表向きは派遣社員として働きながら、その実、占い師として同僚のお悩みを解決してきたアタル（杉咲花）が主人公のドラマ「ハケン占い師アタル」（テレ朝、木曜２１時～）が３月１４日、最終回を迎えた。占いを封じて「普通に生きて行く」と誓っていたアタルがこの回、「特別な才能」を持っている占いこそ「好きな仕事」だ、「自分にしかないできない」「天職」だと自覚し、今までいたイベント会社を卒業した。青い鳥は実はごくごく身近にいるかもしれない、身の回りを見直してみよう、というメッセージだ。
最終回の冒頭、アタルは夢を見る。占い師のアタルに、派遣社員のアタルが見てもらうというシチュエーションだ。占い師のアタルが優しげに言う。
「働く人にとって今は大変な時代なの。一生同じ会社で働くことが当たり前でなくなり、今の仕事を続けるべきかどうか迷うけど、簡単に転職する勇気はないし、自分の天職を見つける自信もない」。
それは、そのまま、アタル自身の悩みでもある。前回、稼げる占い師であるアタルを連れ戻そうとした母（若村麻由美）に、もう自分を解放してほしいと訴えたアタル。金儲け第一で胡散臭いインチキ占い師である母から独立するため、アタルは母に、占い師は辞める、「自分にしかできないことがきっとある」と啖呵を切った。その「天職」が何かは「まだ見つからない」と言いながらも、派遣社員としてやって行こうと誓っていた。占いは嫌だと思い、もう距離を置こうと思っていた。夢の中で派遣社員のアタルが占い師のアタルに尋ねる。
「あの、私、もう占いは辞めて、今の会社でずっと働くって決めたんですけど、それでいいんですよね」
占い師のアタルは、突き放すように答える。「答えは決まってるでしょ、アタル、あなたがすべきなのは……」。ここで夢から覚める。
この後アタルは、自分が発案した小学校の卒業式イベントの現地手伝いに行く。金を出す広告主の意向に左右されて、イベント自体は主役である地域住民や小学生が置いてけぼりとなる。さんざんなまま終わりかけた時、アタルには子供たちの心の声が聞こえてしまう。人の気持ちが「見えてしまう」がゆえに、アタルは子供たちの声を代弁して背中を押し、結果、卒業式は無事終わった。でもアタルは、封印したはずの占いを「どうしても我慢できなくなって」使ってしまったことを悔いる。
そんなアタルに、チームリーダーの大崎（板谷由夏）は「いいんじゃないかなあ、それで」と言う。「やっぱり占いでたくさんの人を救ってあげるべきよ、私たちにしてくれたみたいに」と言う大崎に続いて同僚たちも口々に、アタルは占いを封印しないほうがいいと言う。
神田（志田未来）は「私に言ったじゃん、その人にしかできないことがあるって。それってアタルちゃんの場合、占いでしょ」。上野（小沢征悦）は「誰も持っていない特別な才能を持っているのにそれを使わないのは、やっぱり間違ってる」。田端（野波麻帆）は「アタルちゃんにしかできないことをやったら？」と言い、代々木部長（及川光博）も「人は運命を避けようとして選んだ道で、しばしば運命に出会う」と、「フランスの有名な詩人の言葉」を引用する。最後に上野が「占いはアタルの仕事だって考えたらどうかな。（略）その道のエキスパートになるんだよ」と締める。
得意なことがあり、その才能があるなら、それを仕事にしたらいいじゃないか、母との確執があったとはいえ、何を迷うことがあるのか、というのだ。アタル自身は「これじゃない」「これ以外」だと封印した占いだが、周囲から見れば、それこそが「自分だけにしかできない」「天職」ではないか、と見える。
皆に背中を押されたアタルは最後に、皆を占い、一人ひとりへのメッセージを伝える。アタルに占われたことを機に人生を変えて来た同僚たちは、遺された課題も一挙に解決。アタルは自分の言葉で誰かの背中を押すことができるなら本望だと、「自分の大好きな仕事として」占いを続けることを皆に宣言して、大団円となった。
仕事を選ぶ時、今の仕事でいいのか迷う時、アタルのように「これはダメ」と、あえて「得意分野」を封印してしまう人もいるだろう。好きなことを仕事にしていいのかとか、生計を立てて稼ぐための仕事と、趣味など好きなこととは別のほうがいい、などという説もよく聞く。だが結局アタルは、一周回って、「自分にしかできないこと」「天職」に戻って来たのだ。
次回は、最終回にアタルが同僚たちに語った、仕事や人間関係のメッセージについて。
（この項続く）（２０１９・３・１４、元沢賀南子執筆）