = 30万km/秒
そのミックスかもしれない。
そこで、その人が光と反対に進む場合も考えると、
光の出発時間までずれていて、
時間も距離も1/√(1 -(v/c)^2)倍という
絶妙なブレンドとなっていることが分かるのですが、
長くなるので省略します。
「光速度不変」が「時空の変テコな構造」を示唆する
ことを知るにはこれで十分です。
(**脚注)
上の脚注で書いた絶妙なブレンド「ローレンツ変換」の時間部分は、
t = γ(t' + v/c x')
です。ここでvは系Sに対する系S'の速度です。
γ=1/√(1 -(v/c)^2)は本文では重要でない定数です。
さて、走り出したあなたの世界(系S')の瞬間t'=0を見ると、
t = γv/c x',
つまり、(γv/cは定数なので)
時刻t は 位置x' に比例する、と翻訳できて、
tは走り出す前の世界(系S)での各場所の時計の時刻ですが、
走り出した世界でt'=0の瞬間を見ると、
前方の遠く(x' が大きい)の時計ほど時刻tが進む、と読めます。
相対性原理とは、等速度で動いているもの同士では、
互いにどちらが動いているとか言うことができないということ。
だって、高速で走り出したあなたも
きっと銀河系のなかではとんでもない速さで流されているのだ。
僕が止まってあなたが動いているなんて誰にも決められない。